10月1・8・15日(木)の3回に渡りメキシコ大使館で「メキシコ エイガサイ」が催され、黄金期のメキシコ映画が3本(40年代・50年代・60年代の各1本)上映されました。
私は1回目の『マリア・カンデラリア』↑と3回目の『アニマス・トゥルハノ 価値ある男』
を観たのですが、両作品とも撮影はガブリエル・フィゲロア。
「マリア・カンデラリア」はソチミルコを舞台に、「価値ある男」はオアハカを舞台に、モノクロ映像で詩情豊かなメキシコらしい世界を堪能させてくれました。
どちらも先住民の文化を積極的にアピールしていましたが、それは「メキシコ革命後の映画の特徴」だそうです。
『アニマス・トゥルハノ 価値ある男』 1962年
舞台はメキシコ・オアハカ州の小さな村。
主人公のアニマス・トゥルハーノには妻と4~5人の子供がいるが、ろくに働きもせず、酒ばかり飲んでいる。おまけに粗野で乱暴者。
そのくせ根っからの目立ちたがりで、そのためなら我が子の葬式だって利用する。
そんな彼が夢みるのは、年に一度の村祭りを取り仕切るマジョルドモに選ばれること。
もっともそれには、財力はもちろん人望だって欠かせない。トゥルハノには土台無理な話だ。
けれども「金さえあればマジョルドモになれる」と考えるトゥルハノは、賭け事、闘鶏、怪しげな魔術など次々と手を出し、遂に身内を売り飛ばす(!)。
こうして大金を手に入れた彼は、人望は得られずとも、念願のマジョルドモとなり、祭りを取り仕切ろうとするが……
Marysolから
「価値ある男」は、「三船敏郎が出演したメキシコ映画!!」ということで、興味津々で見に行ったのですが、まさか“オアハカのインディオ”を主演しているとは思いませんでした!
上映会で聞いた話では、イスマエル・ロドリゲス監督が三船に出演を懇願したとか。抜擢の理由は、三船の敏捷な身のこなしに惚れ込んだせいではないか?というコメントも。
なるほど、納得できる説ですね。私は三船がメキシコのダンスを踊っているシーンを見て「おぬしヤルな!」と思いました。というのも、昔メキシコで民族舞踊のクラスに数回通ったのですが、メキシコ人の軽やかな足さばきに比べ、私だけドタドタ。
メキシコ人に「三船のダンスはどう?」と訊いたら「上手だった」と言ってました。
羨ましい…どのくらい練習したんだろう?
そういえば、映画で三船はスペイン語(オアハカ弁)も喋っていますが、こちらは吹き替え。
三船はみっちりスペイン語を勉強して備えたそうですが、やはりネーティブのようには聞こえなかったようです。
この映画、ずっとコミカルだと思って見ていたけど、最後はとても悲しくて重い…
粗野で乱暴で愚か者だけど、どこか愛嬌があって憎めない― そんなオアハカのインディオをメキシコ人から見ても自然に好演した三船は、やっぱり国際的名優。メキシコだけでなく、日本にとっても貴重な作品です。