『宮廷画家ゴヤは見た』
映画の詳細は公式HPでどうぞ: http://goya-mita.com/
感想など
私にとってのゴヤは「ロス・カプリーチョス」
や「黒い絵」
の画家。
強烈な個性の持ち主というイメージ。
そのせいか、始めのうち“宮廷画家”ゴヤは、なんだか「やけにおとなしい」感じで、ちょっと物足りない気が…
けれど、それもそのはず、この映画のなかのゴヤは“傍観者”という位置づけだったのだ。
とはいえ、ゴヤのこと。鋭い眼力と洞察力で、権力を笠に着て、
恐怖で人を支配しようとする神父ロレンソ(ハビエル・バルデム)や、無実の“罪”によりその犠牲となる無垢な少女イネス(ナタリー・ポートマンの壮絶な役者魂に敬服!)の姿を通して、人間存在の本質をえぐり出す。おそらく本質というのは、
昼間の月のように明るいときには見えない。時代の混乱期、闇のなかでこそ露わになる。
スペインの宮廷画家ゴヤは、フランス革命という隣国の“光”を感知したあと、ナポレオン軍による残虐な侵略行為を目撃する。
異端審問所でイネスが叫ぶ「真実はどこにあるの?」という叫びは、時代の狭間に飲み込まれていく人間にとって、永遠に繰り返される悲痛な問いかけだろう。
激動の時代を生きたゴヤの眼の記憶は、晩年『黒い絵』に塗りこまれ、今も見る人に迫ってくる。
映画のなかで、ゴヤの絵はたくさん紹介されるが、エンディング・ロールにも出てくるので、ぜひ最後までゆっくり腰を落ち着けて対峙して欲しい。
私は、最後の絵《砂に埋もれる犬》
に深く共感し、遅ればせながら、デスノエスの誕生日祝いに画像を贈(送)った。
(全然おめでたくない絵だけれど、彼は本心しか受け取らないし、私の『メモリアス』観とも通じるので。それから上のサイト(砂に埋もれる犬)のコメントも素晴らしいので、ぜひお読みください)
デスノエスから届いた返信の一部を紹介して終わろう。
「《ゴヤの犬》は、私が好きな絵のひとつだ。それにこの絵は、西洋画と日本や中国の絵との架け橋にもなっていると思う。空間の使い方、漂流する世界の広がりが、途方もなく素晴らしい。君も知っての通り、中国の絵では余白を利用して、人間と虚無、人間と自然の関係を強調していることがある。私は無と充実のせめぎ合いを信じる。
曖昧性と不確実性は、理性の眠りから我々を遠ざけてくれる」
エドムンド・デスノエス(映画『低開発の記憶~メモリアス~』の原作者・脚本執筆)紹介:http://ameblo.jp/rincon-del-cine-cubano/entry-10004221643.html
『メモリアス』紹介:http://ameblo.jp/rincon-del-cine-cubano/entry-10042743058.html