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空海入門 (角川ソフィア文庫)
720円
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角川ソフィア文庫で多数の空海の著作を現代語訳(「超訳」と言ってよいかも。)されている加藤先生の「入門」書である。
「入門」と称するだけあって、空海の生涯や思想が、分かりやすく説明されている。
だが、この本は、それだけではない。
単に空海の生涯や著作の概略を説明しているだけではなく、現代人にとっての宗教との向き合い方、そして人としていかに生きるかということが、空海の生涯や思想を通して語られているように思う。
この本は、大きく分けて三章でなっている。
第一章「空海の生涯」
第二章「著作と思想」
第三章「空海と現代」
第三章が、この本の大事なところ。
もう空海のことはよく知ってるよ、という人も第三章だけでも読んでいただきたい。
空海という人、そしてその思想の現代的な意義を、『理趣経』を用いて語られているのに私は少なからず驚いた。
理趣経は誤解されやすい内容を持つ。
私自身、理趣経の奥深い世界をまだまだ理解しておらず、ここで語る資格など全くないのだが、その思想が単なる欲望肯定であろうはずもなく、字面だけで理解するものではないことは分かる。
空海が最澄の理趣釈経の借用を断った真意は分からないが、それでもなんとなく分かる気がする。(相手は最澄であるから、最澄が変な誤解をするとは思えず、空海も誤解を恐れたわけでは決してないだろう。)
理趣経の精神については、加藤先生がこの本で十分に語ってくださっており、私のような初心者が何かを述べる余地はない。
この本が最初に書かれたのは平成10年とのことである。
あの宗教団体が起こした事件の記憶がまだ生々しい頃。
そんな時代背景もあってのことか、宗教の危うい一面についても語られている。
それから20年が経過した。
今や21世紀、そして平成というひと時代が終わろうとしている。
世の中はますます複雑になり、猛スピードで移り変わっていく。
この本の中で加藤先生は空海を「引きずられない人 」と呼んだ。
宗教というものを考えるときにこの「引きずられない」ということは案外重要なキーワードかもしれないと私は思った。
空海。
1200年も前にこんなにも自由な精神を貫き、貴い多くの仕事を成し遂げた人がいたのか。
この文庫本自体はそんなに厚いものではない。(もっとも私はkindleで読んだが。)
だが内容はとても濃い。
空海の魅力満載、そして自分自身の生き方が問われる1冊である。






