銀の砂浜



銀色に光る浜辺で


ゆっくりと本を読む



輝く月が闇に精彩を加え


海がその姿を優しく映し出す



幽かな水音に揺れる心


見上げれば星座の海


遥か昔の英雄たち


生命(いのち)儚い美しい乙女たち


力と勇気を持つ逞しい王たち


闇の空に彼らのストーリーがある



水平線の彼方に


小さな小舟が一漕


ランプに灯された炎が小さく揺れる



向こうには何があるのだろう


さざめく波の音に


耳を寄せて


本を枕に眠りにつこう


朝陽(あさひ)が昇るまで


美しい夢をみよう



銀の砂浜は夢の場所


眠りにつきたければ


銀色に光るこの浜辺に


陽(ひ)が昇るまで


夢を語り合おう

   望むもの



望みは一つ


総ては本能のままにーーーーー



何にも捕らわれない自由な「心」


私の求めてやまないもの



望みはたった一つ


総ては本能のままにーーーーー

    夜叉



赤いおべべを着た赤児はどこにおる


わたしのかわいい乳飲み児は


寒かろうと夜な夜な編んだ赤いおべべを着せた


わたしのかわいい乳飲み児よ



冬の山の嵐に耐え切れず


春の小川のせせらぎを聞けず


二度と眼を開けることをしなくなった


わたしのかわいい児



大丈夫


母さんがいつまでも傍にいるから


微笑んであげるから


抱き締めてあげるから


お乳を与えてあげるから


誰もおまえを一人にはしない



今夜も嵐の中で


母さんが子守唄を歌ってあげる



ねんねんころり・・・・・・



ああ、わたしのかわいい児を


もう一度わたしの胸に返しておくれ


山の無情と人の非情を背に受けて


一滴の水も一粒の米も与えられず



悪に魂を売る我が心


わたしのかわいい乳飲み児のために


たとえこの身は地獄にいこうとも


業火に焼かれようとも


許すまじか人の業



泣いて泣いて泣き暮れて


骨になった我が児に頬擦りする



赤いおべべを着た赤児はどこにおる


わたしのかわいい乳飲み児は



あの甘え声も聞けず


乳臭さもない


されど我が児かわいや



ああ、嵐よ


もっと狂うがいい!


海よ


もっと荒れるがいい!


そうしてわたしに力をおくれ!



今は夜叉と成り果てた我が身


片手に赤児を抱き


片手に斧を持ち


涙枯れ果てた我が身に


今夜も新しい生き血を・・・



ああ


憎らしや


ああ


恨めしや



我が罪


人の業


総て焼き尽くされるまで


我は夜叉と成りて


我が児を護る



赤いおべべを着せられない


悲しみを


笑いかけてくれない


切なさを


今夜も生き血で埋める


悲しい女


こんなに哀れな女が


他にいようか



恨んでも恨んでも


恨みきれず


ただ生き血を求める



赤いおべべを着た赤児はどこにおる


わたしのかわいい乳飲み児は


今夜も母さんが


おまえの耳元で


子守唄を歌ってあげる・・・・・・

   翼



翼を下さい


大きく羽ばたける翼を



私は翔びたい


この遥かな大空を


今こそ


何も捉われず


総てを捨てて



私は何もいらない


迷わず総てを捨てましょう


後悔はしない


自分が選んだ道なれば



この両の手が翼であったなら


私は自由に翔べるのに



気ままに空を翔び


気ままに床に就く


腹が空けばものを食い


喉が渇けばみずを飲む


閑(のど)かな人生


夢の人生



翼を下さい


大きく羽ばたける翼を



願いなどいらない


望みなどいらない


ただ大きな翼を広げて


翔び立ちたい



風に吹かれて


どこまでも


海を渡り


山を越え


どこまでも翔んでゆきたい



太陽に向かって


月に向かって


星に向かって


空高く


誰も私の邪魔など


させはしない



私は自由


世界は自由


人生は自由



世間に捉われず


金銭に捉われず


人に捉われず


道徳に捉われず


自由になれたなら


私は何もいらない



翼を下さい


大きく羽ばたける翼を

   孤独



夜の闇に吼える黒いマントの男


両の牙で白い首筋を吸い


眼光鋭く闇を見つめる



孤独な生


孤独な死


孤独な闇



この世の滅亡が来ようとも


男の生命(いのち)は果てることがない



その赤い眼に映るものは


悲しみか


寂しさか



友もなく


愛するものもない



月が満を持する時


人が眠りにつくその時に


黒いマントの男は眼を覚ます


月の幻想に惑わされて


今宵も可憐な乙女の生き血を


彷徨い歩く悲しい影



われは神に捨てされし者


われは人に騙されし者



風よ


海よ


わが心のように狂うがいい!



愛するものを失った悲しさ


愛するものを奪われた寂しさ



神よ


そなたに解るか



わが悲しみは此処に


わが寂しさは此処に


永久の生命(いのち)をもって


今こそ復讐す


止める声も聞こえず


ただ聞こえるは


わが心の傷の声



口から滴る赤い雫を


舐める侘しさ



遠くに見えるは


わが愛しき人


もはやその手は取れぬ



神を怨み


今日もゆく


永久の生命と面影を抱いて





   ※昔見た映画「ドラキュラ」より、思いをはせて~

   幻映



‘おれにいっているのかい‘


‘おれにいっているのかい‘


‘おれにいっているのかい‘


そうさ


ここにはおれしかいない


おれしか存在しない



おまえはヒーローか?


おまえの心は正義か?


おまえは愛のある人間か?



‘おれにいっているのかい‘


そうさ


おまえにいっているのさ



街には泥棒、売春婦、殺人者、変質者


しかいない


社会には詐欺、横領、裏切り、嫉妬


しかない


そんな世界のたった一人のヒーロー


期待されない淋しいヒーロー



‘you talkin to me?‘


‘おれにいっているのかい‘



おれは間違っても


おまえにはならないさ



どぶ鼠の虫けらども


いつかおまえの鼻をあかしてやるぜ



おれはこのいかれた夜の街を清掃する


淋しい愛と正義のヒーロー

   メシア



隣人を愛せば


己も愛される


かの十字架の人は言った



右の頬を叩かれたら


左の頬も差し出せと


あのお方は言った



私は素直にあの方に従う忠実な下僕(しもべ)


誰が何と言おうとも


あの方だけが私の唯一の神


私のちっぽけな存在を


あの方だけが許してくれる


憐れんでくれる


時には優しく


時には厳しく


私に言葉を投げ掛けて下さる


神々しい方



喜んで右の頬を差し出しましょう


喜んで左の頬を差し出しましょう


それこそ我が喜び


我が至福の瞬間


跪きあの方の御手に接吻す



おお!


私の唯一の神


おお!


私のメシア



あなたが差し出せというのなら


この生命(いのち)さえも投げ出しましょう



私の唯一の真実


ああ、イエス・キリストよ

   手毬唄



てんてんてんまり  てんてまり

てんてんてんまり  てんてまり


一つに父死んで  二つで母死んで


三つで兄死んで  四つに姉が死ぬ


五つに弟死んで  六つで妹死んで


七つで赤ん坊死んで  八に犬が死ぬ


九つに猫死んで  十でとうとうあたし死ぬ



てんてんてんまり  てんてまり


明日はいつくる  てんてまり


明後日いつくる  てんてまり


明々後日いつくる  てんてまり


その次いつくる  てんてまり



くるもんか  くるもんか  てんてまり


この世の終わり  てんてまり



早くいこいこ  てんてまり


鬼のくる間に  てんてまり


あの世にいこう  てんてまり



てんてんてんまり  てんてまり


てんてんてんまり  てんてまり



おとっつあんもおかっつあんも


いなくなった


にいさんもねえさんも


いなくなった


おとうともいもうとも


いなくなった



あかんぼも


いなくなった


いぬもねこも


いなくなった



とうとうあたしもいなくなった

      溜息

   


なぜおまえは実っている

   

誰からも褒められず

   

誰からも食べられず

   

どうして実っているのだろう

   


梨も桃も葡萄も

   

可哀想に今日も

   

雨が降って濡れている

   


なぜおまえは茂っている

   

誰からも頼られず

   

誰からも感謝されず

   

どうして茂っているのだろう

   


松も欅も紅葉も

   

可哀想に今日も

   

虫が食って汚くなっている

   


誰もおいしいとは言わない

   

その果物たちを

   

腹いっぱい詰め込む

   

いっぱいいっぱい詰め込む

   

哀れな果物たち

   


誰も自然を尊まない

   

その自然たちを

   

力いっぱい切り倒す

   

たくさんたくさん切り倒す

   

哀れな哀れな自然たち

   


果物も自然も

   

なくなってしまったら

   

どうするのだろう

   

後悔するのか

   

腹を立てるのか

   

その時はもう遅いのに

   

知らずに知らずに 

   

生きてゆく

     人間

  

生き 生き 生きて

  

嬉しさを感じる人は

  

良い人

  

生き 生き 生きて

  

感謝する人は

  

善い人

  

生き 生き 生きて

  

懺悔する人は

  

尊い人

  

死に 死に 死んで

  

悲しさを感じる人は

  

良い人

  

死に 死に 死んで

  

納得する人は

  

善い人

  

死に 死に 死んで

  

懺悔する人は

  

尊い人

  

道 道 道は

  

遠くても

  

人 人 人は

  

みな生きてゆく