【女神イシス(紀元前1360年頃の壁画】
恋人はファラオ1.ファラオの愛人だった少女 の続きです。
再びセティに会いたいと願う14才のドロシーは、同じ夢を繰り返し見るようになりました。
夢の中では、エジプトの少女で、むしろの引かれた大きな部屋で大勢の女性や少女と寝ていました。別の場面では、水路で囲まれた地下室にいました。床はメノウやトルコ石で覆われ、台の上にはだれかの像がおかれていました。そこで、大勢の男女が見守る中、大神官が彼女を尋問していました。大神官の質問に答えないと棒で打たれ、ドロシーは悲鳴をあげて目をさますのでした。
ドロシーの悲鳴があまりに激しいので、母親はしばしば駆け込んで娘をなだめなくてはなりませんでした。同じ頃、ドロシーは眠ったまま歩きまわり、朝目覚めると足が泥だらけになっていました。そのため、両親は彼女を精神病院に入院させたこともありました。
16才になったドロシーは学校を卒業して、好きなことをしていました。本を読んだり、エジプトの遺物を集めたり、大英博物館を訪れたりしていました。
その頃、父親のルーベン・イーディーは腕の良い仕立て屋でしたが、副業に手品師をしていました。当時はやり始めた映画に大きな可能性を感じ、古い劇場を改装して映画館を始めることにしました。それは大成功でした。映画の幕間には演奏会やショーも上演されました。中でもドロシーの歌は人気がありました。
当時のステージを見た住人はこう回想しています。
ドロシーは体格のいい女の子で、とても器量よしでした。よく覚えているのは「バグダッドの盗賊」の上映前の演目です。映画が始まる前、東洋風の衣装を着たドロシーがステージで、当時流行っていた「サハラのどこかで」を歌い出しました。ソプラノを震わせる歌い方はとても人気がありました。父親のルーベンはいつも客席の後ろに立って、拍手しないと承知しないぞというように観客をじっと見渡し、盛んな喝采を送っていましたよ。
ある時は、アマチュア劇団と一緒に、イシスとオシリスの物語を上演しました。歌詞は3千年前の古代エジプトのテキストからの引用でした。この歌で、コンクールの金賞に選ばれました。
歌え 死せるオシリスのために
嘆きたまえ その落とされた首を
光は世を去り 暗くたそがれた
星空はかき消され 闇が幾重にも天を覆った
歌え オシリスは亡くなられた
涙はあふれ 星は墜ち 炎は身もだえし 川は流れる
泣け ナイルの子らよ なんじらの主の死を嘆かん
27才になったドロシーは両親の反対を押し切ってロンドンに出ました。当時はエジプトの独立運動が盛んな時でした。ドロシーはエジプトをPRする雑誌の仕事で記事を書いたり、得意のイラストで風刺漫画を書いていました。そこで、ロンドンに留学していた若いエジプト青年と運命的な出会いをしました。
その青年イマーム・アブドゥルメギードはドロシーに結婚を申し込みましたが、彼女はセティ1世に片思いし続けていたので決心がつきませんでした。しかし、14才で夢で会ってから、セティ1世には一度も会っていませんでした。もうあの人には会えないのだ、もっと大人にならなければと、ドロシーはイマームと結婚することにしました。
【エジプトの田園地帯】
エジプト世界遺産紀行よりお借りしました。
こうして、念願かなってドロシーはエジプトの土を踏むことができたのです。彼は先に帰国して結婚の準備をしていました。エジプトに船が着いたとき、彼女は感激しました。
ああ、私は手すりの前に立って声を上げて笑い、泣いたわ。船を下りると、ひざまずいて地面にキスをして、「お母様、帰ってきました」といった。そして、もう二度とこの地を離れないと誓ったの。
迎えに来ていた婚約者のイマームや乗客、税関職員は唖然としました。当時のエジプトははイギリスの植民地で、イギリス人は横柄に振る舞っていてエジプトをバカにしていたのでした。税関職員は裕福そうな英国女性がこんな振る舞いをしたのを不審に思い、彼女のスーツケースをすみずみまで調べました。
ドロシーはそんなことにはおかまいなしで、ばつの悪い思いをしている婚約者に言いました。
イマーム、ごめんなさい。私、すごく感激してるの!
そして、つぶやきました。
エジプトの景色はなんて美しいのでしょう。ああ、イシス様、私を故郷へお導きくださって心から感謝いたします。
何を見ても、ため息が出るわ。初めて見たとはとても思えないわ。
恋人はファラオ3.エジプトでの結婚生活と不思議な体験
に続きます。
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こうして、念願叶ってエジプトへやってきたドロシーでしたが、みんなの予測もつかない突飛な行動で、結婚生活は波乱の連続でした。
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