夫の入院の翌日、主治医の先生からの説明がありました。
この骨折は一回の転倒で起きたものでなく、数ヶ月かかってずれていったもの。両側の大腿骨の骨頭部が、関節のつなぎの骨からずれて刺さって固定しているような状態。手術する場合は、ボールのようになっている骨頭部を削り取り、金属のボール状のものに替えるとのこと。
「手術しますか?車椅子生活になるが、このまま生活できないことはない。自然に治る場合もまれにある。骨頭が腐ってしまう可能性もあるが、その時に手術しても良い」
手術するかどうか、私はどうしたら良いものか決められませんでした。
先生は、「手術しても、筋肉がほとんどないから、歩けるようになるかはわからない。また、自分で歩く意欲を持ってリハビリしないと歩けるようにならない。今回は手術しないでおいて、またあとで手術しても良いよ」そう言われました。
説明を受ける前は、手術は当然するものと思っていたのですが、どちらでも良いと先生に言われ、私にボールを投げられても決断は難しいです。
私「そのままでも、生活はできるんですね。じゃあ手術しなくてもいいのかなぁ」
先生「今回は、手術しないでおこうか。本人にも聞いてみないとね」
コロナの影響で、病院は未だに面会は原則禁止になっていましたが、廊下に夫をベッドごと出してくれて、2ヶ月ぶりに会うことができました。夫も私に気づいて、「あっ、○ちゃんだ!」と言ってくれました。
私「手術しないでおこうか、手術痛いよー。私も骨折で手術したけど、麻酔覚めると痛かったよ」
夫は迷っているようでしたか、手術しないでいいという方向を一旦受け入れました。
手術をしないことにして、先生は、介護ホームに受け入れ体制について連絡しておくとのことでした。
病院から帰る途中で、介護ホームのケアマネさんから電話が入りました。
「病院から聞きました。介護体制が変わり、介護度も上がります。体を起こすことも難しく、歩けないので排泄はオムツになります。食事も今ほとんどとれない状態なので、どのようにしたら良いか…」
ほとんど寝たきり介護になってしまうということでした。
私は、「それでは、手術したほうが歩ける可能性もあるから、これから先生に電話して手術するよう頼んでみます」と寝たきり介護を中断させました。
その場で、病院に電話をかけて先生につないでもらい、「寝たきり生活になってしまうのは嫌なので、手術をお願いします」と頼みました。
先生は、「本人の意思が大切。手術しないと決めて、本人が手術したいと言わない限り難しい」とのこと。
私もそれ以上言うことができず、私が手術をゴリ押しもできず、「分かりました」と引き下がってしまいました。
しかし、その晩に思いがけないことが起こりました。