夫が指一本触れなくなってから
半年が過ぎてやっと
私は、これはかなり深刻な
問題なのではないか?
と思い始めた。
それまでは
どこかで「変だ」と思いながら
現実を直視できなかった。
これを問題と捉えると
限りなく深い穴に
落ちていくような予感があった。
大学の友人、麻美にそれとなく
相談したこともある。
麻美は、二人の子供のママで、
私が正直になんでも話せる
唯一の女ともだち。
麻美と友達になるまで
私には女ともだちと呼べるものは
いなかった。
なぜかって?
みんな、私に嫉妬するから。
それがうざい。
競争意識が見え隠れする友達は
いらない。
張り合ってマウント取ってくる女が
現れるたび
心の中で嘲笑ってた。
「あなたに競争意識燃やされるほど
私、レベル低くないんだけど」
全く自分のことを
客観視できない女ほど
厄介な存在はない。
麻美だけは、最初から
私に負けてるってことを
ちゃんとわかってた。
そして、
いつも私の引き立て役を
喜んでしてくれたの。
「希子ってすご〜〜〜!」
「希子ってやば〜い!」
「希子って最高!」
その三言しか言語を知らない
んじゃないかってくらい、
私が何を言っても、
何をしても
そう言っていちいち感動してた。
私より先に結婚したことだけが
頭にきたけど、
相手が
名前も聞いたこともないような
会社のサラリーマンじゃあねぇ。
結婚式に呼ばれたけど
病気になったって嘘ついて
ドタキャンした。
冴えない女と男の結婚式なんて
冴えない人しか来てないに決まってる。
時間が勿体無いでしょ。
限りある人生の時間を
何にもならないものに使ってどうするの!?
あ、話を戻そう。
麻美に夫とセックスがないことを言った。
正直、麻美に弱みを見せるなんて
むかついたけど、
でも誰かに聞いてもらわないと
欲求不満ではち切れそうだったの。
あの時、女性風俗があるって
知ってたらなぁ。
しみじみ、そう思う。
(model by lily/masumisakaki)
話を聞いた麻美が言った。
「セックスがないなんて快適じゃない!
羨ましい!」
私は絶句した。
羨ましい!?
欲求不満で
もやもやが溜まりまくって
イライラトゲトゲしてるのに!?
麻美が言った。
「子供産んでから
全く旦那としたくなくなっちゃって。
育児してたら
そんな体力ないのよぉ」
私は見逃さなかった。
子供のことを言う時
勝ち誇った光が
アイツの目に宿ったのを!
それ以来、麻美には会っていない。
セックスがなくなって
快適だなんて思ってる女の
子供自慢なんて聞きたくもない!
私は、
欲望に正直でいたい。
したいときはしたいし、
欲しいもの全部手に入れたいの!
とうとう、夫に突撃することにした。
「TOKYO LOVE BIBLE 」⑤ 終わり
つづく
*この物語はフィクションです。
実際の団体、人物とはいっさい
関係はありません。
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