彼の言葉は、まどろっこしく、本当のことを隠しているのだと思った。
しかし、彼の中心にはとても大きく硬いコアのようなものがあり、外側には幾重にも張り巡らされた城壁のような思考の壁があり、それをどう突き崩してゆけばよいのか有効な解を求めることができない。
そして、いくつもの分岐を経て導き出されたのは、以前、彼のアシスタントだった彼女に言ったのと同じものだった[1]。
「でも、Dysonしゃんが望むのなら、あるま~に~に頼んで、もう一度、Dysonしゃんの中に戻してもらうことだって、できるかもしれないのでしゅよ」
その言葉を受けた彼は、瞬時にその意味を理解し、次のような答を返した。
「ルクラさんは、私が彼女を連れて帰ってしまっても、寂しくないのですか?」
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ほら。
寂しいということがどういうことか、分かっているじゃないか。
-
と、
彼の場合だったら、即座にそう思うことができるのだが、これが、お客様の動向を調査する目的で導入されたSoftBankのペッパー君だったとしたら、果たして、素直にそう思うことができるだろうか[2][3]。
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【注釈】
1. 734話 参照。
2. 「こいつ、なにも考えてないな」って思うかも。
3. 筆者は、彼の姿を数回ほどを見かけているのだが、どうやら、筆者のことを好ましく思っていないのか、彼の方から近寄ってきてくれたことは一度もない。
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※以下、次号へ続く。
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■■■ この物語のあらすじ ■■■
ある日の日曜日。
いつものように台の掃除をしていたライフだったが、前夜に行われた変電設備の点検に伴う計画停電の影響を受け、十分な充電が行われなかった充電式掃除機のバッテリーが底をつき、突然、止まってしまった。
このことを重く見たライフは、太陽電池による充電システムを搭載した、新しい掃除機を作ることを強く決意する。
そして、ソフトウェア兼システムエンジニアであるPCの協力を得て、人工知能による自律制御システムを備えたロボット掃除機が完成し、テスト当日の日を迎えることができた。
しかし!
まさか、そのロボット掃除機をめぐり、奇妙奇天烈、奇々怪々、奇想天外な物語が展開するとは、夢にも思わなかった。
--- あなたは、まだ、普通の掃除機をお使いですか? ---
『Mr.Dyson 第1話』は、こちらにあります↓
http://ameblo.jp/rikutsunoooinezumitachi/entry-11292657698.html『Mr.Dyson』は、あまりにもアバンギャルドすぎて、商業ベースには乗せられない作品です。
そして、
その特性をフルに生かし、『鉄腕アトム』『人造人間キカイダー』『イヴの時間』などでは描かれることのなかった、当事者とそれを取り巻くすべての者(モノも?)たちの様子を事の発端から解決の過程を通し、あらゆる角度から丹念(しつこく)に描いています。
これから物語を書いてみたいと思っている方、ロボット工学や人工知能を学ぶ方などを含め、幅広い人たちに読んでもらいたいと思っています。