花をご所望(24)・・・悲しいお正月(別れは突然に)・・・ | 小さな暮らしはミルフィーユのように・・・

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昨日(1月3日)は初出勤でした。

師走の慌ただしさの店内とは打って変わって

BGMも華やいだゆったりとした音楽が流れています。

 

私自身も、若干ゆったりとした気持で作業に取りかかっていました。

お客様もチラホラで、対応も丁寧にすることが出来てホッとしていたところ・・・

30代と思しき女性。

先のお客様が帰って行かれるまで、

少し離れたところで待って居られるのに

私も気付いていました。

 

店内が空いたところで、

『あの・・・、相談に乗って頂きたいのですが・・・』

  小さな小さな声で、そしていきなり私の腕にしがみついて来られました。

『はい、どうぞ仰ってくださいませ。』

『あの、お棺にお花を入れたいのですが、何がいいですか?』

  私も内心ドキドキし乍ら〜、遠慮がちに

『はい、仏さまはお若い方ですか?』

  泣き腫らした目をされていて、咄嗟にそんな事を尋ねていた私です。

『64歳です。』

『お若いんですね。未だ未だこれから、早過ぎますよね。』

『母なんです。』

  お尋ねしにくいのですが〜、しっかり対応したいので

『あの、長く患われていらっしゃったのですか?』

『いえ、突然なんです。私、納得できてないんです。

母もまさかこんな事になるなんて思ってなかったと思います。

母の思ってたのと違う亡くなり方です。

母も納得出来ないと思います。事故に遭って・・・。』

  最初の様子から、仏さまが天寿を全うされたと言うことでは無さそうに感じていましたが

『お気の毒なこと・・・、あの、お客様、大丈夫ですか?』

  身体が小刻みに震えておられて、言葉がうまく出て来ない感じです。

『母、お花が大好きで、いつもこちらでお花を買ってたので・・・

暮にもお正月の寄せ植えをこちらで買って、庭に置いてありました。

お正月のお花も生けてあって、お正月の用意も全部出来ていて、

それなのに事故で・・・』

  と、また泣いてしまわれて・・・

 

  私も思わずお客様の背中を摩り乍ら、

『お辛いですね。お母様の為にお花、選ぶお手伝いさせていただきますね。』

  ウンウンと頷き乍ら、泣き続けておられて

『告別式はいつですか?』

『今日です。』

『では、急ぎましょう。』

『2時からです。』

『それでも、早くお花を準備して、お母様の傍にいらっしゃるのが〜

その方が、きっとよろしいかと思います。ね!』

  ぼんやりとしておられて、気になりつつも時間がありません。

   つい、お客様を急かしました。

『はい。』

 

『お花、喜ばれますよ。きっと。

綺麗なお花でお母様を飾ってあげてください。

私も両親が亡くなった時、そうしました。』

 

『はい。お葬式のことも経験がなくて、分からないんです。

ずっとボォ〜としてしまって、でも、急にお花が要ると思って、

此処に来たんです。』

 

『会館(葬儀場)の祭壇に飾ってある花もお棺に納めることになると思いますが、

どれくらいの量がよろしいでしょうか?

如何致しましょう?』

 

『祭壇は菊ばかりでした。

母はもっと、明るい可愛い花が好きだったから、

そう言うお花を沢山入れてあげたいと思って。』

 

『そうですね。

じゃあ、選びましょう!』

 

淡いピンクのトルコ桔梗を二種類、

パステル紫のトルコ桔梗、

優しいピンクと黄色のスプレーカーネーション、薄紫の花、

カサブランカとピンクのオリエンタルリリー、

棺に納め易い様に短めにカットし、

セロファンでお包みして、お渡ししました。

 

『これを、葬儀会館の担当の方に、

親族でこのお花をお棺に入れたいと言うお気持ちをお伝えになって、

そうすれば、担当の方が花入れ用のお盆の様な物にお花を入れてセットしてくださる筈です。

お花をお棺に入れていると,気持が落ち着いて来るんですよ。

お花にはそんな不思議な力があるように感じています。

だから、お辛いけれど、しっかりとお見送りしてあげてくださいね。』

 

お渡しした花の包みを覗かれて、

少し明るいお顔になられて、

 

『母、喜びますね。

ありがとうございます。

本当に、ありがとうございます。

母の好きなお店だから、此処に来てよかったです。

こんなに綺麗にお花をしてもらって、ありがとうございます。』

 

そう言って、お帰りになりました。

 

 

『お気をつけて〜』

いつもと同じお見送りの言葉でしたが、

それ以上の言葉は出て来ませんでした。