きっかけは… | アブエリータの備忘録

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Yesterday is history,
Tomorrow is a mystery,
Today is a gift.
That's why it is called "present".

 

『新明解国語辞典』を買った。

 

 

 

 

広辞苑とか角川漢和中辞典とか、ずっと昔から家にある辞典以外は、国語辞典を持っていないことに気が付いた。

 

 

増えていった紙の辞典は、英和、和英、英英、西和、和西、西西など、主に外国語の辞典だったが、それらも電子辞書が出始めたころからあまり使わなくなってしまった。

 

 

紙の辞書は、もう15年以上前に、論文を書くときの必要に迫られて『類語辞典』を買ったのが最後だった。

 

 

 

 

ずいぶん前に、友人が「『新明解国語辞典』、面白いで!」と、辞典内のある熟語を例にその意味を説明する文章を教えてくれたことがあった。どんな熟語だったかとんと思い出せないが…。

 

 

以来、買おうと思っていたのに、必要が無いからか忘却の彼方へ。

 

 

前置きが長くなったが、これからが本題。

 

 

コロナ禍の最中の今年7月に、誘われて、迷いながらも参加したミニ同級会は、関東から来た同級生(K君)のために集まった会だった。

 

 

K君は、1月に脳梗塞で倒れて、今後車には乗らないというので、その車をK君に売った大津市の同級生が関東まで取りに行って、K君を乗せて連れてきたのだった。

 

 

他のメンバーはすでに知っていたので、初めて知った私が主にK君と話していろいろ尋ねた。言葉のやり取りはいつも通りのにぎやかでユーモラスなK君で、〈どこが悪いの?〉と思うくらいだった。、

 

 

彼は病気についての説明はできないらしく、脳梗塞で倒れたことなどの経過を簡単に書いた紙を持ち歩いていた。

 

 

幸いにも運動機能には全く後遺症が出なかったのだが、相手の話すことを理解できても、答える時に適当な言葉が出てこない。字も書けない。また、携帯電話のメールなども書けなくなっていた。

 


7月のその日、たまたま私はK君の正面に座った。彼の外国に住む恋人の話が出たときに、「連絡したいことを英語に訳して欲しい」と頼まれた。彼は数年前に奥様を亡くしていて、子供たちは独立している。いわゆる独居老人。

 

 

相手の人は東南アジアに住んでいて、英語が達者なわけではなさそうだが、「とにかく短くわかりやすい英語に訳して欲しい」ということだった。

 

 

K君の住まいは関東。字を書けないので通信手段はLINE電話だけ。彼が電話で訳して欲しい内容を言う。それを簡単な単語を使って、短い英文を作って、その日本文と英文を、LINEではなくメールで送る。

 

 

彼は以前は出来ていたはずのコピペもできないので、私が訳した英文を紙に書き写して、それを見ながらLINEに打つらしい。英語はアルファベットのキーを押せばいいので打てるのだそうだ。

 

 

平易な単語で短い英文に盛り込んで作文するのは難しい。フツーに訳せばごくごく簡単な文章だから、「近くに住んでいるT君に頼めば?」と言うと「アイツではあかん!」らしい。

 

 

簡単すぎる英文で意味が伝わるかどうか、私は超訳した単語の連なりを翻訳アプリに入力し、それが正しい日本語に訳されているかどうか試してから、K君に送っている。中学生でもできる内容を、時間をかけて英作文している私。

 

 

ここまで来て、まだ『新明解国語辞典』との関係が見えてこないが…。

 

 

英文に訳するというお手伝いだけのつもりが、どんどん頻繁に電話がかかるようになって、恋人への連絡事項のために、週に3,4回の時や一日に3回くらいの時もあった。

 

 

最近は少し落ち着いて、毎週リハビリを受けた後、リハビリの一環の動画(担当の人が撮影したもの)を送ってきて、その夜に必ず電話がかかるようになった。今は週に2回くらいのペース。

 

 

リハビリではよく宿題が出るのだが、先日はそれを手伝ってほしいと依頼が来た。

 

 

50音の あ から順番に あ から始まる(K君とかかわりの深い)人の名前や場所の名前を考えてくるという宿題で、あと17文字が思い浮かばないので、名前や場所でなくてもいいから考えてほしいとのことだった。

 

 

K君と電話で話をするようになったころ、なかなか出てこない言葉を彼が「ほら、あれ、なんていうかなぁ。どの家にも1ぴきおるヤツ…」っていうから、「1ぴきってなんや?」と私の頭は???。

 

 

(いまどき)ネズミか?ゴキブリか?と聞いても「違う!」で、それから質問攻めして出てきた正解は【テレビ】だった!どの家にも1台はあるわなぁ…。1ぴきって言うからわからへんねん!

 

 

リハビリで【傘】の絵を見せられて、わかっていても「かさ」と言えなかった話も聞いていたので、身近でよく使う普通の単語を探すために簡単な辞書で調べるしかないと思った。

 

 

宿題でまだ見つけられないという17文字は、辞書でも語数が少ない  れ ろ のような文字も含まれていた。

 

 

やっと『新明解国語辞典』に行きついた。K君のことがきっかけで思い出したこの辞典をア〇ゾンで購入。

 

 

しかし、届いたその辞典にはそんな簡単な言葉は載っていない!そこで思いついたのが、何年か前に私が孫に買ってあげた国語辞典だ左下矢印早速借りてきた。

 

 

 

ここから、それぞれ3語ずつくらい、生活に必要そうな単語をピックアップし、他には彼の高校時代に住んでいた在所の駅やローカル線(私も同じローカル線仲間)の名前などメールに書いて送った。

 

 

調べたり、思い出したり…の作業には結構な時間がかかったのだ。

 

 

今は、彼の口から私の名前もすぐに出てくるくらい回復しているような部分もあるが、一番親しい友人の名前が出たり出なかったりで、波がある。

 

 

我々の年齢になると、K君ほどではなくても日常生活でよくある現象だから、彼は後遺症プラス老化現象ゆえに、そうそう簡単に回復は望め無さそうだ。

 

 

被災者の支援のようなボランティア活動はできない私だが、親しい友人の力になれるのなら…と思って、≪なぞなぞ遊び≫のような彼との会話で頭をフル回転させている。

 

 

『新明解国語辞典』は私の新しい愛読書にしよう。辞書を読むのが好きだった頃に戻って…。

 

【忖度】をこの辞書で引いてみた下差し