ミスコン女王が殺された

ジャナ・デリオン





CIA諜報員フォーチュンは、ある事情から、正体を隠してルイジアナ州の小さな町シンフルにやってきた。
しかし、シンフルに到着するなり人骨を発見する。
シンフルを牛耳る(⁈)婦人会「シンフル・レディース・ソサエティ」のメンバー、アイダ・ベルとガーティと行動を共にすることになり、否応なく事件に巻き込まれてしまう。
ここまでが、シリーズ第1作『ワニの町へ来たスパイ』のあらすじ。


その事件が解決した翌朝。
朝7時にフォーチュンの携帯が鳴り響く。
ガーティからの緊急連絡だ。

シンフル・レディース・ソサエティと敵対する婦人会GW(「神の妻」)の仕切りで、今年の夏祭りは子どもミスコンを開催することになったと言うのだ。

さらに悪いことに、GWの中心メンバーであるシーリアの娘、元ミスコン女王のパンジーが帰郷するという。

元ミスコン女王になりすましているフォーチュンは、実際のところ化粧や美容その他「女の子」っぽい事に全く興味なし。
一夜漬けの特訓の元、シーリアとパンジーの呼び出しに応じ、子どもミスコンの打ち合わせに臨むフォーチュン。

しかし案の定、激しくパンジーとやり合うことに…
その翌日、パンジーの死体が発見され、フォーチュンがその容疑者となってしまう。

アイダ・ベルとガーティは、フォーチュンの無実を証明するため、独自に事件を調べ始める。


人気シリーズの第2作を遅ればせながら読みました。
直前まで読んでた『両京十五日』がガッッッツリ読ませる冒険活劇だったので、今回は少し軽めのものを。

この「ワニ町」シリーズはとにかく軽妙で痛快。
読んだら元気をもらえるところは「ミセス・ポリファックス」シリーズにも通じるものがあります。
おばあちゃんスパイの活躍が好きなんですよね、わたし。


今回も、アイダ・ベルとガーティ、そしてもちろんフォーチュンの毒舌合戦が炸裂。
呼吸をするように口から飛び出す悪態には、何度思わず吹き出してしまったことか。

終始ドタバタコメディーのような展開ながら、人間ドラマとして読ませる部分があるのも魅力のひとつ。

CIAのスパイとして生きてきたフォーチュン。
これまで、同世代の友だちも恋人もいたことがない。
テレビはCNNしか見ず、世間の流行にも無関心。
そのことが一大騒動を巻き起こすのが可笑しい。

そんなフォーチュンが、アイダ・ベルとガーティに加え、同世代のアリーとも友情を育んでいく。
フォーチュンを救うため危ない橋を渡るアリーと、それを申し訳なくも嬉しく思うフォーチュン。
どっちもええ奴やぁ。

テレビを見るようになったし、カーターとの間にロマンスの気配も…?
そんな変化をフォーチュンが戸惑いつつも積極的に受け入れ、喜びを見出している姿が微笑ましい。


このシリーズ、最後には全て丸く収まってくれるに違いないという謎の安心感がある。

ただ、ラストには次巻に続くであろう伏線が既に張られている。騒動の予感しかない。
次巻も多分この直後から物語が始まりそうだ。

次巻を読むのは少し先になりそうだけど、きっとシンフルでは皆んなが待っていてくれる、そう思えると安心だ。


とにかく現実を忘れて楽しめる、
フォーチュンたちと一緒にワアワア騒ぎながら時間を過ごせる、
こういう心の栄養になるシリーズは、大事に読んでいきたいものです。


【書誌情報】
『ミスコン女王が殺された』
ジャナ・デリオン
島村浩子訳
創元推理文庫、2018(原著2013)