[花の影] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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チェン・カイコー監督・原案。シュウ・チー脚本。ワン・アン・イー原案。クリストファー・ドイル撮影。チャオ・チーピン音楽。96年、香港・中国映画。


スカパー、ムービー・プラスにて鑑賞。[さらば我が愛/覇王別姫]のチームによる。20年代の上海、蘇州を舞台に繰り広げられる愛憎劇。カイコーの作品は観てないものが多かったので観てみたが、これが凄まじ今愛憎劇で引き込まれた。

物語の核になるのが、この時代に蔓延していた阿片だ。映画は登場人物たちの幼少期1911年から始まり、蘇州の大富豪パン一族に嫁いだ姉シウイー(ホー・サイフェイ)を頼りにやってきた弟のチョンリャン(レスリー・チャン)。当主の娘ルーイー(コン・リー)と弟代わりのドァン・ウー(リン・チェンフォア)、皆が阿片により退廃した暮らしを送っている。最愛の姉に弄ばれたチョンリャンは家を飛び出し、上海へ行き、人妻を誘惑して金品を巻き上げる上海マフィアの大ボスの元で働いており、愛人の天香通りの女とかなり深い仲になっている。やがて、成長したルーイーは廃人になった当主に代わり一家の主となり、ドァン・ウーは補佐役となり養子にされる。ルーイーはドァン・ウー相手に女になり、やがて戻ってきたチョンリャンに惹かれていくのだが…。

姉により男にされたチョンリャン、弟代わりのドァン・ウー相手に女になったルーイー、数奇な運命に導かれて出会う二人だが、なかなか想いが通じ合わない。シスコンにも似たコンプレックスの存在、男女の引き合わない憎愛、カイコーが描く愛の表現は一筋縄ではいかない。
 ウォン・カーウァイのキャメラを務めたクリストファー・ドイルの赤を基調とした映像が秀逸。そして20年代の香港を忠実に再現した美術、衣装も素晴らしい。
 いくつか引かれている伏線を回収しながら、映画はアイロニカルに冒頭に戻っていく。コン・リー、レスリー・チャンの演技も見所だが、その他の俳優陣も実に好演してとり、
チェン・カイコーの秀の一本だ。