[シェーン] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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ジョージ・スティーヴンス監督・製作。A・B・ガスリー・jr脚本。ジャック・シェーファー原作。ロイヤル・グリッグス撮影。ヴィクター・ヤング音楽。53年、アメリカ映画。

Amazon Primeにて再観。随分久しぶりに観たが批評家アンドレ・パザンが新しい西部劇と位置付けたように、先住民を敵に見立てた完全懲悪のドラマでなく、先住開拓者と開拓移民の問題を内包させ、アウトローであるシェーン(アラン・ラッド)とジョー・スターレット(ヴァン・ヘフリン)の一家とのふれあい、その中で仄かに抱く妻マリア(ジーン・アーサー)との恋心、そして少年ジョーイ(ブランドン・デ・ワイルド)に男の生き様を伝えていく伝承の物語であり、確かな人間ドラマが描かれたおり、当時話題になったという激しい格闘描写とガンファイトで見せる西部劇だ。

舞台は南北戦争後のワイオミング州、ジョンソン郡。牧畜業者ライカー一家(エミール・メイヤー)と開拓者たちが対立している。そこに来訪者としてシェーンがやってくるという設定。スターレット一家と過ごすうちにシェーンはそこで仕事を手伝うようになる。ある日、彼の買い物を頼まれてグラフトンの店に行き、ライカーの部下クリス(ベン・ジョンソン)に侮辱されたことをきっかけに後の争いに発展していくのだ。

ジェーイが後ろでライフルの動かす音に素早く反応するシェーン、こうした描写が実に細かく。例えば、上記のクリスが改心するなど、伏線を張った脚本もよく書けている。またワイオミングの壮大な山々を写すロイヤル・グリッグスのキャメラはアカデミー撮影賞を受賞している。

そして酒場でスターレット、シェーンと争いになって大格闘を繰り広げるのだが、ここはジョン・フォード西部劇を踏襲している。それをきっかけに黒ずくめのニヒルなガンマン、ジャック・ウィルソン(ジャック・パランス)の登場となる。

ジョン・フォードやハワード・ホークスの西部劇がガン・ファイトを中心に見せる映画であるとに対して、本作はシェーンが銃を抜くのはジョーイに銃を教える場面とラストのガンファイトのみであり、だからこそそのガンファイトが印象に残り、新しい西部劇という論評になったのだろう。

本作が最初に水曜ロードショーで放送された時、水野晴郎さんも絶賛していた映画史上有名なジョーイによる[シェーン・カンバック]に繋がっていく。[俺は銃を捨てることはできなかった、強い男になれ]といい残すシェーン。ジョーイは真剣に戦えば負傷することはなかったよね、これは相手に先に抜かせないと正当防衛が成立しないからだが、それにはシェーンは答えず、無言で去ったいく。その男の後ろ姿がカッコ良く、ガンマンの悲哀を感じさせるのだ。

名作です。