[君たちはどう生きるか] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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宮崎駿監督・原作・脚本。奥井敦撮影。久石譲音楽。米津玄師主題歌。スタジオ・ジブリ制作。23年、東宝配給。

DVDにてやっと鑑賞。引退したはずの宮崎駿監督が10年ぶりにメガホンを取った冒険ファンタジー。第96回アカデミー賞長編アニメ賞受賞作品。

宮崎監督よりに観てあげれば、宮崎流フェリーニ。ジブリの[ファンタジア]とでも表現すればいいのだろうか。でも、結局、映画である以上面白いか面白くないかなので、厳しい見方をするなら、全然面白くない2時間は苦痛でしかない。

太平洋戦争末期。母ヒサコを空襲で亡くし父勝一(木村拓哉)と疎開したものの、新生活を受け入れられずにいた少年眞人(山時聡真)。ある日、彼は大叔父(火野正平)が建てたという洋館を発見し、謎のアオサギ(菅田将暉)に導かれながら洋館に足を踏み入れるが…。

映画は吉野源三郎の同名小説にイメージを重ねているというが全編に繰り返される芳醇な空想的な幻想空間のイメージは過去の宮崎作品で登場したものを彷彿とさせる[千と千尋の神隠し]の湯屋。[ルパン三世カリオストロの城]のカリオストロの城と[やぶにらみの暴君]からイメージされた地下世界。[天空の城ラピュタ]など、過去の作品に登場したイメージ描写の連続であり、ある意味宮崎駿らしいが、斬新に感じさせてくれるものはなく。冗長な感じは否めなかった。
 戦争による母の死を受け入れられず、自らの身体を傷つけ自らの悪意の象徴にする眞人。幻想世界の中で若き日の母親ヒミ(あいみょん)と共に、父の婚約者夏子(木村佳乃)を助け出そうと奮闘する姿を描き出していく。
 母への思慕との決別。自己の確立、大人への扉を開く疎開中の物語。このテーマもこれまでの彼の作品を集大成にした映画だ。

 宮崎駿が10年ぶりに撮ると言えば、彼のファンなら観たくなるのは当たり前、まだこんな面白い作品を撮れるのかと期待してしまう。黒澤明もそうだが、年齢的に高齢になってくると、物語力より映像で見せようとするのは宮崎監督も他の監督と同じ。一番残念に感じることはやはり、映画は面白い物語があってこそ、リピートしたいと思うのであって、これは何度も観たいとは思わない。