[ナイル殺人事件]2020年版 | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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ケネス・プラマー監督。マイケル・グリーン脚本。アガサ・クリスティ原作。ハリス・ザンバーラ・ウコス撮影。パトリック・ドイル音楽。22年、英米合作。

Amazon Primeにて鑑賞。酷い、37年の原作でTVも合わせると今回ぎ3回目の映像化なのだが、史上最低レベル・リメイクと言っていい。犯人を変えなければ、何をしてもいいのか?これは原作側なら考えれば許されざる改訂である。
大体、78年のジョン・ギラーミン監督版をご覧頂きたい。ポワロの友人ジョニーレイス大佐、デヴィッド・ニブンが演じ、彼の誘いでポワロはナイルに来るのに、本作では割愛され登場しない。前作から引き続きブーク(トム・ベイトマン)が起用され、殺されてしまう。笑、話にならない。しかも、冒頭にモノクロで戦争でエルキュール・ポワロ(ケネス・ブラナー}が愛を失うエピソードが描かれる。これはアガサ・クリスティは殺人の要因を愛とすることが多く、愛のエピソードを入れたかったのだろうか、ブラナーの意図が本編に全く生きていない。
 さらにコンプライアンスの問題からか、黒人俳優を何人か起用、亡くなったるはずのサロメ・オッタボーン(ソファー・オコネドー)がギターを弾いて歌う。こんな役勝手に作るなよ。しかもブルースなんて、物語に合わないだろ。リアリティが全くない。
 78年版ではロザリー、オリビア・ハッセーが演じ、唯一物語に救いのエピソードになっていたものをレティーシャ・ライト、リネットの同級生で黒人が演じ、その救いのエピソードも割愛されてしまっている。
 78年版ではリネット(ガル・ガドット)とサイモン・ドイル(アーミー・ハマー)だけがオーディションによる新人で、後は名だたる超オールスター・キャストだったのに、何この貧弱な誰も知らないような配役は。それから医者ウインドルシャム(ラッセル・プラント)と財産管理人アンドリュー・カチャドリアン(アリ・ファザル)、これは78年版ではジョージ・ケネディが演じたのだが、このふたりに勝手にリネットの恋愛関係を設定して、争わせている。原作にある重要な優雅さがまるでない。そして、原作で重要なポワロがフランス人と間違われ、ベルギーと訂正する場面もない。つまり、ケネス・ブラナーはクリティという作家の味わいが全く理解できていない。ポワロって、ここまで冷徹な探偵ではない。解釈そのものが間違っている。
 エジプトとナイルでロケが行われた78年版に対して、全部撮影はイギリス、VFXで処理したのだろう。78年でも大き過ぎると指摘された蒸気船はさらに巨大化、船室などまるでタイタニックである。
 役者たちにクリスティの時代の雰囲気が再現されてないばかりか、リネットのメイドルイーズはジェーン・バーキンが演じて犯人を語ろうとして殺されたはずだが、そこをブークに変更されてしまっている。とにかく、原作をこれだけ改悪した作品は他にはない。ケネス・ブラナーには二度とクリスティを撮ってほしくない。
史上最低のリメイク映画である。0点。78年版観てる方、これ観て激怒しないのだろうか。自分は絶対に許せない‼️