[ALWAYS続三丁目の夕日] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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山崎貴監督・脚本・VFX。古沢良太脚本。西岸良平原作。柴崎幸三撮影。佐藤直紀音楽。07年、東宝配給。

スカパーWOW WOWプラスにて劇場鑑賞以来の再観。前作から二年、昭和34年春に設定をして夕日町三丁目の人々を描く続編。公開当時、そこまで期待してなかったわりに痛く感動させられたが、改めて非常に完成度ノ高い続編だ。
 それは山崎貴率いるロボットによる特撮技術、今回は東京タワーの内部、上野駅、羽田空港、高速ができる前の日本橋など風景だけでなく、蒸気機関車C-62、都電、特急こだまなどの乗り物。石原裕次郎作品で盛り上がる映画館、当時、至るところにあった銭湯などの街の様子、そして何より、現在公開中の[ゴジラ-1.0]に繋がる54年版の[ゴジラ]がオープニング再現されて驚かされた。本作の素晴らしさはそうした特撮の驚異的な再現力に加え、芥川賞を目指す茶川と踊り子のヒロミ、彼が育てる淳之介のエピソード、そして向かいノ鈴木オートを巡る多彩な物語を綴る山崎・古沢コンビの脚本の秀逸さにあり、そのどこエピソードにも感慨深さが感じられた。

昭和34年の春、日本は東京オリンピックの開催が決定し、高度経済成長時代を迎える。そんな中、東京下町の夕日町三丁目では、茶川(吉岡秀隆)が黙って去って行ったヒロミ(小雪)を想い続けながら淳之介(須賀健太)と暮らしていた。そこへある日、淳之介の実父である川渕(小日向文世)が再び息子を連れ戻しにやって来る。一方、鈴木オートには則文(堤真一)の友人鈴木大作(平田満)が事業に失敗、ダムの仕事に行くため、娘の美加(小池彩夢)を預けに来る。穏やかでない息子の一平(小清水一輝)、母親代わりになろうとするトモエ(薬師丸ひろ子)。修理工として働く星野六子(堀北真希)には、同郷の孝雄(浅利陽介)が想いを寄せ…。

大きな茶川家、鈴木家の物語の他に、則文の戦友が同窓会で幽霊になって現れる話し、トモエの初恋の人山本(上川隆也)と日本語で再会する話。また医者の宅間が亡くなったらしい妻と娘に会おうと狸を予防とする話など、心に沁みるエピソードを散りばめながら、クライマックスに向かっていく。
 最初はこまっしゃくれて反抗的だった美加も鈴木家の人達に接するうちに徐々に心を開いていく。そして、給食費もままならない茶川に息子を返すように迫る川渕、意を決した茶川は芥川賞を目指して執筆を開始。そこに悪に手を染めてるらしい孝雄が話が絡んでくる。裏金まで渡して芥川賞発表ノ日を待つ夕日町の人達、そんな中、ヒロミは茶川家に寄り大阪に向けて旅立つが…。

このこだまの中でヒロミが読む場面に合わせて、茶川の独白で語られる彼の小説[踊り子]。これは彼がヒロミに宛てた究極のラブレターだ。深い感銘を観る側に残す。そして、父が迎えに来た美加に一平が貯めていた貯金で送った物が素敵。
 いくつもの伏線を見事に回収しながら、鈴木家は完成した東京タワーの展望台から、そして家族の絆を取り戻した茶川家は日本橋からあの美しい夕日を見つめる。
 これから東京オリンピックを迎え高度経済成長の中、未来を夢見れた時代、お隣がまだ信頼という絆で成り立っていた町、そんな日本の古き良き時代を特撮技術と物語で回顧させながら、生きる希望を感じさせてくれる山崎貴の凄さに改めて脱帽させられる秀作だ。