[肉体の門]88年版 | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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五社英雄監督。田村泰次郎原作。笠原和夫脚本。森田富士郎撮影。泉盛望文音楽。八代亜紀主題歌。88年、東映配給。


本当は日活版を観たかったのだが、スカパーシネフィルWOW WOWの録画にて鑑賞。田村泰次郎のベストセラー小説の何と5回目の映画化にあたる。身体一つで戦後の荒廃期を生き抜いた売春婦達の生き様を描く。


登場してくる女たちそれぞれにドラマがあり、五社監督は得意のエロスを絡めながら、掘り下げていく。戦争という混乱がそれぞれの女たちに残した傷跡。紆余曲折、葛藤を重ねながらも目的や夢を実現しようと肉体を捧げるおんな達の逞しさと儚さが伝わってくる。特に主人公、浅田せんを演じたかたせ梨乃の存在感に圧倒される。


昭和22年、秋。米軍占領下の東京で、浅田せん(かたせ梨乃)をリーダーにマヤ(加納みゆき)、花江(山咲千里)、美乃(長谷直美)、光代(芦川よしみ)、幸子(松岡知重)と新入りの町子(西川峰子)たちは街娼をしていた。棲み家はどぶ川沿いの焼けただれたビルで、新橋を中心に関東一家と名乗っていた。ライバルは銀座の裏に棲むお澄をリーダーとするラク町一家だった。焼けビル対岸一滞の闇市を仕切るやくざの袴田(根津甚八)一家がせんたちを配下すべく脅すが怯まない。、関東一家には巨大な不発弾という守り本尊があった。いつ爆発わからず、やくざたちもうかつには近寄ることができなかったのだ。秋も深まった秋の夜、一人の男が関東一家に逃げ込んできた。伊吹新太郎(渡瀬恒彦)というその男は元の陸軍上等兵で、強盗を働いてMPに撃たれたのだった。せんは新太郎に、自分が初めて抱かれた男の面影を見た気がした。傷が癒えたころ新太郎は「一緒にここを出よう」とせんを誘うが、断わられた。彼女には仲間たちと金を貯めて、ここにダンスホール『パラダイス』を造るという夢があったのだ。ところが、ある日町子が一家の金を持ち逃げして袴田組についたため、せんたちはリンチにかける。袴田は戦前に兄弟分だった新太郎をさかんに組へ誘ったが、一匹狼となった彼は影ながらせんを見守っていた。冬を迎えるころ、せんはライバルのお澄(名取裕子)と打ちとける仲になっていた。彼女は母と妹を襲ったロバートという米兵に復讐するため、娼婦に身を落としていたのだった。袴田組のビルの追いたても激しくなったある日、新太郎は牛を一頭連れてきて、それをステーキにして酒宴となった。その夜、新太郎はマヤを抱き、二人は姿を消した。やがて関東一家の統率も乱れ、バラバラになり…,。


マヤはボルネオで亡くなった兄の面影を伊吹に重ね、自分が初めて、身を任せた男である伊吹に対して、想いを抱きながら、マヤを抱く伊吹を見つめるせんの切なさ。まるで、その憂さ晴らしのように傷病者の帰国兵に身体を開いていくせん。おんなとしての性と維持を感じさせる場面だ。戦場で死地を彷徨った伊吹や袴田、男たちの裏側で、生き残り、被災したおんなたちのそれぞれのドラマが痛ましい。