[日本万国博覧会] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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谷口千吉監督。植松栄吉撮影。間宮芳生音楽。石坂浩二、山根秀一ナレーション。71年。日本万国博映画配給。


市販のDVDにて鑑賞。1970年に開催されたEXPO’70大阪万国博覧会の公式長編記録映画であり、自分はこれ発売日に購入した。ここ数日、大阪万国博覧会の話題が出たので久しぶりに見直してみた。


この当時は日本で大規模な催しが開催されると公式の記録映画が撮影されることが恒例になっており、『東京オリンピック』は市川崑監督が、本作は谷口千吉監督が選任され監督を務めている。(ちなみに札幌冬季五輪や沖縄海洋博覧会も記録映画はある)


映画は大阪千里丘陵における会場設営の様子から始まり、カウントダウンの様子。そして開会式当日のレセプションなど、丁寧に紹介している。メインのナレーターは石坂浩二が務め、かなり格調高い。式典には川端康成などの文化人が参加。昭和天皇、佐藤栄作総理大臣などの開会の挨拶に続き、参加77か国のコンパニオンによる挨拶が続く。



昭和45年3月13日・雪の大阪千里丘陵、万博閉幕の翌9月16日、無人の会場シーンまでの百八十余日間を、総ブロデューサー田口助太郎以下のべ一万八千名のスタッフにより、この世紀の祭典の記録は十万米のフィルムが撮影される。


開会式における儀式から、華やかなお祭りに転調する派手な色彩。建築オリンピックといれるほど、アイデアと尖端の技術が生かされたパビリオン。万博参加では大先輩のイギリスをはじめとするヨーロッパ諸国のパビリオン。スカンジナビアの国々の古い文化。そしてアメリカと人気を二分したソ連館の威容。つめかける大群集とパビリオンと華やかな花まつり、象まつり、民族舞踊、サーカスに至るまでが、肌の色、瞳の色、話し言葉の違う人達の親しい触れ合いを増し、万博ムードを盛上り。アフリカの夜明けを体当りで表現する爆発的踊りで会場の人気をさらったアフリカの若い国々。南アジアの大国インドは世界で34頭目の白い虎と礼宮の劇的交歓で話題になった。オセアニアのニュージーランドは、めん羊の丸刈り実演で妙技を示す。ラテンアメリカは、ブラジルが日本人移民50万の消息を伝える。アルゼンチンのタンゴと、情熱的な瞳のホステスは人気の的になった。アングロアメリカの国々では、アメリカ館に長蛇の列が続く。たとえば何時間待とうとも、宇宙コーナーの“月の石”を、この眼で見ようと群集の会話が生々しい。日本の企業館は、全天スクリーンのみどり館が、未来の映像革命に挑む。三菱未来館の空中都市、海底都市も、もはやおとぎ話ではない。サンヨー館の人間洗濯機、松下館のタイムカプセルは人類の未来の夢を描く。美術館、日本庭園、そして日本館には万博のテーマ“人類の進歩と調和”が日本と日本人自身に問いかける。国連館でウ・タント事務総長が平和の鐘を打つ、閉会の日。早春の雪景色から桜が咲き、新緑から盛夏へ、更に爽涼の秋まで、カメラは会場の全スケジュールを撮影し、百を超えるパビリオンと、人類の進歩と調和というテーマに元に展開、大阪千里丘陵に築いた、国境のない小さな世界はその終了と共に消えていく。


全編174分。短縮版もあるのだが、まだカラーフィルムが高額の時代にこれだけのものを残せたことは収穫だろう。華やかなはパビリオンだけでなく、太陽の塔の中や、故障して休止になったEXPOランドのジェット・コースター、ダイダラザウルスの様子など、貴重な映像の連続。そうした記録映画としての素晴らしさだけでなく、かなりダサい70年代のファッション、文化なども網羅され、まるでタイムカプセルに乗せられたような記録映画だ。


写真左がアストロラマのみどり館。