[男はつらいよ 寅次郎子守唄] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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山田洋次監督・脚本・原作。朝間義隆脚本。高羽哲夫撮影。山本直純音楽。74年、松竹配給。


スカパー衛星劇場の録画にて再観。シリーズ第14作。

前半、寅次郎が唐津で出会った女房に逃げられた男佐藤(月亭八方)に赤ん坊を押し付けられることから始まる騒動、後半は近所の病院の美人看護婦木谷京子(十朱幸代)と寅次郎との恋愛を描く。本作からおいちゃんこと竜造は下條正巳が演じ、以降最終作まで務めた。


秋も深まったある日、車寅次郎(渥美清)は九州、唐津のおくんち祭りで稼いだ後、呼子港の木賃宿で風采のあがらない赤ん坊連れの男佐藤(月亭ハ方)と偶然泊り合わせた。訳のありそうなこの男に同情した寅は、酒をおごって元気づけてやるが、翌朝、寅が目を覚ますと赤ん坊を残して、男は消えた。驚いた寅は、乳飲み児を抱えて右往左往。妹のさくら(倍賞千恵子)やおいちゃん、おばちゃん(三崎千恵子)のいる葛飾・柴又の“とらや”へ辿りついた。ところが、裏の工場の社長(太宰久雄)は、寅が子供をつくったと大騒ぎをするし、やがて長旅の疲れから赤ん坊が熱を出し、さくら夫婦は、博(前田吟)が工場で怪我をした時世話になった親切な看護婦京子(十朱幸代)のいる病院へ連れていった。翌日、寅が赤ん坊を見舞いに訪ねた時に、京子を見た途端一目惚れしてしまい、以来、赤ん坊の病気にかこつけては、病院通いするようになる。そんなある日、赤ん坊の父親と、彼と親しい踊子(春川ますみ)が赤ん坊を引き取りに来た。男は涙ながらに詫びる事情を説明するのだった。さてこの事件をキッカケに、京子は“とらや”に時々立ち寄ることになり、寅の京子に対する想いは募るばかり。ある日、京子は彼女が参加している地域青年のコーラス・グループの練習にさくらを誘い、寅と源公も同行した。ところが、寅と源公が悪戯したために、練習はメチャクチャ、リーダーの大川弥太郎(上條恒彦)はカンカンに怒った。詫びを入れるために寅は弥太郎の下宿を訪ねると、二人は酒を呑みながらすぐ意気投合。そして弥太郎が寅に、京子に対する恋心を打ち明け…,。


十朱幸代はこの映画に出演している時に三十二歳。実際、もっと若く見えるが、役者としてブレイクするのはもっと後、子役としてデビュー後、TVで人気の女優だった。上條恒彦は[出発のうた]や[木枯らし紋次郎]の主題歌を歌って売れた後、町の合唱団という設定がいかにも時代を感じさせた。寅次郎が恋愛指導をした結果が瓢箪から駒、マンネリ化を避けるために様々なパターンが登場した頃で、晩年はこのパターンは定番のようになり、その原点が本作。ただ、全体的な印象は笑える場面も少なく、あまりいい出来とも思えない。


山田洋次。[家族]