[男はつらいよ 寅次郎春の夢] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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山田洋次監督・脚本・原作。朝間義隆、栗山富夫、レナード・シュレイダー脚本。高羽哲夫撮影。山本直純音楽。79年、松竹配給。


スカパー衛星劇場の録画にて、再観。シリーズ第24作。79年12月公開の正月映画として公開。併映の[神様がくれた赤ん坊]の方が印象に残っていたので、忘れていたが、本作はハーブ・エデルマン演じるマイケル・ジョーダンというアメリカ版寅さんが登場することで話題になった作品。脚本はポール・シュレイダーの兄[太陽を盗んだ男]のレナード・シュレイダーと栗山富夫が入って四人体制で脚本が書かれ、シリーズのマンネリ化対策をした作品。


秋祭りもたけなわで、寅次郎(渥美清)は柴又に半年近くも帰っていない。その頃、帝釈天の境内を散歩していた御前様は、ベンチでふさいでいた外国人を見つけた。英語の苦手な御前様(笠智衆)は、さくら(倍賞千恵子)に頼んむが通訳にならず、満男(中村はやと)の通う英語塾の女子大生、高井めぐみ先生(林寛子)の母親・圭子香川京子)が話をする。彼女の話では、この外国人はマイケル・ジョーダン(ハーブ・エデルマン)と言い、ビタミン剤のセールスに日本へ来たが商売はうまくいかず、金も乏しく、マイケルは“とらや”に転がり込むことになった。おばちゃん(三崎千恵子)がトンカツ作ってご馳走しているところに寅次郎が帰ってきたから大変だ。寅とマイケルはとっくみあいの喧嘩となった。めぐみと母親の圭子がやってきて何とかその場は収まったが、二人は面白くない。しかし、寅は圭子の美しさにソワソワしだし、おまけに彼女の夫は交通事故で亡くなったと聞いたので、“とらや”一同はまた恋の病がはじまったと心配顔。しかし、マイケルと寅は酒を酌み交わし仲直りをするが、マイケルは関西に行商に向かい、その間、母親から手紙が来て…。


この映画、色々、工夫しているわりにテンポや構成が悪く、旅先で寅とマイケルが再会してというは設定を変更したために、出来事のすべてが唐突になってしまっている。日本とアメリカの恋愛に対する対応の違いをテーマにしているのたが、『インポッシブル』という言葉をキイワードにして、解決にならない幕を下ろしてしまうし、寅次郎の恋愛の終わりに関しても、前フリもなく終わってしまう。冒頭の夢オチや、寅の仲間の女房が逃げた事件こと、後半に繋げてはいるが、他の作品と比較すると流れが悪い。山田洋次としては、シリーズのマンネリ化を防ぐために色々考えた結果だとは思うが。マイケル・ジョーダンという役名は、あのNBAのカリスマと同じ名前しかも、彼が登場する遥か前なのだから、偶然とは言え、驚きである。ハーブ・エデルマンという役者は[ザ・ヤクザ]で脚本を担当したシュレイダーがそれに出演していた彼を抜擢したのだろう。まさにアメリカ人ほ寅さんを巧みに演じていた。


山田洋次。[学校]など。