[淑女は何を忘れたか] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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小津安二郎監督。伏見晃、ゼームス槇脚本。茂原英雄、厚田雄春撮影。伊藤宣二音楽。37年、松竹配給。


スカパー衛星劇場の録画にて鑑賞。小津安二郎トーキー第二作。[一人息子]の茂原式から土橋式トーキーに代えたからか、この映画、実に他の小津作品と比較しても実に良い音質なのに驚いた。


この映画はエルンスト・ルビッチを思わせる知的でソフィストケイトされた都会的喜劇であり、大阪から状況した姪の視点で、女性上位になってしまっている夫婦関係を風刺した上質なコメディに仕上がっている。キネマ旬報ベストテン第7位。


麹町の大学教授のドクトル小宮(斎藤達雄)のところに大阪から姪の節子(桑野道子)が泊まりにきた。節子は小宮の助手・岡田(佐野周二)と意気投合する。土曜の昼下がり、小宮の妻・時子(栗島すみ子)は無理やり小宮をゴルフに行かせて自分は歌舞伎見物に行く。小宮は行く振りをして銀座の行きつけのバーに向かい、そこで会った節子の頼みで芸者遊びに連れて行く。そうした一連の行動がバレて時子は激怒し小宮は逃げ出すが、節子に妻への弱腰を非難されて…。


時子の仲間は牛込の重役(坂本武)のマダム千代子(飯田蝶子)と田園調布の未亡人光子(吉川光子)であり、上流の知識階級のムードを全面に感じさせるが、案外子供の算術も出来ず、大学出の岡田でも苦戦するところを近所の子供(突貫小僧)があっさり解いてしまったりする。また、大阪の開け広げな気質なのか時子はその奔放さと快活な性格で、時子に屈することなく、ドクトルを叱咤していく。実に無駄のない設定であり、単純だが、笑える。上品なマダムたちの言葉の中に、桑野道子が演じる節子の歯切れのいい関西弁が対比的な効果をもたらし、物語を際立たせていた。



小津安二郎。[麦秋]など。