[天使の入江] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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ジャック・ドゥミ監督・脚本。ジャン・ラビエ撮影。ミシェル・ルグラン音楽。62年、フランス映画。


スカパー、シネフィルイマジカの録画にて鑑賞。ジャンヌ・モローから一緒に映画を撮ろうと誘われたジャック・ドゥミがギャンブルにのめり込む男女のデカダンスに溢れる逃避行を描いた長編第二作。劇場では2017年に初公開されている。


ブロンドを靡かせ、白いドレスに身を包み、屈託なく喋り続けるジャッキー。ジャンヌ・モローは圧倒的な存在感で演じている。その話の内容はほとんどが信憑性の置けないものだが、コケットで男心を誘う。厳格な父親に勘当され、友人の影響でギャブルにハマっていくジャンを演じるクロード・マンはまるで運命であるかのように観光地ニースの散歩道[天使の入江]で出会い、ギャンブルにのめり込みながら、恋心を抱いていく。


悪友キャロンに誘われたカジノで大儲けをした銀行員のジャン・フルニエ(クロード・マン)は厳格な父と口論になり、勘当され家を出てニースへとバカンスに出かける。カジノに入ると以前パリで見かけたジャクリーヌ・ドメストル(ジャンヌ・モロー)と意気投合、賭け金を数十倍にして彼女とホテルに戻る。


だが、大勝ち大負けを繰り返す。そんな中、いつしかジャンはジャッキーと離れられなくなっていく。一度はモンテカルロで豪遊できるほどの資金を作るが、やっぱり結果は同じだった。勝った時の恍惚感に酔い、没頭する。負けが込めば自分に言い訳する。優柔不断なジャンの一方、彼の心を見透かすジャッキーは巧みにカジノに誘う。彼女とって賭けは宗教、純粋な思いにジャンはいつしか魅了されていくが…。


この映画は、ジャック・ドゥミが幼少期に体験した叔母さんの話を元に描かれている。映像は白と黒、男女の衣装にまでそれを徹底し、そのコントラストが見事だ。ドゥミはこの映画で[情熱のメカニズム]を描きたかったと語っているように、ギャンブルにハマっていく人間の性を実に巧みに描き出している。ギャンブルを宗教みたいなものだと語るジャッキーの中毒に似た慢性化した嘘で塗り固められたような人生。その浮き彫りにされる孤独感をジャンヌ・モローの演技は秀逸。映画に高揚感を与え、展開部に必ず挿入されるルグランのテーマ曲も素晴らしい。



DVDは発売あり。



ジャック・ドゥミ。[ロシュフォールの恋人たち]など。