[幸福の黄色いハンカチ] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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山田洋次監督・脚本。朝間義隆脚本。ピート・ハミル原作。高羽秀夫撮影。佐藤勝音楽。77年、松竹。

追悼、高倉健。その2。

スカパー録画によるデジタルリマスター完全盤で再観。公開時に観て以来、時間がたち過ぎて違いがわからなかった。今回、健さんの映画の人気投票でもダントツの1位であり、日本映画の代表的なロードムービーの名作だ。元はニューヨーク・ポスト紙に掲載されたピート・ハミルの[Going home]をベースにしており、山田監督自身はジョージ・スチーブンス監督の[シェーン]からの影響も語っている。刑務所帰りの寡黙な主人公島勇作を健さんは好演。映画初出演だった海援隊の武田鉄矢は本作で人気が再燃、人気TVドラマへの出演に繋がる。朱美役の桃井かおりもハマり役であり、若者二人に様々な人間の生き様を伝えながら、その二人の若さに引っ張られる形で、妻との再会に向かう後押しをしてもらう。お馴染みの物語だ。

網走の海岸。花田欽也(武田鉄矢)は自分の車で、北海道の広い道をカッコイイ女の子を乗せて、ドライブする高校時代からの夢で、嫌な仕事で金をためて新車を買い東京からフェリーで釧路港へ、欽也は網走の駅前で、一人でふらりと旅に出た小川朱実(桃井かおり)と知り合う。朱実は欽也の車に乗せてもらうが、車から飛び出す。逃げ出した朱実をかばい、鋭い目付で欽也を睨んだ男、島勇作(高倉健)であった。欽也から見た勇作は、なんともいえない、いい男だった。しかし、欽也は啖呵を切った行きがかり上、勇作に挑むが、軽くあしらわれてしまう。そんなことがきっかけで、三人の旅は始まった。欽也が勇作に行く先を尋ねると、彼は暫らく考え、「夕張」と答えるだけだった。大雪山が見える狩勝峠で、強盗犯人が逃亡したことから一斉検問が行なわれていた。欽也は免許証を見せるだけで済んだが、警官は勇作を不審に思い質問すると、一昨日刑期を終え、網走刑務所を出所したと彼は答えた。朱実と欽也は驚きのあまり、語る言葉もなかった。三人はパトカーで連行されるが、勇作が六年前、傷害事件をおこした際立合った温厚な渡辺課長(渥美清)の取りはからいで、何もなく富良野署から釈放される。走る車の中で勇作は重い口を開いて、朱実と欽也に過去を語り出し…。

映画の代名詞になった赤いファミリアは、勇作の逡巡する想いに合わせて、行ったり来たりする。この辺りの山田演出は絶妙であり、観る側は勇作が妻三枝(倍賞千恵子)と交わした約束、黄色いハンカチが掲げられているのか、最後までハラハラドキドキさせられる。

無骨で不器用だが男気を感じさせる勇作は健さんの人柄が反映されたような役であり、各映画賞を総ナメにした。また剽軽でスケベだが熱さを感じさせる武田演じる鉄也。何処か影を感じさせながらも明るく振る舞う桃井演じる朱美それぞれが好演でキャスティングの良さが見事なアンサンブルを醸し出していた。警察に連行された勇作をかつて面倒を見た署長が釈放するのだが、健さんと渥美清の貴重な共演が実現、見所の一つになっている。

現在はこのリマスターが出ているので、この機会に見直してみるのもいいのでは。笑って、泣いて、最後は深い感動に包まれる、山田洋次監督の代理作であり、健さんやくざ映画のスターから演技派として認知させた傑作だ!

DVDはレンタルにあります。

山田洋次。[家族][故郷]等。