[パラダイスの夕暮れ] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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  アキ・カウリスマキ監督・脚本。ミカ・カウリスマキ製作。ティモ・サルミネン撮影。ヨウコ・ルンメ録音。86、フィルランド映画。

 ノレンさんがカウリスマキに感動しているとのこと。そこで今夜はカウリスマキの作品。

 これは長篇第三作で、敗者三部作の一作目にあたる。公開時、ジム・ジャームッシュが絶讚した作品。

 孤独なゴミ清掃業の男・ニカンデル(マッティ・ペロンパー)と、職業を転々とする女(カティ・オウティネン)絶対に自分の心に素直になれず、本音を口に出来ない男女が、ボーイ・ミーツ・ガール。離れ難い癖に不器用で、孤独で冷たい街を彷徨う。
 男は全体に青、女は赤、わかり易い色彩感覚でカウリスマキは表現。例によって、煙草と酒だけが友達。時に一緒にいたり、別れたり、その歯がゆさが堪らなく愛しい。サントラは抜群の選曲。歌詞が全て二人の心理を謎っている。台詞を極限にまで排除したカウリスマキ・スタイルは映画の原点である。

 物語。ゴミ清掃業のニカンデルは悶々と日々を過ごしているが、老上司より独立の話を受け、ツキが回ってきたと思った瞬間に、上司は病気で亡くなる。
 自暴自棄で飲んだくれ、警察にやっかいになる間に、メラルティン(サカリ・クォスマネン)と知り合い。上司の死で空いた仕事を紹介してやる。
 ニカンデルは、スーパーで自分の怪我を手当てしてくれたイロナを気に入り声をかける。 メラルティンに金と着替えを借り彼女を部屋に誘うが踏み切れず。デートに行き付けのビンゴゲームに誘い。嫌われる。
 しかし、イロナはスーパーをクビになり、腹いせに売り上げの入った金庫を盗み。行き場を失った彼女はニカンデルの部屋へ。仕事もメラルティンに委せ、戻ると彼女から事情を聞き、大金のため、彼が返しに行く。イロナは警察に捕まるが、金が戻り釈放。
 心が通ったかに見えるが、レストランを満席で断られる等冴えない。ダブル・デートに強引に誘おうとして、スッポかしたイロナに不満の色を出したニカンデルの元を彼女は去る。
イロナは新しい仕事先の主任に誘われるがその気になれない。
 ニカンデルも孤独な夜、酔い潰れ、若者二人に襲われ、朝メラルディンに発見され病院へ。 彼は仕事が増え収入も増えたらしい。ニカンデルの中で気持ちが動き、彼はイロナの元へ…。

 78分という短時間。その中に感情を廃し、淡々と撮影するカウリスマキの演出。だが、それだからこそ、逆に男女の心理が痛い程伝わってくる。フィンランドの何となくくすんだ風景が、晴れない二人を表現しているようで、寡黙なショットの連続の中に、人間の温もりを感じ取らせる絶妙の演出術。
 カウリスマキ映画、素晴らしいです。是非、ご覧になったことがない方にはお薦めします!