[北ホテル] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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  マルセル・カルネ監督。ウジェーヌ・ダビ原作。アンリ・ジャンソン、ジャン・オーランジュ脚本。アルマン・ティラール撮影。アレクサンドル・トロネール美術。モーリス・ジョベール音楽。38、フランス映画。

 これまで2作品を紹介したIVCから出た廉価版より、今日はカルネの名作。これまでソフトが無かったので、この発売は嬉しく、画質の美しさも抜群。最初にお薦めして置きます。

 パリのサンマルタン運河沿いに建つ、北ホテルを舞台に、心中未遂を起こす男女ルネ(アナベラ)とピエール(ジャン・ピエール・オーモン)と写真家を目指す謎の男エドモン(ルイ・ジューベ)とその愛人で娼婦のレイモンド(アルレッティ)。二組のカップルを中心に、そこに集う人間模様を“グランド・ホテル”形式で描き出すカルネの名作であり、この北ホテルは観光名所になったらしい。実景を模して作られたトロネールによる北ホテルと周囲のセットの見事さには目を奪われる。
 そして、当時のフランス映画界を代表する役者達による集団劇の中に庶民の生きざまを描き取るカルネの演出に引き込まれた。

 物語。パリの北停車場近く、サンマルタン運河沿いの石畳の町に北ホテルがあり、客は小市民達。
ある晩、その食堂で公園な番人マルタ・ウ゛ェルヌの娘が初聖体の宴が行われる中、一組の男女が宿を求める。女中ジャンヌ(シモーヌ)が二階に案内すると、カップルはピストルによる心中を計る。
 女性・ルネを撃ったピエールだが、怖くなり自殺出来ず。隣にいた謎の男・エドモンは、ピェールを逃がしてやる。
 ルネは奇跡的に命を取り留め、ピェールは列車に飛び込もうとしたが、それも出来ずに明け方自主する。
 警察の取り調べにて、ルネは21歳まで孤児院におり、パン屋で働き、失業中の絵描きピェールしか頼りもなかったのだ。
 ピェールを逃がしたエドモンは、写真家を趣味にするヒモ男。情婦・レイモンドと暮らしているが、仲は冷え始めている。
 退院したルネは北ホテルに挨拶に訪れるが、オーナーの計らいでそのまま働くことになり、ホテルの人気者になる。
 エドモンは仲間を裏切り、そのナガレトが出所するため、レイモンドと南の海辺を目指そうとするが、ルネに興味を持ち中止する。
 ピエールとの恋心を忘れられないルネは、面会をかかさなかったが、エドモンが本名ロベールを明かし、船でポート・サイドへ誘ったために、一度は全てを忘れようとルネは同行する。
 しかし、思い直したルネは戻る。嫉妬したレイモンドはエドモンを追うナガレトに、彼はルネを追って戻ると伝える。
 ルネの証言からピエールの恩赦が認められ、7月14日の革命記念日の宴の後、旅立つ事になる。
 一方、思いを伝えたいエドモンも戻ってくるが、ナガレトが待ち構えており…、

 ルネの揺れる心理が二人の男の運命を変えてゆく。二組の男女が織りなす愛憎劇がアイロニカルに展開していき、カルネの人間模様の描写の巧みさはまさに職人的な上手さ。水門の管理人トレモーと妻・ジネット。彼女を誘惑する親友のケネル。いくつかの枝葉のドラマをも絶妙に絡ませ、タイトル通り、北ホテルに集う庶民達の哀歌として仕上げているのだ。

 これはカルネの名作の1本であり、ぜひこの機会にお薦めしたい作品です!