[フルメタル・ジャケット] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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   スタンリー・キューブリック監督・脚本。グスタフ・ハスフォード原作・脚本。マイケル・ハー脚本。ダグラス・ミルサム撮影。 アビゲイル・ミード音楽。87 、アメリカ映画。
 今回、500円で購入したDVDの1本。劇場公開依頼、実に久しぶりに鑑賞。

 色褪せない!
  ベトナム戦争から、数年の間を置いて製作されただけに、一番客観的に描けた作品であり、それまでのベトナム物ですら、絵空事に感じさせる位の衝撃を受けたことを思い出す。
  前半は海兵隊新兵訓練所における訓練風景が描かれる。デブのレナード(ビンセント・ドノフリオ)がジョーカー(マシュー・モディーン)らのアシストを受けながらも、 ハートマン教官(リー・アーメイ)の厳しい訓練についていけず、足手まといになり、全員のリンチを受けて精神に異常をきたしていく。
  射撃だけは才能があり、それが悲劇を生む。凄まじいスラング。人間を戦争という殺戮の現場に向かうために殺人兵器として鍛え上げられる。[愛と青春の旅立ち]がイメージが一瞬にして絵空事だったことをキューブリックは突き付けてくる。
  そして、後半は[スターズ・ストライブス]という軍の広報に配属されたジョーカーが現地南ベトナムで歓迎されてない現状をリアルに描写しながら、訓練所の同期カーボーイ(アーリス・ハワード)との再会、戦況が悪化するフバイ市での極限の戦闘を体感していく。
 指揮官を失い、カーボーイの指示を無視するアニマル・マザー(アダム・ボールドウィン)等は敵の罠にかかり、狙い撃ちされるスローのショットは人間達の愚かさをまるで醸し出すように意図的に使用され、そして敵ベトコンの正体はあまりにも衝撃的な現実が提示され、思わず目を背けたくなる結末を迎える。

レナード役のドノフリオの変貌ぶりはまさに怪演と言ってよく、人間が殺人マシーンに仕立てられる狂気をよく演じていた。ハートマン教官を演じたリー・アーメイは訓練指導で来たのだが、あまりにリアルだったためにそのままキャスティングされたという。
 イギリスで撮影されたために、ジャングルでの戦闘ではなく市街戦中心の戦闘場面なのもイギリス出身のキューブリックならでは。
 ローリング・ストーンズの[黒くぬれ]が髪を新兵達がカットされる場面から挿入され、このダークな作品にマッチしていた。
 改めて観直してみると、さすがキューブリックと感じさせるショッキングな描写の数々。必見の傑作です!

 DVDはレンタルにあります。
 スタンリー・キューブリック。[2001年宇宙の旅][時計仕掛けのオレンジ]他。