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前回の話

 

山小屋に監視カメラや盗聴器が仕掛けられていた。

 

「合宿を企画されたのは莉多子さんですよね。この山小屋に監視カメラが仕掛けられていることはご存知でしたか?」

 

川上の問いかけに、莉多子が青ざめながら答えた。

 

「全く知らなかったわ!誰が一体そんなこと・・・」

 

「リタちゃん、この山小屋の存在をどうやって知ったんだい?」

 

いいともが莉多子に尋ねた。

 

「えっと、確かメールの案内が届いたの。私はブログをやっているせいか、ちょいちょい営業メールが届くのよ。その中にヒマダナ山脈の山小屋が安く借りられる案内があって、婚活合宿に使えそうだなって思ったの」

 

「その貸主とは直接会った?」

 

「いえ、メールのみのやり取りだったわ。山小屋の鍵の隠し場所を教えてもらって、料金は後払いでいいって言われていて。かなり適当だなーって思ってたのよね・・・」

 

「山小屋の貸主が怪しいわね。莉多子さん、やりとりしたメールの記録は残っている?早速、調べてみるわ」と、翔子。

 

「ええ。メールでやり取りした履歴を送るわね」

 

「翔子くん、事件はすでに解決したと報告を受けていたが、全然解決していないじゃないか。そもそも、翔子くんは結婚詐欺師を捕まえるために潜入捜査していたはず。二兎追う者は一兎をも得ずとは、まさにこのことだな」

 

川上に文句を言われ、うなだれる翔子。

 

「そんなに翔子先輩を責めないでください!翔子先輩は結婚詐欺師の検挙率、全国No.1なんですよ。署内で警視総監賞に最も近い人物だと言われているスゴイ方です。しかも休日は必ず婚活パーティーに出かけて、怪しい人物がいないか自主的にパトロールしているんです。僕、警官として翔子先輩を心から尊敬しています!」

 

下條の熱弁にたじろぐ川上。

翔子の頬がポッと赤くなった。

 

「翔子さん、連日婚活パーティー出かけていたのは本当にパトロールのため?翔子さん自身、結婚願望がかなりお強いでしょ。パーティー参加は婚活目的で、パトロールはついでだったんじゃない?」

 

莉多子に言われて、翔子はコクリとうなずく。

 

「ええ。私は真剣に婚活しています。でも、婚活目的で婚活パーティーに出かけても、職業柄、怪しい人を見つけるとマークしてしまうんです。連日婚活パーティーに出かけて、次々と結婚詐欺師を逮捕できたけど、運命の相手は一向に現れないわ・・・」

 

「でも、翔子さんは毎回婚活パーティーで人気No.1で、みんなから『婚活パーティーの女王』と呼ばれているわ。翔子さん目当てで婚活パーティーに参加している男性も多いのだから、もっと自信を持って。カモさんもそう思うでしょ?」

 

「ええ。私も婚活パーティーに出かけると毎回、翔子さんの名前を書いていました。翔子さんが本気を出せば、すぐにでも結婚できると思います」

 

 

「えっ、翔子さん結婚願望あったんですか?僕、てっきり結婚には興味ないと思っていました。意外だなぁ」

 

下條が驚きの声を上げた。

 

「翔子さん、すごく人気だから、そのうち誰かに取られちゃうわよ」

 

莉多子は下條に聞こえるように。ポツリとつぶやいた。

 

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