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前回の話

 

 

ちか子が消えた!

 

「事件は解決したのに。ちか子さんは一体どこへ行ってしまったのでしょう・・・」

 

M田は今にも泣き出しそうだ。

 

「ムムッ!ちか子という女、実に怪しいですなぁ・・・」

 

「えっ、あなたは誰です?」

 

怪訝そうな顔をしたM田に、サッと名刺を渡す。

 

「申し遅れましたが、私こういう者です」

 

「ジャーナリスト、いいとも。あっ、もしかして名探偵いいともさんですか?深夜ラジオ『迷探偵!いいとも!』のパーソナリティーをされていますよね。私、たまに聴いています」

 

「私のラジオを聴いてくれているなんて光栄です」

 

「まさか、ご本人にお会いできるとは。しかし、なぜいいともさんがこんなところへ?あっ、もしかして、いいともさんには事件を感知する特殊な能力がおありなのですか?」

 

「違うのよカモさん。私が呼んだのよ。彼は私の夫なの」

 

莉多子が説明した。

 

「えっ!いいともさんは莉多子さんの旦那さんだったのですか!」

 

驚きを隠せないM田。

 

莉多子は残念そうに、ため息をついた。

 

「翔子さんごめんなさい。逃げられちゃったわね・・・」

 

「いいんです。殺人事件が起こって、計画は中止になったのですから」

 

「えっ、他にも何か計画があったのですか?」

 

M田の問いかけに、翔子と莉多子は目配せし合った。

翔子がうなずくと、莉多子は重い口を開いた。

 

「カモさん、私と翔子さんはこの合宿で結婚詐欺師を捕まえる計画を立てていたの」

 

「ええ、知ってます。クス男さんのことですよね」

 

「クス男とあともう一人、警察がマークしていた結婚詐欺師が合宿に参加していたの」

 

「エッ・・・。まさか・・・」

 

 

翔子が淡々と言い放った。

 

「ちか子には結婚詐欺の容疑がかけられていたの」

 

莉多子が申し訳なさそうな顔をする。

 

「私はカモさんのブログを読んで、カモさんがちか子さんに騙されていることに気づいたの。それで、今回の合宿にちか子さんをおびき寄せることができないかと考えた。カモさんのこと利用してしまってごめんなさい・・・」

 

「ウソだ!私は信じません!ちか子さんが結婚詐欺師なはずない!」

 

「被害者は最初はみんなそう思っているんです。でも、中にはちか子さんに全財産を奪われた人もいる。カモさんはお金を貢いだりしていませんか?」 

 

祥子がM田に尋ねた。

 

「私はそんなことしませんよ」

 

「何か高額なプレゼントを贈ったことは?」

 

「服やアクセサリーをプレゼントしたことはありますが、私が自主的に買い与えたものです」

 

「総額いくらくらい、プレゼントしました?」

 

「そんなたいした額ではないです。合計100万円くらいです」

 

莉多子はため息をついた。

 

「カモさんがプレゼントしたもの、ちか子さんが身につけていたのを見たことある?」

 

「いえ、まだないですけど・・・」

 

「でしょうね。きっと、すぐに売っ払って、もう手元には残ってないわ」

 

「えっ、そんなはずは・・・・」

 

オロオロしはじめるM田。

 

翔子は下條に尋ねた。

 

「ここに来る時、誰かとすれ違ったりしなかった?」

 

「そういえば、山菜採り女性とすれ違いました。こんな雪深いのに山菜採りなんておかしいなと思ったんですよね」

 

「その女性は、この人でしたか?」

 

M田がスマホ画面を見せた。

マッチングアプリのプロフィールに登録されていたちか子の写真だ。

 

「うーん…こんなキレイな女性ではなかったです。もっとオバさんでした。川上さん、さっきの女性の顔覚えてますか?」

 

川上もスマホを覗き込み、首をかしげる。

 

「ああ。この写真とは全くの別人だな。さっきの女性は40~50代くらいに見えたぞ」

 

「それなら、ちか子さんではありませんね・・・」

 

莉多子はM田のスマホ画面を凝視した。

 

「こんな加工しまくりの写真を見せてもダメよ。お二人とも、その女性は身長160㎝くらい、髪が肩くらいで、目はやや垂れ目ではなかったかしら?」

 

「ええ。そのような特徴でした」

 

下條が頷く。

 

「そしたら、お二人がすれ違った女性はちか子さんで間違いないわ!」

 

莉多子が断言する。

 

「えっ、でもかなりオバさんでしたよ。いくら加工された写真とはいえ、このプロフ写真とは全くの別人です・・・」

 

「ちか子さんはメイク技術がスゴイの。きっと、ちか子さんはすっぴんで山を下りたのね!」

 

「えっ、化粧で人ってここまで変わるんですか?女って怖えーー」

 

下條が驚きの声を上げた。

 

 

その時、事件現場を調べていた鑑識員がやってきて、川上にそっと耳打ちした。

 

「なんだとぉ~~!?」

 

川上が大声を出し、一同が注目した。

 

「失敬。現場を調べた結果、この山小屋はいたるところに監視カメラや盗聴器がしかけられていることが判明しました!」

 

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