界面活性剤は髪や皮膚を「溶かす」のか? 後編 | かずのすけの化粧品評論と美容化学についてのぼやき

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界面活性剤は皮膚や髪を「溶かす」のか? 前編


界面活性剤には親油性の物質を「ミセル」という構造を作ることで

水中に溶解(水和・分散)させる性質がある



というところまでが前半のおはなしです。


つまり本来水に溶けない物質を水に溶けるようにすることができるのです。


界面活性剤が広く「洗剤」として用いられるのはこれが理由です。


基本的に水に溶けない油汚れやタンパク質汚れを

界面活性剤で水に可溶化させることで洗浄しているのですね。



しかしこの理論で言うと、

例えば僕たちのカラダを構成する「ケラチン」というタンパク質は

水に溶けないタンパク質であるため、

界面活性剤を作用させることで

水に溶ける状態になってしまうのではないでしょうか。



つまり

界面活性剤=溶ける

というイコール式は、

理論的には十分筋が通っている話なのです。


逆を言えば、理論的に十分筋が通っているからこそ、

多くの人々が信じてやまないのです。


界面活性剤は僕たちの髪や皮膚を溶かしてしまうと。



しかしここで真実を語るのであれば。

普通に僕たちが生活している環境では、

どんな界面活性剤でも僕たちの髪や皮膚を溶かすことは出来ません。



それは僕がよく一部の危険性をおはなししている「セッケン」や、

タンパク質を変性させる性質があるとされる合成洗剤の

「ラウリル硫酸Na」や「ラウレス硫酸Na」についても同様です。


これらのような最も僕たちのカラダのタンパク質に対して

強力に作用する性質を持っている界面活性剤でも、


僕たちの髪や皮膚を腐食することは出来ません。



これにはいくつかの理由があります。


というのも、界面活性剤が不溶性物質を可溶化するのには。

いくつかの条件をクリアする必要があるからであり、


僕たちの髪や皮膚に関して言えば通常の環境下では、

それらの条件をクリアすることはまず不可能だからです。




◎界面活性剤が「溶かす」為の条件① 「分子が小さい」



界面活性剤が不溶性物質を水に溶かすためには、

必ず「ミセル構造」を作る必要があるのです。





油などのような液体状の物質に関して言えば、

液体ひとつふたつの分子が非常に小さい為、

上記のようなミセル構造を簡単に作ることができます。


小さいものを取り囲んで円を描くのと、

大きいものを取り囲んで円を描くのでは、

後者の方が円周が大きくなります。


つまり分子が大きくなれば大きくなるほど、

その分子を取り囲んでミセルを形成するためには

それだけ多くの界面活性剤が必要です。



このことから界面活性剤によって可溶化されやすい油状分子というのは、

その分子の大きさが小さい液体のものです。

分子が凝集して巨大な固体状に固まっているものに対しては、

界面活性剤は表面に付着するだけでミセルを形成することができず、

その表面に「濡れ状態」を作ることができるだけなのです。


人間の皮膚や髪を構成するタンパク質である「ケラチン」は、

繊維状に長くつながった巨大分子です。



ケラチンの構造


これらの巨大分子に対しては、

界面活性剤は表面に吸着して表面の親水性を少し上げるのみで、


ミセルを形成して可溶化するなど、絶対に出来ないのです。




◎界面活性剤が「溶かす」条件② 「結合を切れる」


砂糖や食塩などの固体状物質が水に溶けることを考えると、

疎水性の固体物質でも界面活性剤などの力を借りれば

土壁に穴を掘る原理でその分子を取り出し可溶化させることができる…

と考えられてもおかしくありません。


界面活性剤にはそもそも「タンパク質変性作用」があり、

つまりタンパク質を破壊する性質があるのです。


いかに巨大に会合したタンパク質でもその分子を破壊されれば

小さい分子となって可溶化することができるのではないでしょうか。


しかしこれも実際には難しいです。


固体状の物質が液体の中に溶け込むためには、

固体として会合する為の「結合」を切断される必要があります。


塩や砂糖などは「イオン結合」や「水素結合」と言われる結合で

お互いに会合している化合物です。


このイオン結合や水素結合はさほど強力な結合ではないので、

水中で簡単に解くことが可能です。

またこれらの結合はエネルギー(熱)を加えることで

よりカンタンに切断することができます。

そのおかげで多くの固体状物質は加熱することでより溶け易くなるわけですね。



↑固体状物質の温度による溶解度の変移
高い温度ほど溶ける量が増える。



イオン性の界面活性剤はイオンに分解する親水基

油性物質と会合する親油基を持つので、


イオン性(静電気)の結合:「イオン結合」

水の力の結合:「水素結合」

油の結合:「疎水性相互作用」


と呼ばれる三つの結合を切断する力があります。


液体の油状物質は疎水性相互作用という力で引き合っているので、

界面活性剤はその結合を切断して小さい分子に分けてミセル構造を作ります。


またセッケンやラウリル硫酸などのようなイオン性の界面活性剤は

イオン結合を切断する力も持ち、

この性質が強力なものほどタンパク質を破壊する力が強いです。



まぁ詳しい話は置いておいて、

界面活性剤に切断できる結合は多くても上の三つだけなのです。


しかし僕たちの髪や皮膚を構成する「ケラチン」は、

この三つの力だけでは完全に切断することが出来ません。



タンパク質はアミノ酸が鎖状につながった巨大分子です。



特にケラチンはその結合が繊維状に際限なく結合していくので、

巨大分子の中でも特に巨大な分子です。


そしてその結合の様式は、

「共有結合」と呼ばれる最も強力な結合方式であり、

さらにケラチンはその構造上に「ジスルフィド結合」と呼ばれる

とても強力な結合を内包しています。

そしてその構造を補強する形でイオン結合や水素結合、

疎水性相互作用などが働いています。


ケラチンの分子を細かく削り出して可溶化するには

上記のジスルフィド結合と共有結合も切断する必要があり、

イオン結合・水素結合・疎水性相互作用を切る力しか持たない

界面活性剤だけの力ではこれらの結合を切断することは出来ません。




共有結合を切断するには膨大な熱エネルギーが必要であり、

さらにジスルフィド結合を切断するには強力な還元剤を作用させる必要があります。


通常僕たちが生活するうえでこのような環境下で

界面活性剤を使用することはまずありえないことですので、


界面活性剤でケラチンを溶解するというのは

鉄筋コンクリート壁にステンレスのシャベルで挑むようなものであり、

若干の傷はついてもその分子を削り出すことは絶対に出来ません。






◎界面活性剤に髪や皮膚は溶かせない!


つまり界面活性剤では髪や皮膚を溶解させることはできません


そもそも外部からの刺激からカラダを守る為のタンパク質が、

そんなカンタンに溶けてもらったら困るわけです。


界面活性剤には液状の油状物質やごく微小な疎水性物質であれば

水に可溶化させる働きがありますが、

規格外の巨大な分子でしかも強力に結合し合っているものを溶解させる力は無いのです。


セッケンなどで手を洗ったらヌルヌルするのは

界面活性剤によって水の張力が弱められているからです。

張力が弱い液体で最もポピュラーなものは「油」ですが、

つまり界面活性剤が水に作用すると油のようにヌルヌルする、

というだけの話なのですね。


界面活性剤で皮膚は溶けません。

それはセッケンでもラウリル硫酸ナトリウムのような変性作用の大きなものについても同様です。


実際にセッケンやラウリル硫酸を使って皮膚や髪が溶けたと実感したことがある人はそういないはずです。



しかし、

どのような界面活性剤でも皮膚や髪に悪影響はないのか?

と聞かれればそれは「NO」です。


界面活性剤にはケラチンを「溶解」させる性質はありませんが、

溶解とは異なった別の影響があるのです。

つまり、

多くの人々は界面活性剤による悪影響を全く取り違えているのです。


実はその別の影響に関しては、

多くの人が既に実感していて、髪の悩みや肌の悩みとして表面化しています。


それは一体どのような性質なのか…、



それについてはまた別の機会におはなししたいと思います。


非常に難しい話でしたが、

ここまでお付き合い頂きありがとうございましたm(_ _)m





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