ラウニオン県へ泊りがけの出張 | Que sais-je? ク・セ・ジュ――われ何を知る

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エルサルバドルに単身赴任中(7/15~8/5一時帰国)。
気候が良く日本より健康的な生活を送っています。
ドライブ旅行をぼちぼちしていますが、
この国で最も注意すべきは交通事故。
今や治安以上に大きなリスクです。

なおヘッダーは2020年に新潟県長岡市にて撮影。

10月16日(月)と17日(火)の1泊2日で、昨年1月にこの国に長期赴任して以来、初めての泊りがけの出張がありました(それ以前にも、一昨年までは長期出張で何度も泊りがけの業務を行っていますが)。

行き先は首都サンサルバドルから最も遠いラウニオン県 (Departamento de La Unión)。しかも県内の奥の方なので、現地で朝8時開始の業務に間に合うためには、私の住んでいるサンサルバドルを朝4時には出なければいけません。しかし朝4時と言えば、外はまだ真っ暗。この国では、治安状況はかなり改善されてきたものの、交通事情はかなり悪いので、未明からの長距離移動は危険なのです。

何が危険かって?

まず、道路の状態が悪い箇所があったりするので――例えば、舗装が剥がれていて窪みが出来ているとか、マンホールの蓋が開いているとか、山だと一部崩落しているとか――、視界が悪いとそういったものにハマってしまいかねません。更に、整備不良車が多いこの国では、例えば無灯火走行をしている車など、ざらにあります。更に更に、野犬が多く道に出没するので轢(ひ)いてしまいかねません。実際に道路にはしばしば犬の死体が転がっています。いえ、轢くだけならまだしも、突然飛び出されて、慌ててハンドルやブレーキの操作を誤ったら大事故につながってしまいます。

ね、夜間の走行は危険でしょ?

ということで、朝に長距離移動をする際には、夜明け頃に出発し、それができない場合には、途中の町に前泊することになっているのです。

今回の用務先は同県のヌエバ・エスパルタ (Nueva Esparta)ポロロス (Polorós)という町。そこで、私と日本人同僚のN君は、最寄りの町で目ぼしい宿のある、サンタ・ロサ・デ・リマ (Santa Rosa de Lima)という町に宿を構えることにしました(以上、町の名前にグーグルマップのリンクをはりましたので、クリックしてズームアウトしていただければ、位置関係がお分かりになるかと思います)。

 

 

その目ぼしい宿は、オテル・メディテラネオ・イン (Hotel Mediterraneo Inn)。この近辺では最高級ホテルと見なされているかもしれませんが、客観的に見たら、平凡なビジネスホテルです。免税である私は1泊朝食付きで35.55ドル、約5,000円です。グーグルマップで見たら約9,000円でしたので、課税でかつ代理店経由の手配ならいかに高くなるかということです。

 

 

しかし日本の一般的なビジネスホテルと違って中南米らしいのは、中庭に小さいけれどもプールのあること。

 

 

客室はというと、こちらは殺風景とも言えるくらいシンプルで、いかにもビジネスホテル風です。

 

 

書き物机もあります。

シャワーは水しか出ませんでしたが、気候も暑いので、さほど冷たくはありませんでした。また大通りから30mほど引っ込んでいますので、往来する車の騒音もさほど煩わしくはありません。

ただ、夜中の3時にホテル内で大声の会話がして、その後でクラクションが鳴ったのだけは勘弁してほしい。

会議室のような部屋が空いていたので、同行しているN君と一緒に、東京とのオンライン会議に使わせていただきました。

それが終わったのが晩の8時過ぎ。それから夕食を食べようと思ってホテルの近辺を探すも、小さい町なので、この時間に開いているようなレストランがありません。仕方なく、辛うじてまだ開いていたスーパーでビールを買い、ピザハット(エルサルバドルにも店舗がたくさんあります)でピザを買ってホテルの会議室に持ち込み、そこで食べたのでした。そのピザハットも9時の閉店間際でした。

 

 

翌朝の朝食は、上のプールサイドでいただきました。4つのオプションがあり、私はその中の「オムレツ (omelette)」を頼みました。客はさほど多くないようなのに(少なくとも私たちが朝食を待っている間に他の客は食べていませんでした)、35分もかかって出て来ました。

例によって典型的なメニューです。オムレツ以外では、白チーズ、豆のペースト、プランテイン(バナナ)揚げ、それにコーヒーです。オムレツは野菜・チーズ入り。

 

 

ここで、業務中に撮った写真を1枚だけお見せしますね(ちゃんと仕事をしているという証拠に)。今回はそれぞれの町で1校ずつ訪問しましたが、これは最初のヌエバ・エスパルタの学校。この国の学校の校舎は、このように、国旗の色でもある青と白に塗り分けられていることがほとんどです。エルサルバドルのアイデンティティを示す色であるとも言えます。

 

 

帰路にも再び私たちの泊ったサンタ・ロサ・デ・リマを通過しました。何となく雑然とした印象を与える大通りです。

これは私たちがホテルに到着する直前に運転手が言ったことですが、「綺麗な車のたくさん並んでいる自動車屋がやけに多いだろ? きっとこの町では怪しい金が動いているに違いない。マネーロンダリングをしているようだ。だから金持ちが多いはずだ」と。

一見、何の変哲もない地方の町に思われましたが、彼にそう言われてみると、なるほど綺麗な車を並べているカーショップを幾つも見ます。

 

 

綺麗な車とは裏腹に、この錆(さ)びかけた古い看板。しかも文字を上書きしたのに前に書いた文字も見えている、この汚らしい看板は、運転手の彼がおススメの、この町で随一のレストランなのです。マリスカーダ・ドーニャ・マルティーナ (Mariscada Doña Martina)。意味は「マルティーナさんのマリスカーダ」。「マリスカーダ」とはシーフードスープのことです。

海岸線までは車で1時間近くかかり、かなり離れているのですが、なぜかシーフードが有名で、県外からもこの店が目当てでやって来る客が多いとか。店名の下には「あなたのお口を喜ばせるのが私たちの満足」と。

 

 

上の古びた看板がなければ、この建物がレストランであることすら分かりません。「知る人ぞ知る」感に満ちていますね。期待が持てます。

 

 

私が注文したのは、エビのガーリック揚げ (camarones al ajo)、18ドル。地方の店だからと高を括(くく)っていた私は、値段が意外に高かったので、メニューを見る前に運転手に「昼食は私が奢(おご)りますから」と言ったことを少々後悔したのでした。彼は私よりも安いマリスカーダを頼みましたが、それでも15ドルしました。

味は、名にし負うとはまさにこのこと。肉厚のエビにニンニクのほど良い風味が行き渡り、このお値段も納得です。

 

 

トルティーヤも付いてきました。

 

 

柔らかく、中にはチーズが入っていましたので、この国の国民的料理であるププーサに近い食感と味です。    

せっかく泊りがけの出張に出たのに、夕食はこの国のどこででも食べられるピザでしたので、がっかりしていた昨夜でした。それだけに、帰り道には是非ともこの店に寄って賞味してみたいと思っていました。

もちろん味も満足のいくものでしたが、それ以前に、名の知られている店の料理を食べることができたこと自体に満足した私でした。