マサイマラ(1)キーコロック・ロッジ | Que sais-je? ク・セ・ジュ――われ何を知る

Que sais-je? ク・セ・ジュ――われ何を知る

エルサルバドルに単身赴任中(7/15~8/5一時帰国)。
気候が良く日本より健康的な生活を送っています。
ドライブ旅行をぼちぼちしていますが、
この国で最も注意すべきは交通事故。
今や治安以上に大きなリスクです。

なおヘッダーは2020年に新潟県長岡市にて撮影。

ついに行きました。3月3日~6日の4日間。最初の2日はお休みをいただいて、行ってきましたよ、マサイマラ国立保護区 (Masai Mara National Reserve)。恐らくケニアでサファリと言ったら、こことアンボセリ国立公園が双璧でしょう。マサイマラに行かずしてケニアに来たと言うな、とさえ言えるほどの、超必須目的地です。

ただ、3月に入って帰国が近づいてきたので、仕事も追い込み。忙しい中で時間を捻出して旅行に出たのでした。

なので、仕事を抱えて行くことになったわけです。行きの車の中では業務関係のビデオをラップトップで視聴。宿では初日と2日目の昼休み(つまり午前と午後のサファリの間)に文書作成、2日目の昼に東京とオンライン会議。しかし、そうしながらも、何とか旅行中にするべき業務をこなし切りました。今どきは旅行しながらこんなこともできるので便利になったと言うか。こんなことまでできてしまうので忙しい世の中になってしまったと言うか。

さてさて、今回手配されたドライバーであるアントニー (Anthony) は英語がなかなか達者で、会話に全く支障がありません。7時出発の予定で、定刻の15分前には私の自宅に到着。しっかりしています。

上に書いたように、最初はあまり会話をせずに、彼に断ってビデオを見続けます。約2時間、ナクル方面への道とマサイマラ方面への道が分岐するマイマヒウ (Mai Mahiu) を出て少ししたあたりで仕事は終了。これ以上ラップトップのスクリーンを見ていると車酔いしそうです。

やっと落ち着いて旅気分になることができます。

 

 

マサイマラのあるナロク郡 (Narok County) の、日本でいうところの県庁所在地であるナロク (Narok) の町を通過しているところ。ナイロビを出てからの道中で一番賑わっている場所です。

 

 

しかしそこを出るとサバンナが広がり、ところどころでマサイ人たちが放牧しています。ある村では何かの集会が行われていて、例のシュカという赤い布をまとった人々が何百人も広場に集まっており、それは鮮やかな光景でした。しかしカメラに収めるのはためらわれるところ。

公園のゲートでアントニーが入園手続きをしている間、私は車内で待っていましたが、そこにいた何人もの恐らくマサイ人の女性たちが、アクセサリーや木彫りの工芸品を手にして、車に詰め寄って来ます。そして開けていた窓からそれらを持った手を突っ込んっできて、盛んに売り込みます。これが結構強烈でしぶといので煩わしいです。私は全く関心を示さないのに、彼が車に戻って発車するまで居続けました。

 

 

ナイロビを出て5時間。宿泊先のキーコロック・ロッジ (Keekorok Lodge) に到着です。キーコロックとは、マサイ語で「motley abundance」という意味だとのこと。直訳すると「雑多な豊富さ」。「多様性」というほどの意味でしょうか。

公園内にあるので、ここに着くまでに既にキリンとゾウを見ています。その写真は後の記事にて。

まさにシュカをまとった従業員が出迎えます(許可を取って撮影・投稿しています)。

「あなたはマサイ人か? それともマサイ人ではないがこれを着ているのか?」と私が聞くと、「マサイ人だ。これはマサイ人の男しか身に着けてはならない」と。しかし、後日、私の職場で送別会が開かれた時にはシュカをプレゼントされ、その場でケニア人の同僚から着させられましたがね。

ちなみに私にシュカを着せた人はマサイ人ではなくカンバ人でした。

手を洗って入ります。この日、マスク着用義務は既に解除されていますが、従業員はもちろん、私も含め、多くの客はまだマスクを付けています。ただ、この日は木曜日とあって、他にはっきりと客と分かる人はインド系の1組3人しか見ませんでした(翌金曜日には大勢の客が来て、レストランのテーブルも7、8割が埋まりました)。あとは、客だか宿の関係者だか分からないような人が数人。

ところで、翌々週にアンボセリ国立公園に行った時には(アンボセリにも行っちゃったんですよ)、ほとんどの客――多くは欧米人――はマスクを付けていませんでした。

 

 

このようにメインの建物の前には芝地が広がっています。この先にはブッシュを経て池があり、そこからいつもカバの鳴き声が聞こえてきます。

後で池の脇を通っている橋状の遊歩道に行ったら、数十頭のカバがいました。

この日の夕方、ブッシュの中からマミジロツグミヒタキの美声が聞こえて来たので分け入っていこうとしたら、従業員の方がメインの建物で私を監視していたようで、慌ててやって来て、「そこは危険だから入っちゃだめですよ! そこに注意書きがあるじゃないですか」と。

従業員の示す方に行ってみると、果たして「ここより先は危険につき立入禁止」と。

おっとっと。カバに襲われたら殺されかねません。

 

 

そのブッシュの先、遠方にはゾウも歩いていました。さすがは国立公園内の宿です。

 

 

これが私の泊まった部屋。清潔で、ベランダやミニバーもあり、高級リゾートとしての一定の設備は整っています。

ちなみに、この宿はグーグルマップに出て来る旅行代理店の提示する料金では1泊3万シリング台(1シリング=約1円)ですが、私はケニア居住者のためか、地元の代理店を通して約半額の1泊16,500シリングでした。

 

 

部屋の内部。写真の左奥にはミニバーと衣類置き場、そこを入った右手にはバスルームがあります。バスルームには体重計もあって、毎朝体重測定をしている私には嬉しいと思いきや、精度が実に悪く、どうも1~2キロは軽く出るようで使い物になりません。もっとも、このようにリッチなロッジで食事をしているとついつい食べ過ぎてしまい、怖くて体重計に乗る気が起きませんが。

またベッドの前、写真の左の先には小さい机があり、そこで2日目の昼にテレビ会議に出たわけですが、ちょっとしたユニークな会議参加になりました。

背後の方からは、カバの「フンガ、フンガ」という、いびきの音をデカくしたような低い声がかすかに聞こえてきます(が大抵の時間はマイクをミュートしていましたし、声も小さかったので、会議の出席者には聞こえないか、わずかに聞こえたとしても何の音か分からなかったことでしょう)。

そのうち、脇の小部屋から何やらガサゴソ音が聞こえてくると思って覗(のぞ)いたら、ベルベットモンキーがいつの間にか闖入(ちんにゅう)して、ミニバーに置いてある砂糖のパックを荒らして齧っているではないか!

部屋のドアを開けっ放しにしていたのが悪かったようです。気づかぬように忍び込んで、私の後ろを通過して小部屋に入ったようです。このサルはこのような事をした経験をたくさん持っているのでしょう。砂糖のありかと闖入の仕方を心得ているというわけです。

慌てて会議から退席してサルを追い出し、再び何食わぬ顔をして席に戻ります。

大丈夫です。その間、カメラはオフ、マイクもミュートしていましたから、他の出席者は誰も気づかなかったはずです。

まさか、出席者の一人がサバンナの野生の王国から参加しており、会議中にそんな事が起こっていたとは、他の参加者の皆さんは、よもや想像すらしなかったことでしょう。

 

 

レストランの入っているメインの建物の芝地に面した側には広いベランダがあって、パラソルを付けたテーブルが置かれています。ここで昼食後に本を読みながらコーヒーを飲むわけですが、やはりここにもベルベットモンキーが往来しており、脇のミニバーにある砂糖パックを狙っています。

砂糖を荒らすサルを見た従業員、パチンコを持って来て、屋根に引き返して再び機会を狙うサルに小石をぶつけます。彼も慣れたもので、結構命中率がいい。その時はとりあえず退散するサルも懲りず、そのうちにまたやって来るのでしょう。このような事がずっと繰り返されているはずです。

 

読んでいる本は、沢木耕太郎『深夜特急3』(新潮文庫)。

 

 

芝地にはこのような花が突如として咲いていました。なかなか大きくて綺麗です。植物同定アプリの Pl@anNet に画像をかけたら、Cycnium tubulosum が一致率98.36%でしたので、まず間違いないでしょう。南部アフリカから東部アフリカにかけて広く分布しているようです。

 

 

池の脇を通る遊歩道の縁(へり)を形成するレンガを押さえている金網には、こんな感じのアサガオ系(すなわち以前学んだところによるとサツマイモ属)の花が咲いていました。同じく Pl@antNet によると、モミジヒルガオ(学名:Ipomoea cairica) で60.95%。

 

 

最後に、一本の記事にするには「はした」なのでここに加える画像を2枚。帰途に寄った、(マサイマラから見て)ナロク手前のエワソンギロ (Ewaso Ngiro) という集落にあるレストラン「オラレ」 (Restaurant Olare)。私が「途中で昼食を取ろう」と言ったら、アントニーが「マサイマラに来るといつも立ち寄る店がある」と言ったので来ました。

 

 

メニューは実質的に一つしかなく、山羊肉を煮たものと、香辛料が入っていてドライカレーに近いトマトライス、それにキャベツの千切りとホウレン草と思しき青菜。肉の味は普通、ライスの味はまずまずでしたが、これで一皿700シリングは高いです。私は車に戻ってアントニーに、「味はいいが、観光客料金だ」と。

地方の田舎にあるのに、マサイマラへの幹線道路沿いにあるものだから、値段がそれなりに設定されているわけです。しかし、ケニア人の運転手に対しては、多分別料金が設定されているに違いありません。彼もそれを承知でこの店に私を連れて来たのでしょう。私としては彼に一任したわけですし、そういうのが実情だとして今回は受け入れますが、やはり一言申しておかなければと思った次第。相場を知らない人々に対して、いい気になってどんどん値段を吊り上げていってもらっては、後に来る観光客のために良くないですからね。