Que sais-je? ク・セ・ジュ――われ何を知る

Que sais-je? ク・セ・ジュ――われ何を知る

最近はハイキング、バーでの話、読書ノート関係の記事が多いです。

今までに作成した記事を再編集・修正してnoteに移行し始めました。
クリエイター名は同じrigmaroleです。

なおヘッダー画像は新潟県長岡市にて2020年11月に撮影。

休憩所から最後の短い区間――コンクリではなく、細い丸太か、それを模した人工材を地面に埋め込んで景観を保っている階段――を数分上ると、そこは頂上の天守台です。しかし、休憩所前の展望台よりも狭く、周囲には木が茂っているため眺望はほとんど得られません。錆びついて地名ラベルも半ば剥がれた展望案内板が二つ残っているので、かつては見晴らしが良かったのかもしれませんが、現在の整備の重点は完全に休憩所付近へ移っており、この頂上はむしろ少々荒れ気味と言っていいでしょう。ベンチもありますが、苔が生(む)しているようで、部分的に緑色になっています。そして、休憩所と頂上の間には、キャンプ場跡と思われるスペースがあります。コンクリ製のかまどの廃墟が残っています(前回訪れた時の記事を参照)。

もちろん、今でも――いや、今の方がむしろ――レジャーとしてのキャンプは盛んです。昭和の頃なら、小木ノ城でのキャンプは人気があったのかもしれません。けれども今では、このような場所――比較的開けた一角の木立の中にある、広くはない空間――では「キャンプ気分」を十分に味わえない、と人々の眼が肥えてしまったのでしょう。さらに、歴史遺産がすぐそばにあるという「お得感」も、昔なら「せっかく来たのだから、ついでに見られて嬉しい」と思えたのが、今では「歴史遺産を見たいなら車で行けばいいし、今回はキャンプなのだから、もっと森に囲まれて社会から隔絶された気分を味わいたい」という発想に変わっているのかもしれません。すぐそばの休憩所からは演歌が聞こえてきますしね。

そうして人の流れが他へ移れば、ここの整備もまた、少しずつ後回しになっていったのでしょう。

 

 

ともあれ、頂上にしっかり残っているのは、二、三の石碑だけです。写真のほかにも、説明文が刻まれたもっと大きな石碑が残っています(前回訪れた時の記事を参照)。開けた野原や河原で見るタンポポは春の華やかさを感じさせますが、こんな場所に咲いていると、逆に侘(わび)しさが漂ってきます。

 

 

タンポポの花そのものは鮮やかで、見れば気持ちが晴れるのですがね。

……などと感傷に浸ったのも束の間。最近の私の癖で、タンポポを見る度に花の裏側を確認してみたくなる。

 

 

お、これは花を支える蕚(がく)の最外部――正確には総苞外片(そうほうがいへん)――が反り返らず、しっかりまとまっている。在来種のニホンタンポポだ。ここ最近、ハイキングで在来種を見つけることが多く、嬉しくなります。自宅そばの栖吉川の土手なんか、もう大部分がセイヨウタンポポに侵略されてしまっています。

眺望が良くないので、頂上で過ごした時間は5、6分ほどでしょうか。さほど長くはありません。早速下山。

 

 

休憩所を少し下ったところに、シャクと思しき(断定しないでおきますね)花が群生しており、涼しげです。実(じつ)は上りの時にも気づいていたのですが、セリ科の植物は判別が難しく、帰宅後にしっかり同定する作業が面倒になりそうだと思った私は撮影しませんでした。でもやっぱり気になるので、下りの時に撮影。

断定しなかったのは、セリ科の同定の難しさゆえのことです。セリ科には、セリと誤認されて中毒事故が起きるドクゼリがあり、またシャクに似た猛毒植物としてドクニンジンも知られています。ヤブジラミも含め、素人には判別が難しい一群です。

ウィキペディアによると、シャクは「花序の周辺花の外側の1花弁が大きい」とのことです。

 

 

葉の形からしてもシャクっぽいです。

 

 

更に「東京でとって食べる生活」によると、分岐点に鞘(さや)があるとのこと。写真の白い物が、それに当たるのでしょう。

ということで、シャクで間違いないようにも思いますが、もし違っていたら怖いので、私は採って食べません。

 

 

コハコベとミドリハコベの区別は難しく、例えば雄蕊(おしべ)の数が判別の手掛かりの一つなんですが、写真の花の雄蕊の数をよく勘定すると、3~5本といったところのように見えます。コハコベなら1~7本、ミドリハコベなら4~10本ということで、前者の可能性が高いです。しかし茎は完全に緑色で、これは後者の特徴。私は、やや前者に傾きながらも、判断を保留しておきます。

 

 

白く米粒よりずっと小さい花が咲いている野草。茎から6枚の葉が放射状に出ている(輪生と言います)ことも特徴の、クルマムグラの仲間です。クルマムグラとオククルマムグラが似ており、茎から出た棘の状況が判別の決め手になるそうですが、それはハイキングから戻った後に分かったことで、写真を撮った時にはそこに着目していませんでした。なのでいずれかは分からずじまい。

 

 

これも他の類似種と判別が難しい花ですが、タネツケバナの仲間であることは確か。

 

 

この葉を見ると、先端に付いている葉の部分(頂小葉というそうです)が他と比べてはるかに大きく、丸みを帯びているので、オオタネツケバナに違いありません。茎の毛も判別のポイントになり、一般にオオタネツケバナは無毛、タネツケバナには毛があると言われていますが、変種もあったりして、決め手にはならないようです。

少々下りた所に、扇城台という、小さな踊り場のような展望台があります。素直に音読みすれば「せんじょうだい」ですが、ネットで調べても、なかなか読み方が出て来ません。

 

 

そこの眺望が良く、これは粟ヶ岳(あわがたけ、1,293m)。この日、5月5日の時点では、まだ山頂近くに雪がわずかに残っています。手前に広がるのは見附市街

 

 

もう少し左の方向には三条市街が広がっています。中央に小さな赤い四角が見えるでしょうか。金属加工産業の盛んな三条市を代表する企業、パール金属の第5スーパーハブ流通ステーション、つまり倉庫です。長岡の東山をハイキングする時も、私はしばしばこの大きな屋上広告塔を目印に、遠くに展開する眺望内の位置関係を把握しています。

はるか遠方にうっすらと雪山の峰々が見えます。飯豊(いいで)連峰です。反対側は山形県になります。

 

 

花弁が四角く角張っているところが私の興味を引くコウゾリナ

 

 

 

ツリバナの花をここでも見ました。分岐して広がっているそれぞれの花茎(かけい)の先端に花の付いているのが、いとをかし。

 

 

この辺りが小木ノ城と蓮花寺の中間地点でしょうか。いかにもそれっぽい、左右対称形の道標です。これを見た妻、大杉を見たい、と。私、「オレは見たことあるからもう一度行く必要はないけど、温泉に行く途中にあるからすぐに寄れるよ」。

 

 

判別の難しい、テンナンショウの仲間です。形態的特徴と分布状況からして、私はヒロハテンナンショウと判断します。小さく、ペアで咲いていて、寄り添う夫婦のようにも見えて、微笑ましく思えます。

が、我が夫婦は観察の焦点や立ち止まるポイントがずれていて、実はこんなに寄り添って歩いてはいません(汗)。

 

 

初見、すくなくとも初同定のトリガタハンショウヅルです。種の命名者は、かの牧野富太郎博士。「トリガタ」とは標本の採取地である鳥形山から来ているとのこと。ネットで調べたところ、新潟県は分布域の最東端のようです。しかし気候変動で、そのうち山形や福島でも見られるようになるかもしれませんね。各県の気候変動植物ウォッチャーの方々(そんな肩書の人がいればの話ですが)、要チェックです。

 

 

花の形も特徴ですが、葉の形も同定ポイントです。「1回3出複葉、小葉は卵形から卵状披針形」です。

 

 

キブシの花は、花序が非常に特徴的。

 

 

先日三ノ峠山のブナ平コースで似た花序のウリハダカエデを見ましたが、一つ一つの花の形は全く違います。キブシは鐘形であるのに対し、カエデの方は花弁が開いています。

杉林が中心の単調な林道だと思っていましたが、路傍を観察しながら歩くと、意外と退屈しません。

続きは次回の最終回にて。蓮花寺までもう少しです。そこに行けば、妻が見たいと思っている大杉があります。