アルビレックスBCを初観戦 | Que sais-je? ク・セ・ジュ――われ何を知る

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エルサルバドルに単身赴任中(7/15~8/5一時帰国)。
気候が良く日本より健康的な生活を送っています。
ドライブ旅行をぼちぼちしていますが、
この国で最も注意すべきは交通事故。
今や治安以上に大きなリスクです。

なおヘッダーは2020年に新潟県長岡市にて撮影。

最近、地元長岡のバスケットボールチーム、新潟アルビレックスBBの試合の話題を2本書きましたが、「アルビレックス」を名乗るチームは、新潟にはほかに有名なJリーグのサッカーチームのほか、女子サッカー、女子バスケもあります。

 

そして野球の独立リーグであるBCリーグに参加している(というか、経緯としてはリーグの設立に大きくかかわった)新潟のチームも、「新潟アルビレックスBC」。サッカーやバスケとは経営組織も違えば、企業パートナーすなわちスポンサーも違うところが多く入っていますが、とにかく「オール新潟」で同じチーム名を付けて、各種目で地元のプロチームが頑張っているわけです。

 

今回は、その野球チームの試合を初めて観戦したことについて書きます。

 

実を言うと、もともとこの日は野球の試合を見るために外出したのではなく、悠久山で花見をしようと思ったのでした。

 

悠久山の桜については次回の記事に書きますが、家族3人で自宅から歩いて約30分。悠久山に差し掛かると、野球場からプロ野球っぽい場内アナウンスが聞こえてくるではないか。あるいはNPB(セ・リーグ、パ・リーグのいわゆる「プロ野球」)のどこかのチームが試合に来ているのか、とも一瞬思いましたが、いや、そうではなく、ひょっとして……。

 

と思って野球場に近づいてみると、やはり(なんて勿体ぶって書いても最初に答えを書いてしまっているので面白くもなんともないですね)。

 

BCリーグの試合であると分かった私は、急遽予定を変更して、妻と娘に「これ、BCリーグだよ。観よう! 花見は試合の後でもできるし」と、強引に連れて球場に入りました。当日券が、大人一人1,500円、小中高生500円。入場券を買っていると、スタンドから「○○、ホームランです!」とのアナウンスが。もたもたしていられない! 切符売り場のテントで係員に聞くと、試合はまだ始まったばかり。スタンドに入って掲示板を見てみると、2回裏、アルビレックスの攻撃でした。

 

全席自由です。しかし、悪いが、席はガラガラに近い。座りたいところに座り放題です。主催者側の発表では、本日の来場者数は649人。私たちはファウルボールを警戒して、1塁側内野席の前から二列目、ネットの背後に陣取りました。

 

それでも1塁側の観客席にはアルビレックスのオレンジ色が目立ちます。太鼓、ラッパのリズムに合わせて、声援が声高らかに上げられます。一方の3塁側。本日の対戦相手は埼玉武蔵ヒートベアーズ。熊谷を拠点にしているそうです。応援団は、太鼓を叩いている人と、ラッパを鳴らす人。演奏に合わせて手拍子している人も数名いますが、チームカラーの色を着ているでもなく、あまり熱心ではなさそうでしたので、あれはサポーターではなく、たまたま3塁側に座っている観客か。アルビがアウェイの時もこんな感じなのだろうか。

 

イメージ 1

さて、試合です。写真はあまり撮らなかったのですが1枚だけ載せます。4番樋口の打席です。

 

試合経過についての詳細は新潟野球ドットコムに掲載されていますのでそちらを見ていただければと思います。球場に入る時にアナウンスの聞こえたホームランは、アルビレックスの内藤の放った同点ソロ(1-1)でした。しまった、いいところを見逃した、と思っていたら、4回表には武蔵に2点取られるものの、その裏、ドミニカ共和国からの助っ人ピメンテルが3ランで逆転(4-3)。私の胸も一気に高鳴ります。血圧に悪い(だったらはじめっから見るなって?)。

 

次の回にも楠本の2ランなどで4点を追加した新潟は、8-3の快勝。3発のホームランで逆転勝利とは、いやあ~、爽快な試合だった!

 

最後、ピメンテルの前の打者で8回裏の攻撃が終了した瞬間(新潟はホームですから攻撃は裏で、Xゲームで勝っていますので8回で終了です)、ネクストバッターズボックスから悔しそうな顔をして振り向く彼の顔を私は見逃しませんでした。「もう一発打ちたかったのに……」という顔です。

 

さて、勝利に終わったこの試合。お立ち台はもちろん、殊勲の逆転3ランを放った彼です。

 

するとインタビューの始まる前に突然、ベンチ前にいた監督がスタンドのこちらの方を振り返って、「誰かスペイン語を話せる人はいませんかー」と大声で聞きます。

 

反射的に、私は「一応話せますが」と答えてしまいました。はっと思った私は慌てて、「けれども通訳できるほどじゃないですよ」と辞退。監督は、「なんでスペイン語を話せるのに通訳してくれないんだ」と言いたげな、不満そうな表情でした。

 

そして場内アナウンスの、いわゆるウグイス嬢のお姉さんが彼に聞いた質問。「新潟はどうですか」、「日本の食べ物で好きなものは何ですか」といった、試合とは関係のない簡単な英語の質問が3つ。彼の答え、"Very good!"、"Teriyaki."、そんな調子。

 

しまった、インタビューでこんなやり取りしかできないくらいだったら、私が通訳に名乗り出ても良かった。せめて「ホームランを打った時にはどんな気持ちでしたか」くらいは聞けた。

 

しかし、いきなりの通訳依頼で私の心の準備は出来ていなかったし、その時には昔の苦い記憶が頭をよぎっていたのでした。

 

今から20年前、青年海外協力隊でスペイン語圏のパナマに赴任。帰国して最初に住んでいたのが神奈川県の平塚でした。その時に市の通訳ボランティアに登録しており、個人的にも、ボリビア人在住者などと交流していました。

 

ある日、市が企画する外国人在住者との交流会に出た時、湘南ベルマーレにこの度加入したというコロンビアからの選手(パラシオスだったように記憶しています)と共に来日した家族が来ていて、市の担当者が「何か生活でお困りのことはないですか?」と聞いた、それを訳して伝えたところ、いきなりペラペラペラペラ、ペラリンコンと、現地の会話調の早口で喋り始める。うろたえた私は何度か聞き返して、やっと回答の要約らしいことを担当者に伝えたものの、半ば意味不明の、用をほとんど足すことができないくらい、それはそれはひどいコミュニケーションでした。その件で、私はスポーツ関係者の通訳をすることにすっかり自信を無くしていたのですね。

 

だから最近も中南米でスペイン語を使って仕事することがある私でも、スポーツ選手の通訳となると躊躇してしまうわけです。

 

しかし、引き受けていたら、それなりに貢献できた。断わったことを少し後悔しています。

 

ところで試合中、ピメンテルが打席に立つと、私たちの後ろの席に座っていたオヤジさんが、「ドミニカ! (ホームラン)もう一本、打てて!(←「打ちなさい」「打てってば!」の新潟弁)」などと彼を出身国名で呼ぶ。しかも、世界には「ドミニカ共和国」と「ドミニカ国」という2つの別の国が存在するんですよ(彼は「共和国」の方です)。

 

応援しているのですし、国名で呼んでも特に失礼ということもないでしょう。だいいち本人には聞こえないか、聞こえても、国名を聞き取れないかもしれません。しかし、中南米での生活経験の長い私としては、是非とも彼の名前で呼んでほしいところ。そうすれば、気分屋のラテン系人間ですから、調子づいて本当にもう一本打っていたかもしれませんよ。

 

「ピメンテル」では発音しにくいでしょう。これは3音節の単語で、「ピ-メン-テル」の最後の「ル」は母音を伴わない "l"(エル)です。それに、中南米のスポーツ選手なら大抵、姓ではなく名で呼ぶ方が親しみがあっていいでしょう。そう思って彼の名前をネットで探したところ、ほとんどのサイトには姓しか載っていませんでしたが、数サイト目にようやく見つけたのが「サンバー」。「サンバー」って、スペイン語っぽくない響きなんだけど。英語に訛って伝わっているんだろうか。

 

後日、実家のある柏崎のコメリ書房に行ったらアルビレックスBCの公式ガイドが置いてあり、(スイマセン、立ち読みになってしまうんですが)そこで綴りを確認したら、"Sandber" でした。素直にスペイン語で読むと、「サンドベル」になります。やはり「サンバー」は英語訛りで、しかも "d" が欠落しています。

 

そこで私は彼に声援を送る時の呼び方を考えた。名で呼ぶなら、「三兵衛」(サンベー)あたりが、もともとのスペイン語の読みに近く、かつ日本人は発音しやすいのでは。あるいはいっそのこと、姓を使って「ピメちゃん」とか。ちなみにピメンテル (Pimentel) の由来は恐らく pimienta または pimiento、つまりコショウかピーマン、英語の pepper でしょうから、「コショウ畑」あるいは「ピーマン畑」、「コショウ農家」「コショウ商」といった意味になるのではないかと推測されます。

 

ならばということで「ピーマン」と呼べば、これは日本語のかつての若者言葉で「頭が空っぽ」、つまり「バカ」という意味になりますし、「コショウ屋!」なんて呼ぶのも失礼な感じがします。

 

やはりここは、「三兵衛」か「ピメちゃん」が良かろうかと。

 

ピメンテル選手の呼び方について、ああだこうだと考える私でした。

 

(2019.5.5追記:次に観戦した試合で、サポーターが「ピメ」と呼んで応援していたのを聞きました。その呼び方ならアリでしょう)

 

最後に……。

 

バスケットボールのアルビレックスBBは今シーズン、地区優勝の大躍進で、長岡市民、新潟県民を大いに湧き立たせました。最後はチャンピオンシップ準々決勝、4月28日の対アルバルク東京戦に負けて、今シーズンは終わりました。

 

しかし、新潟の野球はこれから!

 

5月1日、令和最初の日現在、アルビレックスBCはBCリーグ9勝4敗で、東地区(FUTURE-East)の首位です。大健闘中なのです。

 

そもそもバスケットボールは、野外スポーツのオフシーズン用にアメリカで考案された競技。だから、バスケットボールの試合シーズンが終わったら、選手はもともとプレイしていた競技に戻るのが自然だったわけです(というか、もともとプレイしていた競技に戻る時期にバスケットボールを終えていたと言うべきか)。

 

現代では、それぞれの競技でそれぞれの専門選手がプレイしていますから、バスケットボールのシーズンが終わったら他の競技を行うということもほとんどないでしょう。しかし少なくとも、アルビBBのブースター(サポーター)達は、Bリーグのシーズンが終わったら、JリーグのアルビやBCリーグ(野球ですよ! 念のため)のアルビの応援に向かってもいいのでは?

 

そうです。向かいましょう! ビッグスワンに、ECOスタジアムに、悠久山球場に!

 

そして「チーム新潟」を応援しましょう!