Shudder Log -26ページ目

Shudder Log

* このブログの内容はすべてフィクションであり、実在の人物や団体とは一切関係ありません。

もちろんデートを始めるには充分に遅かったが、その日は思っていたよりも早く開放された。
カフェに寄ってケーキをテイクアウトし、酒屋でスパークリングワインを手に入れる。
夕飯は済んでいたから、そのまま俺の部屋へ向かう。
ケーキに挿すための小さなロウソクは用意してある。
もちろん、プレゼントも。
 
部屋に着くと、早速ケーキを広げた。
 
「デザートプレートじゃないけど、これでいいか」
 
ケーキ用の皿なんて、気の利いたものはなく、普通の皿に盛り付ける。
 
「倒れそうで怖いね」
 
底が平らじゃないせいで、ケーキはどう見ても不安定だった。
 
「ロウソク挿すけど、どっちがいい?」
 
買ってきたのは、ガトーショコラとチーズケーキ。
他に洒落たケーキもあったのに、定番の(しかも地味な)ものにしてしまった。
 
「せめてストロベリーショートケーキだったらね」
 
同じように思ったのか、ケビンはケーキを見比べて笑った。
 
「チョコレートの方。でも食べるときは、半分こしよう?」
 
オーケイ、と俺は答えて、ガトーショコラにロウソクを立てる。
ピースのケーキだが、できるだけ多くしたいと思って3本にする。
だいぶ窮屈そうだが、仕方ない。
二つの皿をソファテーブルに運び、ケビンにはグラスを運んでもらう。
シャンパングラスなんて気の利いたものはやっぱりなくて、脚のない普通のグラス。
慎重にワインの栓を抜き、そのグラスに注ぐ。
ケーキの上のロウソクに火をつけて、部屋の明かりを暗くした。
バースデーソングを一人で歌うのは気恥ずかしかったが、ケビンがいつになく幸せそうに見えて、自然と声が大きくなった。
 
「ハッピーバースデイ、ケビン!」
 
歌い終わると、二人で乾杯した。
スパークリングワインを一口飲んでから、俺は尋ねる。
 
「願い事、考えた?」
 
ケビンは笑って、大きく頷く。
 
「じゃあ心の中で唱えて、吹き消して」
 
数秒目を閉じて、それから大きく息を吸いロウソクを吹く。
一息で消えて、部屋は真っ暗になった。
 
「わあ、何も見えない」
「今つけるよ」
「グラス気をつけて」
 
表情は見えないが、むしろ暗闇を楽しんでいるんじゃないかという声で。
電気をつけるのが、少しだけ惜しくなる。
 
「わ、眩しい」
 
部屋が明るくなると、二人して目を瞬かせる。
ケビンはロウソクを引き抜いて、ケーキを二つに割った。
俺もチーズケーキを半分にして、ケビンのガトーショコラと交換した。
 
「いただきまーす」
 
隠してあるプレゼントを取りにいく算段を考えながら、ケーキを一口食べる。
そういえば、たった3本とはいえ、ロウソクを一気に吹き消すことができた。
きっと願いは叶うだろう。
 
「ケビンの願いが叶いますように」
 
思わず嬉しくなってそう言うと、ケビンは頬張っていたケーキを飲み込んで俺を見た。
見つめ返すと、ケビンは真剣な顔で言う。
 
「イライだよ」
 
目を見開いた俺に、ケビンは繰り返した。
 
「僕の願い事は、いつだってイライだ」
 
言ったのがもし俺なら、ケビンはきっと、口に出したら叶わなくなると拗ねるだろう。
聞いたのが俺でよかった、と思いながら、引き寄せて抱きしめる。
抱き返す腕が温かくて、何故か涙が出そうになる。
 
「叶えてあげる、絶対に」
 
身体を離すと、ケビンの目も俺と同じように潤んでいて。
先を急ぐ必要はないと言い聞かせるように、俺たちはゆっくりと顔を近付ける。
それから静かにキスをした。
 
 *
 
思い出したのは、初めてケビンと自分の誕生日を祝った日。
 
「吹き消す前に、願い事して」
 
願い事は、君だった。
 
「きっと叶うよ」
 
うん、叶った。
 
叶えてくれたのは、君。
何気なく見たカレンダーに、印がつけてあった。
 
11月25日。
僕の誕生日だ。
 
日本に行くはずだったけど、予定が変わった。
 
「タイミング見て、二人でもやろうよ」
 
後ろから掛けられた声に振り返る。
 
「ケーキ食べるだけでも」
 
そう言って、イライは笑った。
 
 *
 
去年も同じことを言った、ということに気付いたのは、数日経ってからだった。
結局は忙しくて、何もできずに終わったのだけど。
イライの誕生日だって、メンバーやスタッフと祝ってそれっきりだ。
 
別に大げさなことがしたかったわけじゃない。
何か美味しいものを買って、イライの部屋で、二人で乾杯して。
当日じゃなくたっていい、たったの1時間でいいのに。
 
もちろん、忙しいのは、素晴らしいことだけれど。
 
「思い出したんだけど、前にも同じこと言ったよな」
 
頬杖から顔をあげると、イライがいた。
 
「去年のちょうど今頃」
 
珍しく曖昧な笑顔で、所在無げに腕を組んでいる。
 
「僕もそう思った」
 
僕が手を伸ばすと、イライがその手を取る。
 
「仕方ないことだけど、でも」
 
もし、今回もそうなったら。
 
「やっぱりちょっと寂しいね」
 
笑いかければ、イライは困ったように眉を下げる。
 
「ごめんな」
「どうしてイライが謝るの?」
「去年、何もできなかったから」
 
しまった、と思って、僕は首を振る。
 
「気にしないで。僕もイライの誕生日に何もできなかったし。それに」
 
握った手に力を込めて、まっすぐに目を見た。
 
「一緒にいられるだけで幸せだよ」
 
こうして触れられる距離にいてくれる。
掌の熱を温かさを感じれば、さっきまでの憂鬱が嘘のように消える。
思い通りにならないときもあるけど、そんなのすべて些細なことだと思えた。
 
「提案なんだけど」
 
イライはためらいがちに言う。
 
「今日やらない? 時間はほとんどないけど」
 
今日は全員同じスケジュールで、当然同じ時間に終わる。
きっとそのまま解散になるだろう。
それなりに、遅い時間に。
 
「あまり長くならないようにするから」
 
言い訳をするように付け足す。
僕が黙ったのを、否定的に取ったらしい。
繋いだ手を引いて、僕はイライに抱きついた。
 
「ありがとう。嬉しいよ」
 
自分でも意外なほどに、声が上擦ったのが分かる。
一緒にいられれば幸せだなんて言っておきながら、やっぱり寂しかったんじゃないか。
心の中で自分を笑って、それを見抜いたイライを改めて愛しく思った。
 
「ケーキは買いたいから、帰りにどこか寄ろう」
「うん、そうしよう」
「明日もあるから、本当に短いと思うけど」
「分かってるよ」
 
だから、とイライは続ける。
 
「願い事、考えておいて」
 
キャンドルを吹き消すときに、迷う時間も惜しいから?
僕は思わず噴出して、イライの顔を見た。
イライは、やりすぎかな、と言って頭を掻いた。
 
当日じゃなくたって。
たったの1時間だって。
 
そう思って、行動に移してくれたことに、僕はまた嬉しくなる。
それから、今年の3月に僕も同じようにすべきだったんだと感じた。
 
当日じゃなくても、1時間でも。
生まれてきてくれたことに。
出会えたことに。
この1年を無事に過ごせたことに。
新しい1年が素晴らしいものになるように。
 
ささやかな感謝と祈りを、イライのために捧げることができたら。
僕はそれだけで幸せになれたのに。
フェアノオルとか、アブサロムとか。
SHに対してだとすると、きっとELがいいよね。
妹(にして妻、はちょっと無理か)のKE。
SHの再婚相手HMと、Soohoonの間の子DH。
XAがもちろん最初の妻で、KBはELを手助けする叔父か。
KSは母方の従兄弟で、残されたKEを引き受けるとか。
JSはHMの最初の夫にしよう。ってことはSHに謀殺されたんだな。
 
どうせなら朝鮮王朝時代の両班がいいけど、私が詳しくないから微妙だ。

KSJSSJ 
SJはかわいいなあ。

JBSH 

怖い顔になってる、えーとJBよりJAか。
Jaysoo?
とりあえずこれで終わり。
KEが男らしいので、けびきそもいいなと思った。
 
 
 ***
 
扉に寄りかかり、僕は時計を見た。
起きる時間まで5時間。
この後、すぐに寝付ければいいけど。
 
ため息が出そうになったところで、AJがトイレから出てきた。
僕が部屋の外にいるのを見て、状況を察したらしい。
遠くて良くは見えないが、笑みを浮かべた気配がした。
 
きっと、僕がまた睨んだのも分かっただろう。
何も言わずに、自分の部屋へと戻る。
 
本当に、この男は。
 
怒鳴りたくても、どんな言葉もこの怒りを表すには足りない。
僕は息を深く吸って、気持ちを落ち着ける。
 
こんな顔を、キソプに見せるわけにはいかない。
 
何度か深呼吸した後、さらに数分待って、僕は部屋に向き直った。
少しだけ扉を開け、声をかける。
 
「キソプ、入るよ」
 
止める言葉はなかったので、ゆっくりと部屋に滑り込み、静かに扉を閉めた。
目をこらすと、キソプは掃き出し窓に寄りかかり、ブランケットを抱きしめている。
僕はベッドに座り、目を見つめて訊ねた。
 
「上で寝る?」
 
もし思い出して嫌なら、寝る場所を交換してもいい。
そう思ったが、キソプは首を横に振った。
 
「大丈夫だよ」
 
震える声で答える。
残念ながら、まったくそうは見えない。
キソプは手を気にして、拭くように何度もブランケットを掴みなおす。
僕はキソプの右手に自分の左手を繋いで、指を絡ませた。
 
「ねえ、キソプ」
 
引っ込めようとする腕を強く握って留まらせ、伏せられた顔を覗き込む。
 
「僕、隣で寝てもいい?」
 
キソプは目を合わせず、少しだけ迷ったように黙って、それから頷いた。
 
「ありがと」
 
額か頬にキスを落としたくなったが、やっぱりやめておく。
その代わりに、得意の笑顔を作る。
キソプがつられてくれたら、と思ったが、さすがにそれは無理だった。
2人で横になり、僕は握った手に口付ける。
 
「おやすみ」
 
おやすみ、と小さな声が返されて、少しだけほっとする。
 
問い詰めないようにしよう。
気に入らないのは僕の勝手。
それをキソプに押し付けても仕方がない。
 
僕は自分に言い聞かせ、二度目の眠りについた。
 
 * 
 
翌朝、思ったよりも睡眠が取れたことに安堵しながら、けれど僕の頭は重かった。
2人とも下段で寝ていたことがスヒョン兄に知れ、変態、とからかわれた。
朝食の後、洗面台で歯を磨いていると、AJが来た。
眠そうな顔で、ぼんやりと用意し、隣で歯磨きを始める。
悪びれない様子に結局また怒りを覚えて、鏡越しに睨んでしまう。
僕の視線を受けて、AJは口角を上げた。
 
「一緒に寝たの?」
「誰かがキソプを怖がらせたからね」
「ふーん。良かった?」
 
僕はAJを振り向いて、殴りそうになる拳を抑えた。
 
「冗談だよ」
 
そう言い放って、AJは泡を吐き出す。
歯ブラシを持つ僕の手は止まったまま。
 
キソプのことをそんな風に言えるなんて。
どうして。
どうしてこんな奴と。
 
AJはさっさと口を濯いで洗面所を出て行く。
 
僕はその場に立ち尽くして、どうにかこの状況を打開しようと決意した。
たとえ、キソプの意に反していたとしても。
一応2Seopだろう。
悪いJSと、心の弱いKS。
その関係が気に入らないKE。
本仁戻の絵柄で2Seop、とか考えててKSが詢化した結果だったり。
 
* non-con(合意のない性行為)注意。
 
 
 ***
 
微かな囁き声で目を覚ました。
瞼の向こうに光は感じず、まだ夜は明けていないことが分かった。
目は閉じたまま耳を澄ますと、声はベッドの下段から聞こえてきた。
 
「ジェソプ、やめてよ」
「シッ、静かに。ケビンが起きる」
 
起きたよ、と心の中で悪態をつく。
明日も仕事なのに、何やってるんだか。
 
「嫌だって」
「ん、口だけだな」
 
布の擦れる音に、押し殺したような息を吐く音が混ざる。
僕は静かに寝返りを打って、もう一度眠ろうとした。
 
「やだ、ねえ」
 
目は閉じても、耳は閉じられない。
抵抗しているらしいキソプの声を無視して、AJは行為を続ける。
 
嫌がってるじゃない。
さっさと止めなよ。
 
そう思ったが、一向に止まる気配はない。
目が覚めたことにして、邪魔しようか。
それとも音を立てて寝返りでも打ったら、気付かれると思ってやめるかも。
考える間にも、キスの音が響く。
それから、キソプの抵抗。
 
「やめて、お願い、ジェ」
 
言葉が途切れ、小さく響いた嬌声に、僕の何かが切れた。
 
「Excuse me!」
 
大きな声を出したつもりはなかったが、思ったより響いた。
他の部屋に聞こえただろうか。
僕は身を乗り出して、ベッドの下段を覗き込んだ。
電気はついていないが、目が慣れたのか姿は見える。
さっきよりも声を低くして訊ねた。
 
「何やってるの」
 
振り向いたAJが、少し驚いたように答える。
 
「見て分かるだろ」
 
分かるよ。
聞くまでもない。
AJがキソプを組み敷いてる。
 
「それ、今すること?」
 
付き合ってるのは知ってる。
気に入らないけど、僕が口を出すことじゃない。
それにしたって。
 
AJは無言で肩を竦めた。
その下で、キソプが目を見開いて僕を見ている。
僕はベッドから下りて、部屋の扉を開けた。
 
「ジェソプ、出てって」
「今止めたら辛いと思うけど」
「僕らの部屋から出てって」
 
語気が荒くなっても、構うものか。
AJは冷たい目になって、睨む僕を見つめ返す。
それから諦めたように、キソプに向き直った。
軽いキスをして、ベッドから下り、僕の方へ歩いてくる。
AJと入れ替わるように、僕は部屋の奥へ戻る。
部屋から出たAJは振り返り、キソプに向かって微笑んだ。
 
「愛してるよ」
 
わざとらしくキスまで投げて、AJは部屋の扉を閉める。
僕は食いしばっていた口を緩めて、キソプを見た。
身体を起こして、はだけた服を直している。
 
「キソプ」
 
ゆっくり近付いて、ベッドの下段に腰掛ける。
本当は抱きしめたかったけど、触れるのはやめておいた。
大丈夫かと尋ねる前に、キソプは口を開いた。
 
「ごめん、ケビン」
「え、何が?」
「えっと、あの、起こしちゃって」
 
思わず聞き返した僕の言葉に、キソプは顔を伏せた。
何がなんて、言いたいはずない。
 
「ううん」
 
僕は首を振って、反射的に尋ね返したことを後悔した。
できるだけなんでもない調子を作って、下を向いたままのキソプに言う。
 
「僕は外に出てるから」
 
その続きは、口には出さなかった。
キソプの身体が強張ったことには気付かない振りをする。
僕は言った通りに部屋を出て、音を立てないように扉を閉めた。
SRがちょっと前はバラバラだったって言ってたらしいので。
BigBang含め、末っ子が虐げられてればそれだけで向いてると思う。
 
SuperJuniorもそうかな。上の方が強くて、下の方がブラックになる前。
怪しげな派閥説も美味しくいただける。そもそも人数多いからどうにでもなるか。
 
U-Kissはパワーバランス偏ってないんだけど、SH絡みでいけるかも。
KEとJSでもいいけど。うん、Soojaevinのうち2人だな。
 
TeenTopもめっちゃ仲良しじゃなくても悪そうな感じはない。
やるとしたらCAかCJ1と末っ子たちあたりかなあ。
 
そこいくと5VXQ/DB2Kは愛憎ガッツリだけど、現実が現実だけに重くなりすぎるような。
分裂後のYunjae+CMとかやりたいけどな。
タブレットの画面に、白と黒のチェッカー模様が見えた。
 
「チェス?」
 
隣に座りながら尋ねる。
 
『リバーシ』
 
覗き込んでみたが、趨勢は分からなかった。
 
「勝ってる?」
 
ひとつ駒を置いて、イライは笑った。
 
『さっきからボロ負け』
 
またひとつ、またひとつとゲームを進めていく。
 
黒かった画面が、あっという間に白くなっていき、またコンピュータが勝った。
 
『ほらね』
 
イライは肩を竦めて、僕を見た。
 
自慢気に言うことじゃないと思うけど。
 
「貸してみて」
 
僕はタブレットを受け取り、リベンジすべくスタートボタンをタップする。
 
『ファイティン』
 
イライは僕に抱きついて、肩に顎を乗せた。
 
「まかせて」
 
僕は答えて、でも勝てる気は全然しなくなっていた。
 
こんな近くにイライがいたら、とてもゲームになんて集中できそうになかった。
BigBang、Gdyb前提Griというか、Gdybはそういう関係ではないが。
GDとTYはお互い好きで、でもTYがカタいので、GDはSRに行っちゃった。
SRもGDが好きなので受け入れるけど、本当はTYを見てるの知ってるよ、という。
ここではTYとSRは仲悪いと思う。
 
 
 ***
 
 
トラブルになる、ということは分かっていた。
テヤン兄がジヨン兄を好きなのは明らかだったし、というよりむしろ、二人がお互いに好き合っているのは、他の三人にとっても自明だった。
俺以外の二人はよろしくやっていて、俺はジヨン兄が好きで、そのせいでテヤン兄には余計に嫌われているのも分かっていた。
 
だから、というか。
だけど、というか。
 
 *
 
笑い声が響いて、ジヨン兄がひとりじゃないことが分かった。
ドアの前で思わず立ち止まり、耳を澄ませる。
 
――― テヤン兄。
 
わざわざ呼び出されて来てみれば。
ひとつ息を飲み込んで、勢い良くドアを開ける。
 
「運転手が来ましたよー」
 
ソファに並んで座っていた二人のヒョンが同時に振り返り、その内一人は顔を曇らせた。
もう一人は悪ガキのような笑みを浮かべる。
 
「遅えよ」
「スイマセンね、道が混んでて」
 
眉を下げながら近付くと、ジヨン兄が手を伸ばす。
アームレストに座れば、その手は俺の腰に回される。
俺はヒョンの肩を抱いて、額にキスを落とした。
 
テヤン兄が苦々しい顔でため息をつく。
 
「じゃ、帰ろっか」
 
ジヨン兄は笑顔のまま立ち上がり、ごく自然に俺の手を取る。
それからテヤン兄の方を振り返って、明るい声で言った。
 
「俺ら、付き合うことになったんだ」
 
目を見開いて、思わず叫んだのは俺だった。
 
「は?」
 
ふたりのヒョンが同時に俺を見る。
 
「なに、違うの?」
 
驚いた顔をしたジヨン兄が、あっけらかんと言う。
 
「いや、言うとは思ってなくて」
 
キスして、手を繋いでおいて、今更ではあるのだけど。
はっきりと、付き合っている、と言葉にされるとは思わなかった。
物凄く嬉しい。
でも。
 
「隠すようなことでもないだろ」
 
空いている方の手で、ジヨン兄は俺の頬を包む。
向けられる極上の笑みと、視界に入るテヤン兄の、伏せられた目。
 
「そりゃ、そうですけど」
 
キスされるんじゃないかというくらいに顔が近付く。
慌てて身体を引くと、ジヨン兄はあっさり俺を解放した。
 
「俺らだけじゃないんだし」
 
それも、言うとは思わなかった。
 
「あとはヨンベだけだね?」
 
テヤン兄を見て、笑みを浮かべる。
 
――― 違うでしょう、ヒョン。
 
テヤン兄は俺をちらりとも見ずに、部屋のドアへと向かう。
ひどく不満げな同意の言葉を残して。
 
「ああ、その通りだな」
 
その後ろ姿が見えなくなるのを待って、ジヨン兄はため息をついた。
たぶん、無意識のうちに。
 
お願いだから、そんな顔しないでくださいよ。
 
「ジヨン兄」
 
名前を呼んで振り向いたところに、俺はキスをする。
 
「愛してます」
 
ヒョンは笑って、キスを返してくれる。
 
「俺も」
 
もう一度だけキスを交わし、テヤン兄の後を追う。
繋いだ手に力を込めれば、ジヨン兄も同じように握り返してくれて。
 
俺は幸せを噛み締めながら、可能な限り、この関係が長く続くことを祈った。
部屋に戻るとスヒョン兄はおらず、イライ兄が自分のベッドで横になっていた。
 
「ヒョン、今寝ないほうがいいんじゃない」
 
夕飯を食べるためにどうせ起こされるのだから、その後ちゃんと寝たほうがいい。
 
僕も朝は弱いけど、これくらいなら言える。
 
ヒョンは顔をあげ、眠そうな目で手招きした。
 
僕はため息をついて、腰を屈めた。
 
「何?」
 
僕が覗き込むと、イライ兄は僕の腕を引いて、ベッドの中に引きずり込んだ。
 
「うわっ」
 
そのまま僕を抱きしめ、再び寝る体制に入る。
 
「ヒョン、放して」
 
『やだ』
 
ヒョンは少し腕の力を緩めて、僕の顔を見た。
 
『一緒に寝ようよ』
 
「やだ」
 
真似をして即答すると、イライ兄は笑顔になった。
 
『でも放さない』
 
僕が口を開けるより前に、更に続ける。
 
『ずっと放さない』
 
その声がやけに真剣で、抗議するタイミングを逸する。
 
イライ兄を腕の力は強くなり、僕はため息をついて、逃げることを諦めた。