KSのきれいな感情 2 [fragment] | Shudder Log

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* このブログの内容はすべてフィクションであり、実在の人物や団体とは一切関係ありません。

とりあえずこれで終わり。
KEが男らしいので、けびきそもいいなと思った。
 
 
 ***
 
扉に寄りかかり、僕は時計を見た。
起きる時間まで5時間。
この後、すぐに寝付ければいいけど。
 
ため息が出そうになったところで、AJがトイレから出てきた。
僕が部屋の外にいるのを見て、状況を察したらしい。
遠くて良くは見えないが、笑みを浮かべた気配がした。
 
きっと、僕がまた睨んだのも分かっただろう。
何も言わずに、自分の部屋へと戻る。
 
本当に、この男は。
 
怒鳴りたくても、どんな言葉もこの怒りを表すには足りない。
僕は息を深く吸って、気持ちを落ち着ける。
 
こんな顔を、キソプに見せるわけにはいかない。
 
何度か深呼吸した後、さらに数分待って、僕は部屋に向き直った。
少しだけ扉を開け、声をかける。
 
「キソプ、入るよ」
 
止める言葉はなかったので、ゆっくりと部屋に滑り込み、静かに扉を閉めた。
目をこらすと、キソプは掃き出し窓に寄りかかり、ブランケットを抱きしめている。
僕はベッドに座り、目を見つめて訊ねた。
 
「上で寝る?」
 
もし思い出して嫌なら、寝る場所を交換してもいい。
そう思ったが、キソプは首を横に振った。
 
「大丈夫だよ」
 
震える声で答える。
残念ながら、まったくそうは見えない。
キソプは手を気にして、拭くように何度もブランケットを掴みなおす。
僕はキソプの右手に自分の左手を繋いで、指を絡ませた。
 
「ねえ、キソプ」
 
引っ込めようとする腕を強く握って留まらせ、伏せられた顔を覗き込む。
 
「僕、隣で寝てもいい?」
 
キソプは目を合わせず、少しだけ迷ったように黙って、それから頷いた。
 
「ありがと」
 
額か頬にキスを落としたくなったが、やっぱりやめておく。
その代わりに、得意の笑顔を作る。
キソプがつられてくれたら、と思ったが、さすがにそれは無理だった。
2人で横になり、僕は握った手に口付ける。
 
「おやすみ」
 
おやすみ、と小さな声が返されて、少しだけほっとする。
 
問い詰めないようにしよう。
気に入らないのは僕の勝手。
それをキソプに押し付けても仕方がない。
 
僕は自分に言い聞かせ、二度目の眠りについた。
 
 * 
 
翌朝、思ったよりも睡眠が取れたことに安堵しながら、けれど僕の頭は重かった。
2人とも下段で寝ていたことがスヒョン兄に知れ、変態、とからかわれた。
朝食の後、洗面台で歯を磨いていると、AJが来た。
眠そうな顔で、ぼんやりと用意し、隣で歯磨きを始める。
悪びれない様子に結局また怒りを覚えて、鏡越しに睨んでしまう。
僕の視線を受けて、AJは口角を上げた。
 
「一緒に寝たの?」
「誰かがキソプを怖がらせたからね」
「ふーん。良かった?」
 
僕はAJを振り向いて、殴りそうになる拳を抑えた。
 
「冗談だよ」
 
そう言い放って、AJは泡を吐き出す。
歯ブラシを持つ僕の手は止まったまま。
 
キソプのことをそんな風に言えるなんて。
どうして。
どうしてこんな奴と。
 
AJはさっさと口を濯いで洗面所を出て行く。
 
僕はその場に立ち尽くして、どうにかこの状況を打開しようと決意した。
たとえ、キソプの意に反していたとしても。