タイトル落ち。
Truth or Dareじゃないけど、何か賭けをして、告白もしていない相手にキスしなければいけなくなってしまう。
相手はそれを知らないので、不意打ちで自分からするにしても、キスしてもいいか聞くにしても、あるいはキスして欲しいとねだるにしても、大変な勇気がいるに違いない。
できれば女子組からで、いつもの3組を避けて、と考えて、KS→EL、KE→SH、HM→JSでどうか。
Elseopは不意打ち、Soovinはおねだり、Jaehoonは許可求め。
彼氏組もやるならEL→HM、SH→KS、JS→KEで。
とりあえずSoovin。
けしかけたのはELかJSかHMか。
*
珍しいな、とスヒョン兄は言った。
助手席に座って、僕はタイミングを伺う。
不意打ちにしようか。
前にやられたみたいに。
それとも、尋ねてみようか。
たじろぐ顔が見られたら楽しいだろう。
角を一つ曲がり、途端に道が暗くなった。
家まではもうすぐ。
送ってくれと頼んで二人になる時間を作ったけど、あっという間に過ぎてしまった。
「送ってくれてありがとう」
僕は運転席に微笑みかける。
「ああ、いいよ」
言ってから、スヒョン兄はちらりと僕を見た。
「迎えには来ないぞ」
僕が笑うと、ヒョンも笑顔を見せた。
胸の奥がちくりと痛む。
別に、騙しているわけではないけど。
見慣れた路地に入ったところで、僕は言う。
「とめて」
「もう少し先だろ」
「ここでいい」
スヒョン兄は車を停め、とくに怪しむ様子もない。
僕はシートベルトを外し、ヒョンと視線を合わせる。
「ヒョン」
「ん?」
珍しく送ってほしいと言って。
家に着く前に車を止めて。
何かを予感させるには充分かもしれない。
これから告げる言葉が予想されているかは分からないけれど。
「何だ?」
先を促され、逸る鼓動を押し殺す。
「キスして」
スヒョン兄は首を傾げて、それでも僕を抱き寄せた。
チュッと音がして、唇が額に触れる。
「どうした?」
僕の顔を覗き込んだヒョンは、やっぱり変わらない調子で。
表情が崩れないことに、僕は少しだけ苛立つ。
「そこじゃなくて」
声にそれが出てしまった気がして、頬が熱くなる。
思わず顔を伏せると、スヒョン兄の指が僕の顎を捉えて持ち上げた。
再び、柔らかく唇の吸う音。
僕は目を閉じて、ゆっくりと離れるその感触を味わった。
「これでいい?」
頬はきっと赤くなっている。
呼吸は今にも止まりそうで、心臓は走ったように跳ねている。
僕はヒョンの胸に顔を埋めた。
明日になれば、賭けだったことが知れるだろう。
そしたらきっと安堵して、僕を小突いてみせるだろう。
人を試した僕は、本心からだったとは言えずに笑うしかない。
だから今は。
ちょっとだけワガママになってもいいということにしよう。
僕は顔を上げて、足りない、と言った。