公認心理師試験まで,あと9日。

 「公認心理師試験設計表」大項目10,「脳・神経の働き」についてざっと見てみよう。出題割合は2%。

 大脳には,数百億個の神経細胞がある。
 神経細胞は,神経細胞体と神経線維からできている。

 神経細胞体は,200分の1mmから10分の1mmほどの大きさ。樹状突起を持つ点が特徴。

 神経線維は,神経細胞の一部が細長く伸びた部分のこと。太いもので10マイクロメートルほどであり,肉眼では見えない。肉眼で見えるいわゆる「神経」とは,神経線維がたくさん束になったもので,解剖学的には「神経線維束」と呼ばれる。
 神経線維は,たいていの場合,軸索と同じ意味で使われる。同じく神経細胞体から飛び出した部分である樹状突起は,普通は神経繊維に含めない。
 神経繊維間の絶縁を行っているのがミエリン鞘(髄鞘)である。ミエリン鞘は,希突起グリア細胞(末梢神経ではシュワン細胞)が神経線維の周囲を何重にも取り巻き,バウムクーヘン状になったものである。
 神経線維の内,ミエリン鞘に囲まれているものを有鞘神経線維,囲まれていないものを無鞘神経線維と呼ぶ。有鞘神経線維では,「跳躍伝導」の仕組みにより,無鞘神経線維に比べて情報伝導のスピードが圧倒的に早い(100倍以上)。

 灰白質(かいはくしつ,gray matter)とは,中枢神経系の神経組織のうち,神経細胞体がたくさん集まっている部位のこと。
 白質(white matter)とは,同じく神経線維だけの部位のこと。
 名前の由来は,新鮮な脳組織の断面を肉眼で観察すると,白質は明るく光るような白色であるのに対し,灰白質は灰色がかって見えることによる。

https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E7%81%B0%E7%99%BD%E8%B3%AA

 灰白質は,大脳や小脳では表層を占めており,大脳皮質や小脳皮質と呼ばれる。
 白質は,大脳や小脳では深層を占め,大脳髄質や小脳髄質と呼ばれる。
 大脳基底核(basal ganglia)は,大脳髄質の更に内側にあり,灰白質である。
 basalはbaseが元になっている言葉。「基底の」でもいいけれど,「麓の」「土台の」くらいの方がイメージしやすい。
 gangliaはganglion(神経節)の複数形。「組」や「隊」を表すgangと関係のある言葉なのだろう。ちなみに神経節は,末梢神経系における神経細胞体の集まり,とのこと。
 言葉からのイメージでは,basal bangliaとは,「大脳の麓にいる,神経細胞体ギャング(組)群」といったところか。
 このギャング(組)はいくつかあり,「尾状核」ギャング・「被殻」ギャング・「淡蒼球」ギャング・「視床」ギャングと名づけられている,というくらいの捉えでいいかな。覚え方として,「美女は比較的、短命でししょ」というのが出ていた。まあ,覚えなくても良いと思うが。

http://oikomarenaika.seesaa.net/article/398996484.html

 脳葉(Cerebral lobe)について。
 cerebralは「脳の」。cerebral paralysisで「卒中」,cerebral infarctionで「脳梗塞」,cerabral palsyで「脳性麻痺」。
 lobeは解剖学で「葉」と訳されるのだが,この「葉」はlobelia(ロベリア)の葉,なのだろうか。…違うらしい。語源は,ギリシア語→中世ラテン語(外皮・殻・さや)→中性フランス語→中世英語と,つながっている。豆のさやのように,ひとまとまりになっているもの,といったイメージだろうか。ポピュラーなところでは,耳たぶは「earlobe」,である。
 脳葉(Cerebral lobe)は,大脳を解剖学的に区分する見方で,目立つ脳溝を境界としている。
 脳葉(Cerebral lobe)という観点から脳の構造を把握しようとする試みは,19世紀半ばから行われている。(フランスの解剖学者ルイ・ピエール・グラチオレ,1854)。グラチオレの研究以前は,前部・後部など,大ざっぱなものであったという。
 脳葉(Cerebral lobe)は,前頭葉・頭頂葉・後頭葉・側頭葉の4つであったが,1975年に「島」が,1998年に「辺縁葉」が加えられ,現在は6つのlobeに区分されている。

 大脳の解剖学的な分類である「脳葉」(cerebral lobe)に対して,大脳の「細胞構築学」的な分類が,「ブロードマンの脳地図」である。
 ブロードマンの脳地図では,大脳皮質の神経細胞を染色して可視化し,組織構造が均一である部分をひとまとまりにして,1~52まで番号をふっている。人間の脳地図は,ドイツ人の神経科学者コルビニアン・ブロードマン(Korbinian Brodmann)により,20世紀初頭(1908年)に発表された。
 脳葉では「~葉」(lobe)という言葉が使われたが,ブロードマンの脳地図では「~野」(area,Brodman's Area:BA)である。
 ブロードマンの脳地図は,脳機能局在論(Theory of localization of brain function)の発展を助ける役割を果たしている。

 脳機能局在論(Theory of localization of brain function)のはしりは,ドイツ人医師ガルの骨相学で,19世紀初頭に流行したが,否定されている。
 19世紀半ば,フランス人医師ピエール・ポール・ブローカが失語症患者の脳研究により,大脳の言語を扱うエリアを見い出した。これが「ブローカ野」(Broca's area)で,左半球の前頭葉に位置し,ブロードマンの脳地図の44野にあたる。このエリアに損傷を受けると,ブローカ失語(運動性失語)の症状を示す。運動性失語では,文法的に複雑な文章を作り出すことができず,「電文体」と呼ばれる内容語のみで構成されたものになる。言語理解は良好である。
 次いで,ドイツ人医師カール・ウェルニッケが,感覚失語の病巣を見出した。これが「ウェルニッケ野」(Wernicke's area)で,左半球の側頭葉に位置し,ブロードマンの脳地図の22野にあたる。このエリアに損傷を受けると,ウェルニッケ失語(感覚性失語)の症状を示す。感覚性失語では,言葉を聴覚的に理解することが著しく障害される。発話は流暢であるが,内容が乏しく,言い間違いや意味不明な造語が見られる


 間脳は,文字通り左右大脳半球の間にある脳で,床下部(自律神経の中枢)脳下垂体(ホルモンの分泌を行う)視床(嗅覚を除く全感覚の中継を行う)からなる。

 小脳は,平衡感覚協調運動運動の学習や記憶に関与している。

 脳幹は,大脳と脊髄をつないでいる部分である。上部にある「網様体賦活系」は,意識と覚醒のレベルを調整している。


 細かいところで引っかかって調べていたので,まあこんなところでしょう。この領域を網羅的に勉強するのは時間的に無理なので,これくらいで。


【本日の勉強時間:2時間,「脳・神経の働き」勉強時間:2時間/2時間,累計勉強時間38時間/100時間】

晩夏,夕方
涼しく感じられるようになった,風
音楽が流れ始めると
裸足になりたくなった

Dr.Kyon
BO GUMBOSは,一番楽しくて
強烈なライブ体験だった

Kyonのピアノが
スピーカーの前で跳ねている

井上富雄
THE ROOSTERSは
病むことや衝動へ突き抜けることのできなかった
若かった自分の
アイドルだった

クールなベースが
時々顔を出す

僕が中学生だった頃,
レコードの中で鳴っていた曲を,
今,嘘ではなく
歌っている

エレクトリックギターとドラムス
アコースティックギターも,気持ちよく鳴る

すこし眠って,聴いた

成熟する

車の中で,またすこしずつ,聴いて行こう

 公認心理師試験まで,あと10日。

 「公認心理師試験設計表」大項目15,「心理に関する支援(相談,助言,指導その他の援助)」の小項目(キーワードの例),「動機づけ面接」について勉強してみる。

 「動機づけ面接(法)」(Motivational Interviewing)は,アメリカ人のウィリアム・R・ミラー(William R. Miller)と,イギリス人のステファン・ロルニック(Stephen Rollnick)によって開発された面接・対話技法である。
 何故,アメリカ人とイギリス人が一緒に開発したのかは,分からない。

 ルーツは,カール・ロジャースの来談者中心療法である。
「実のところ動機づけ面接法のなかで,私たちのオリジナルといえるものは殆どない。私達は,カール・ロジャースとその後継者たちの,素晴らしい業績に負うところが非常に大きいのである」(「動機づけ面接法;基礎・実践編」謝辞より)。

 原典的な書物として,「Motivational Interviewing;Preparing People for Change」があり,第1版が1991年,第2版が2002年,第3版が2012年に出ている。日本語訳「動機づけ面接法」(2007)は,第2版からの翻訳である。
 副題は「人々に変化を覚悟させる」と訳せるだろうか。
 この本は大分前に買ってあったのだが,全然読んでいなかった。

 「Interviewing」という言葉が用いられていることについて,上記著書の著書は以下のように述べている。
 「(Interviewingという)言葉自体は,人の地位の上下や力の相違を示していない。つまり,inter-view(inter:お互いに,view:見る),何かを一緒に見て話を聞くことが,インタビューである。私たちの用いるイメージの1つは,2人が並んで座り,家族の写真アルバムを見ているところ――1人が思い出を語り,もう1人がそれを親しげに,興味深く聞いている情景である。話しながら,アルバムのページをめくる語り手を,聞く人は理解しようと努め,時にはある写真や,話に出なかった点について丁寧に質問する。それは検査,治療,セラピー,または専門的な相談とは,かなり違う。「iner-view」共に見ながら対話を交わすことである」(「動機づけ面接法;基礎・実践編」p.34)。    

 そうかな?…日常の相談活動で,「「iner-view」共に見ながら対話を交わす」というイメージは,自分も意識することがある。検査はすこし違うにしても,「治療,セラピー,または専門的な相談」全般のイメージが,自分にとっては「inter-view」なのだが,著者たちにとっては違うらしい。このような見方・イメージは,日本の心理臨床への親和性が高いのかもしれない。

 著者による動機づけ面接法の定義は以下の通り。

 「私たちは,動機づけ面接法を,クライアント中心主義的であると同時に,両価性を探索し解決することによって,心の中にある「変化への動機」を拡大する,指示的な方法であると定義している」(「動機づけ面接法;基礎・実践編」p.34)。

 すなわち,「動機づけ面接法はクライアント中心主義的で,その人の関心や物の見方に焦点を当てる」のだが,「両価性の解決を意図して意識的に進められ,特定の変化の方向(健康,回復,成長など)を目指して行われる」。それは「技法というよりは,むしろコミュニケーションの方法」であり,「心の中にある変化への動機を引き出すことに焦点を当てる」。そして「動機づけ面接法は変化を引き出す鍵として,その人個人のアンビバレンス(両価性)を探索し,解決することに焦点を絞る」(「動機づけ面接法;基礎・実践編」p.34~35)。

 動機づけ面接法の適用領域は,当初依存症の治療分野であり,「1970~80年に主流だった対決技法が,臨床的には廃れてきた」のに,代わるものだった。それが,上記書物の第2版(2002)が出版される頃には「その焦点は依存症領域にとどまらず,より幅の広い一般的な「行動の変化」へと変わった」(「動機づけ面接法;基礎・実践編」序文)。

 まあ,周りから見て「こうした方がいいよなぁ」と思える行動について,本人の中にも,外からは見えないかもしれないが,「こうした方がいいかも」という思いがあると仮定し,その思いを引き出すようにして行くためのテクニックであり,対人関係の姿勢である,といったところだろう。

 中身をちゃんと勉強して損になることはないし,日本の心理臨床家なら親しみを感じられる内容のように思うが,今日のところはそこまでやる時間なし。


【本日の勉強時間:2時間,「産業・組織に関する心理学」勉強時間:2時間/5時間,累計勉強時間36時間/100時間】

香ってくる

ギターと
ベースと
ドラムの

立ち上がる
霧のような
金属製の

匂い


自由な場所へ


突き刺す
切り裂く

捧げられる
血を流す


何かと


愚鈍さ
現実

こうでしかあり得ないのだから
それでよい


良い作品だと思う
ありがとう

 公認心理師試験まで,あと19日。

 「公認心理師試験設計表」大項目20,「産業・組織に関する心理学」の小項目(キーワードの例),「ポジティブ心理学」について勉強してみる。

 ウィキペディアによると「現代のポジティブ心理学は、1998年にマーティン・セリグマンが、アメリカ心理学会(APA)の会長に選ばれた際に、任期中の課題としてポジティブ心理学の創設を選んだことにより、新しい領域として開始した」とのこと。
 ここ20年ほどの,アメリカンな心理学の潮流,であるな。「心理学大図鑑」(三省堂)によると「「認知革命」の進行中に,臨床心理学の領域で確実に発展した傾向がある。それは,患者を病という観点からのみ見るのをやめて,より全体論的で人間主義的なアプローチを目指す流れだ。エーリヒ・フロムや,アブラハム・マズロー,カール・ロジャースといった心理学者たちが,単に抑うつや不安といった悲惨な状態の緩和以上に,望ましい幸福な人生を構成するものはなにかを思索しはじめた。「ポジティブ心理学」とはここから成長した運動であり,望ましくて幸福な人生を実現する方法を見つけることが目標だ」(p.198)。あー,何となく分かるなぁ。
 マーティン・セリグマン(Martin Seligman)は1942年アメリカ生まれ。1960~70年代,「学習性無力感(あるいは学習性絶望感)」(Learned helplessness)の概念を着想・研究し,日本でも心理学の教科書に載っていたりして,著名である。
 「ポジティブ心理学」とは,何か特定の分野について研究するものではなく,特定の方法論に基づくものでもなく,特定のトレーニングによって身につけるものでもない。「幸福な人生を実現する方法を見つけること」を目標に行う心理学的研究全般を指していると見てよいだろう。「幸福と成功の心理学」という潮流,The Positive Current(ポジティブ海流)くらいの感じか。

 単一の理論があるわけではないと思うので,この心理学に関連する概念から理解するのが早そうだ。

 「フロー」(flow):ウィキペディアによると,「人間がそのときしていることに、完全に浸り、精力的に集中している感覚に特徴づけられ、完全にのめり込んでいて、その過程が活発さにおいて成功しているような活動における、精神的な状態をいう」。
 「ゾーン」(zone)とも呼ばれる,とのこと。まあ,スポーツ系のTV番組などで一般的に耳にする概念になっていて,「ゾーン」の方がよく使われると思う。「フロー」じゃ分かりづらいものね。
 この概念を提唱したのは,ミハイ・チクセントミハイ(Mihaly Csikszentmihalyi)。1934年生まれ。父親はハンガリーの外交官で,共産主義勢力のハンガリー占領により,イタリア・ローマへ亡命。10代の頃,スイスでユングの講演会を聴講し,心理学を学ぶことにした,とのこと。へぇ。アメリカへ移り,シカゴ大学で学び,市民権を取得。そのままシカゴ大学心理学科の教授となった。
 ハンマー投げの室伏広治が,「ゾーンの入り方」という本を出していたりもする。流行ですな。
https://www.amazon.co.jp/dp/4087210057?tag=bunshun_online-22&ie=UTF8
 「フロー」や「ゾーン」の状態に入れることが,単にスポーツの試合で勝つというだけではなくて,「幸福」を実現するための1つの方法になる,という感じなのだろうか。

 「レジリエンス」(resilience):ウィキペディアによると「「極度の不利な状況に直面しても、正常な平衡状態を維持することができる能力」という定義が用いられることが多い」そうで,「1970年代には貧困や親の精神疾患といった不利な生活環境(adversity)に置かれた児童に焦点を当てていたが、1980年代から2000年にかけて、成人も含めた精神疾患に対する防衛因子、抵抗力を意味する概念として徐々に注目されはじめた」という。
 resilienceは,はね返すことや弾力性を意味している。「熟語本位英和中辭典」のresilientの訳は「①(曲げて放すと元の形に)撥ね反る,弾力ある(物質など)。②呑氣な,元氣な,くよくよしない」である。過酷な環境やトラウマティックな事態にあっても,「
呑氣で,元氣で,くよくよしない」,resilientな人の方が,まあ,ハッピーかもしれない。
 「レジリエンス」の研究としては,どういう人が「レジリエンス」が高く,どうしたら「レジリエンス」を高めることができるのか,といった方向に行くだろう。
 ウィキペディアによると,アメリカ精神医学会(APA)は「レジリエンスを築く10の方法」を提唱している。「1.親戚や友人らと良好な関係を維持する。2.危機やストレスに満ちた出来事でも、それを耐え難い問題として見ないようにする。3.変えられない状況を受容する。4.現実的な目標を立て、それに向かって進む。5.不利な状況であっても、決断し行動する。6.損失を出した闘いの後には、自己発見の機会を探す。7.自信を深める。8.長期的な視点を保ち、より広範な状況でストレスの多い出来事を検討する。9.希望的な見通しを維持し、良いことを期待し、希望を視覚化する。10.心と体をケアし、定期的に運動し、己のニーズと気持ちに注意を払う」,だそうです。

 「マインドセット」(mindset)という言葉も,最近聞くようになったが,これもポジティブサイコロジーっぽい感じがする。


【本日の勉強時間:1時間,「産業・組織に関する心理学」勉強時間:1時間/5時間,累計勉強時間35時間/100時間】

夕方,窓を開けたリビングのオーディオセットで

蝉の声も
鳥の声も
車のエンジンの音も
ホーンやストリングスの音も
軽く透き通って
夢の中のように
リアルだ

失うこと
亡くなった人たち
彼らは,そこにいてくれた
笑いながら
俯きながら
狂気や怒りにも
愛や甘えにも
逃げ出さず,そこにいてくれた

愛すること
別れること
そして死んで行くこと

この音楽を聴きながら
この音楽に織り込まれた
面影や光を
ありがたいと思う
私はこの音楽に
織り込まれている
 

窓の外,白い花が咲いている

 公認心理師試験まで,あと20日。

 「公認心理師試験設計表」大項目16,「健康・医療に関する心理学」の小項目(キーワードの例),「心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド)」を中心に整理してみる。

 「公認心理師試験設計表」では,「psychological first aid」を「心理的応急処置」と訳している。
 私としては,内容から,「(災害・大事故・戦争時に)心理学的に何からどう援助したらよいか(の準備と実施の手引き)」と訳したい。

 「(災害・大事故・戦争時に)心理学的に何からどう援助したらよいか(の準備と実施の手引き)」には,主にWHO作成のものと,(アメリカ合衆国)National Child Traumatic Stress Network・National Center for PTSD作成のものがある,らしい。

 WHO版は2011年に作成され,「国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 ストレス・災害時こころの情報支援センター」(長いな)が,2012年から「WHOと契約を交わし,精力的に普及をしています」とのこと。
 https://saigai-kokoro.ncnp.go.jp/index.html
 https://saigai-kokoro.ncnp.go.jp/pdf/who_pfa_guide.pdf

 National Child Traumatic Stress Network・National Center for PTSD版は,「兵庫県こころのケアセンター」によって翻訳・配布されている。
 http://www.j-hits.org/index.html
 http://www.j-hits.org/psychological/pdf/pfa_complete.pdf
 http://www.j-hits.org/psychological_for_schools/pdf/pfa_s.pdf

 WHO版で67ページ,National Child Traumatic Stress Network・National Center for PTSD版で54ページ+付録と,結構ボリュームが有る。今,読み通す時間はないが,最初の方だけでも簡単に目を通しておきたい。


【本日の勉強時間:1時間,「健康・医療に関する心理学」勉強時間:9時間/9時間,累計勉強時間34時間/100時間】

 公認心理師試験まで,あと22日。

 「公認心理師試験設計表」大項目16,「健康・医療に関する心理学」の中の中項目(2)「医療現場における心理社会的課題と必要な支援」については,何をどう勉強して良いのか,ちょっと困った。
 小項目(キーワードの例)に「チーム医療と多職種連携」が入っている。その辺りから調べてみよう。

 ウィキペディアによると,「チーム医療」という概念は,アメリカあたりで確立された方法論の輸入物,ということではないらしい。
 2001年,日本がん治療学会で「理想的ながんのチーム医療」についてのシンポジウムが行われ,そこを起点に,がん治療以外の分野へも浸透して行った,ということらしい。「チーム医療」のコンセプトを広めた人物として、上野直人医師の名前が挙がっている。「一流患者と三流患者 医者から最高の医療を引き出す心得」という著書がある(朝日新書,2016)。

 引き続きウィキペディアの記述を参考に整理すると,昔においては,医者がやたら威張っており,医療従事者は主体性を持って仕事ができない状態であった。また,医者同士,診療科同士で争いや対立があった。それは「医者中心」の医療であった。
 しかし,医療の高度化・専門化が進み,また高齢化等によって医療ニーズが増大することにより,「医者中心」医療では,十分なサービスが提供出来なくなることが容易に予想できるようになった。
 2011年の厚生労働省チーム医療推進会議による「チーム医療推進のための基本的な考え方と実践的事例集」には,次のような記載がある。「我が国の医療は非常に厳しい状況に直面しており、医学の進歩、高齢化の進行等に加えて患者の社会的・心理的な観点及び生活への十分な配慮も求められており、医師や看護師等の許容量を超えた医療が求められる中、チーム医療の推進は必須である」。
 まあ,そういうことなのだろう。

 上の報告書によると,チーム医療を推進する目的は「専門職種の積極的な活用、多職種間協働を図ること等により医療の質を高めるとともに、効率的な医療サービスを提供することにある」。
 医療の質を高めるためには,1.コミュニケーション,2.情報の共有化,3.チームマネジメント,という視点が必要であり,
 効率的な医療サービスを提供するためには,1.情報の共有,2.業務の標準化,が必要である,としている。

 また,「患者の生活面や心理面のサポートを含めて各職種がどのように協力するかという視点を持つこと」と同時に,「患者も自らの治療等の選択について医療従事者に全てを任せるのではなく,医療従事者からの十分な説明を踏まえて選択等に参加することが必要である」としている。
 医療従事者もまた,「医師,歯科医師に全面的に依存するのではなく,医療チームがお互いに協働し,信頼しあいながら医療を進める必要があり,医師,歯科医師はチームリーダーとしてチームワークを保つことが必要である」。
 医師も,公認心理師を含めた医療従事者も,患者自身も,誰かに全面的に依存したり,誰かを支配したりすることは許されず,主体的で対等な個人として医療行為に参加することが求められている。

 がん医療から始まり,病院内で取り組みが始まった「チーム医療」と「多職種連携」であるが,ウィキペディアによると,在宅医療・在宅介護の増加により,地域でも行われるようになっている,という。
 この流れが「地域包括ケアシステム」などへつながって行くのだろう。

 

  なんだか教育分野の「チーム学校」とも被る。「チーム」や「連携」好きだなぁ。それだけ,これまで「医者中心」「教師中心」,あるいは「心理士中心」で,」「チーム」として「連携」して仕事をすることが意識されなかったり,下手くそだったということなのだろうけれど。


【本日の勉強時間:4時間,「健康・医療に関する心理学」勉強時間:8時間/9時間,累計勉強時間33時間/100時間】

 公認心理師試験まで,あと23日。

 「公認心理師試験設計表」大項目16,「健康・医療に関する心理学」の中の小項目(キーワードの例)に「予防の考え方(Kaplanモデル)」とある。
 これはおそらく,「Caplanモデル」の間違いであろう。

 「熟語本位英和中辭典」の例文に「Prevention is better than cure.予防は治療に勝る」とある。「An ounce of prevention is worth a pound of cure.轉ばぬ先の杖」,
ほほぅ。

 ジェラルド・キャプラン(あるいは「カプラン」,Gerald Caplan)は,1917年生まれ,2008年没。予防精神医学(preventive psychiatry)分野の世界的なリーダーであり,予防(prevention)・危機介入(crisis intervention)といった概念の導入に,大きな影響を与えた(多分)。
 Caplanのモデルによる第1次予防(primary prevention)は,一般的なイメージの予防に近く,コミュニティにおける精神障害(あるいは危機的状況)の発生を減らすための活動である。公認心理師法第2条第4項にある「心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと」は,主にこの第1次予防に関わるものであろう。他には,様々な形の環境整備もこれに入るだろう。
 Caplanのモデルによる第2次予防(secondary prevention)は,「早期発見・早期対応」である。身体的なレベルで考えると,人間ドックなどの検診→早期治療にあたる。あれが児童虐待について考えると,乳幼児健診における面接や助言などがこれにあたるだろう。相談などのリソースの利用しやすさ(accessibility)を高めることや,危機介入(crisis intervention)の方法を持っておくことも,第2次予防に含まれる。
 Caplanのモデルによる第3次予防(tertiary prevention)は,精神障害(あるいは危機的状況)による損失を,できるだけ小さくすることである。仕事や学校など社会的な居場所を失うこと・家族との関係の悪化を防ぎ,社会性を保つ工夫をしたり,リハビリテーション行ったりして,社会復帰がよりスムーズに進むようにすること,だろうか。


 Caplanのモデルは,教育分野における「1次的援助サービス・2次的援助サービス・3次的援助サービス」といったモデルにも,明らかに影響している。
 危機介入(crisis intervention)の概念も,教育分野では「緊急支援」と呼ばれることが多いが,ほぼ重なる意味を持っているだろう。


【本日の勉強時間:1時間,「健康・医療に関する心理学」勉強時間:4時間/9時間,累計勉強時間29時間/100時間】

 公認心理師試験まで,あと24日。

 今日は,「公認心理師試験設計表」大項目16,「健康・医療に関する心理学」の中の,中項目(1)「ストレスと心身の疾病との関係」について勉強する。

 ストレス学説の祖として名前が挙がるのが,生理学者ハンス・セリエ(Hans Selye)である。セリエは1907年ウィーンに生まれ,1931年に北米へ移り,1982年カナダのモントリオールで亡くなっている。
 1936年の論文で,「歪み」を意味する工学用語である「stress」を,生物学的な意味で用い,またストレスを生じさせる刺激を「stressor」と名づけた。
 ストレスがかかった状態では,副腎皮質の肥大・胸腺やリンパ腺の萎縮・胃や十二指腸潰瘍など共通の症候が見られるとし,汎適応症候群(GAS:General Adaptation Syndrome)と名づけた。
 ストレスに対する反応を3つの時期に分け,警告反応期(ショック相・反ショック相からなる)・抵抗期・疲はい期と名づけた。

 生物学的・心理的・社会的な多彩な刺激と,それに対する人間の反応について,「ストレス」という工学用語で概念化し法則性を見出そうとしたことが,画期的であり,大きな影響を与えたということなのだろう。
 私たちが「ストレス」という概念で考えるとき,どこかに「工学的」な,あるいは「生理学的」な視点やファンタジーが入り込んでいる。
 そしてこの視点から,ストレスの人体への作用機序について,より精密な生理学的・分子生物学的なメカニズムの探求が進められている,はずである。


 ストレスに関する心理学で著名なのが,カリフォルニア大学バークレー校の心理学教授であったリチャード・S・ラザルス(Richard S. Lazarus)である。ラザルスは,1922年に生まれ,2002年に亡くなっている。
 ラザルスは,まずストレッサーに対する「認知的評価」を重視した。「ストレッサーが自分にどれだけの害や脅威になるのか」といった1次評価と,「ストレッサーをコントロールできるか」といった2次評価とに分けられている。
 次いで,「コーピング」(coping)という概念を導入した。「cope」は,「熟語本位英和中辭典」によると「負けじと争ふ」とある。生協の「coop」(cooperative)とは,関係がない。コーピングとはストレッサーに対して「打ち勝ったり,減少させたり,受け入れたりするための,認知的あるいは行動的な努力」である
 コーピングは,ストレッサーとなっている問題を直接解決することを目的とした「問題焦点型コーピング」と,ストレッサーによる情動の調整を目的とした「情動焦点型コーピング」とに分けられている。

 ラザルスの「認知的評価」という概念は,ぱっと見,認知療法的なアプローチへつながって行くことが予想できる。
 「コーピング」の概念は,ストレスに「負けじと争ふ」ための技術=「コーピング・スキル」の発見や開発へつながって行く。


 とりあえず,ストレスに関するトピックスとしては,この2つが重要だろうか。


【本日の勉強時間:3時間,「健康・医療に関する心理学」勉強時間:3時間/9時間,累計勉強時間28時間/100時間】