公認心理師試験まで,あと10日。

 「公認心理師試験設計表」大項目15,「心理に関する支援(相談,助言,指導その他の援助)」の小項目(キーワードの例),「動機づけ面接」について勉強してみる。

 「動機づけ面接(法)」(Motivational Interviewing)は,アメリカ人のウィリアム・R・ミラー(William R. Miller)と,イギリス人のステファン・ロルニック(Stephen Rollnick)によって開発された面接・対話技法である。
 何故,アメリカ人とイギリス人が一緒に開発したのかは,分からない。

 ルーツは,カール・ロジャースの来談者中心療法である。
「実のところ動機づけ面接法のなかで,私たちのオリジナルといえるものは殆どない。私達は,カール・ロジャースとその後継者たちの,素晴らしい業績に負うところが非常に大きいのである」(「動機づけ面接法;基礎・実践編」謝辞より)。

 原典的な書物として,「Motivational Interviewing;Preparing People for Change」があり,第1版が1991年,第2版が2002年,第3版が2012年に出ている。日本語訳「動機づけ面接法」(2007)は,第2版からの翻訳である。
 副題は「人々に変化を覚悟させる」と訳せるだろうか。
 この本は大分前に買ってあったのだが,全然読んでいなかった。

 「Interviewing」という言葉が用いられていることについて,上記著書の著書は以下のように述べている。
 「(Interviewingという)言葉自体は,人の地位の上下や力の相違を示していない。つまり,inter-view(inter:お互いに,view:見る),何かを一緒に見て話を聞くことが,インタビューである。私たちの用いるイメージの1つは,2人が並んで座り,家族の写真アルバムを見ているところ――1人が思い出を語り,もう1人がそれを親しげに,興味深く聞いている情景である。話しながら,アルバムのページをめくる語り手を,聞く人は理解しようと努め,時にはある写真や,話に出なかった点について丁寧に質問する。それは検査,治療,セラピー,または専門的な相談とは,かなり違う。「iner-view」共に見ながら対話を交わすことである」(「動機づけ面接法;基礎・実践編」p.34)。    

 そうかな?…日常の相談活動で,「「iner-view」共に見ながら対話を交わす」というイメージは,自分も意識することがある。検査はすこし違うにしても,「治療,セラピー,または専門的な相談」全般のイメージが,自分にとっては「inter-view」なのだが,著者たちにとっては違うらしい。このような見方・イメージは,日本の心理臨床への親和性が高いのかもしれない。

 著者による動機づけ面接法の定義は以下の通り。

 「私たちは,動機づけ面接法を,クライアント中心主義的であると同時に,両価性を探索し解決することによって,心の中にある「変化への動機」を拡大する,指示的な方法であると定義している」(「動機づけ面接法;基礎・実践編」p.34)。

 すなわち,「動機づけ面接法はクライアント中心主義的で,その人の関心や物の見方に焦点を当てる」のだが,「両価性の解決を意図して意識的に進められ,特定の変化の方向(健康,回復,成長など)を目指して行われる」。それは「技法というよりは,むしろコミュニケーションの方法」であり,「心の中にある変化への動機を引き出すことに焦点を当てる」。そして「動機づけ面接法は変化を引き出す鍵として,その人個人のアンビバレンス(両価性)を探索し,解決することに焦点を絞る」(「動機づけ面接法;基礎・実践編」p.34~35)。

 動機づけ面接法の適用領域は,当初依存症の治療分野であり,「1970~80年に主流だった対決技法が,臨床的には廃れてきた」のに,代わるものだった。それが,上記書物の第2版(2002)が出版される頃には「その焦点は依存症領域にとどまらず,より幅の広い一般的な「行動の変化」へと変わった」(「動機づけ面接法;基礎・実践編」序文)。

 まあ,周りから見て「こうした方がいいよなぁ」と思える行動について,本人の中にも,外からは見えないかもしれないが,「こうした方がいいかも」という思いがあると仮定し,その思いを引き出すようにして行くためのテクニックであり,対人関係の姿勢である,といったところだろう。

 中身をちゃんと勉強して損になることはないし,日本の心理臨床家なら親しみを感じられる内容のように思うが,今日のところはそこまでやる時間なし。


【本日の勉強時間:2時間,「産業・組織に関する心理学」勉強時間:2時間/5時間,累計勉強時間36時間/100時間】