前回のあらすじ:カッパ、無駄に決心する
さて、いざ告白をしようと決意したものの、今までそんなことをしたことのない私はどのようにすれば良いのか等もちろん知るよしもなく、いざ告白するぞと思ったら前より強く意識してしまい、上手く話すことすら出来ない始末。これは非常にまずい、目の前で告白するなんて絶対に無理だ。色々と考えた挙げ句、私が選んだ手段は、電話で告白するというものでした。告白初心者には、これが精一杯の勇気でした。
冬休みを目前に控えた12月の寒い夜。私は家の固定電話の子機と、告白のセリフを書いたメモ用紙を握りしめて、部屋のベッドに鎮座していました。こんなに緊張することは今までにあったのだろうか、いや、ない、と、何故か反語を交えながらぶつぶつと独り言を漏らすこと約10分。清水の舞台から飛び降りるような思いで、私はKの家の電話番号を押しました。
あ、ちょっと余談ですが、今の若い人は、きっと好きな異性の家の電話に掛けることなんてないんでしょうね。今や小学生ですら携帯を持ってるんだとか。私がまだ中学生の時には、携帯電話を持ってる人なんて本当に一握りの人だけでした。むしろ、ポケベルとかピッチとかって時代でしたからね。まだまだ家の固定電話での連絡の取り合いが主流でした。今の方が便利なのはもちろん間違いないけど、個人的には今より昔の方が好きです。あの、相手の家に掛けるというドキドキ感とか、親が出たらなんて言おうという緊張感とか、今日○時に電話するからと話して電話の前で待ち構えたりなんていうあのやりとりの、恥ずかしさと甘酸っぱさがない交ぜになったようなあの感覚を、今の人たちは知らないんだと思うと、自分は少し得したような気分になるのです。
失礼しました、本題に戻りましょう。
ワンコール、ツーコール、スリーコー…
「はいもしもし?」
ぎゃーーーー!お母様出たーー!落ち着け、Kに替わってもらうだけだ、普通にいけ、普通に!
「もも、もしもっしっ!夜分遅くににす、すみませんぬ!け、Kさんと同じく、グラスのかっ、かかか、カッパと申しますがっ!Kさんは、いいいらっしゃしゃいますでしょかぁ?」
日本語覚えたてか!でも、本当これくらい噛みまくりました。きっと、お母様は苦笑していたでしょう。それでも、奇跡的に話が通じたようで、少々お待ち下さいの返事の後に、定番のエリーゼのためにが保留の音楽に流れてきました。ひたすらメモに目を通して、言うべき言葉を反芻します。受話器を握り締める右手も、メモを握る左手も、手汗でびっしょりでした。
K「もしもしぃ」
エリーゼのためにが不意に演奏を終え、いつも聞いているKの声が飛び込んできました。ビクッと身体が勝手に揺れ、頭の中で反芻していた言葉も、呪文のように唱えていた落ち着けという言葉も、今から起こる出来事の前ではことごとく無力でした。
しかし、電話を掛けてしまった以上、あとには引けない。…やるしかない。
カ「も、もしもし、ごめん、今ちょっと大丈夫?」
K「うん!急にどうしたの?」
カ「……あのさ、実は、Kのことずっと好きだったんだ。…よければ、付き合ってくれない?」
緊張し過ぎたのがかえって幸いしたのか、他の言葉を紡ぐ余裕もなく頭の中は真っ白でしたが、割とスムーズに想いを告げました。さぁ、賽は投げられた。頼む。頼む。
K「……ごめんなさい、私、好きな人がいるから…」
真っ白だった頭の中が、瞬く間に真っ暗に変わりました。予想していなかったわけではありません。むしろ、自分でも気付いていました、勝算などこれっぽっちもないことを。この告白は、KがTと付き合ってしまう前に何とかしようという短絡的な思考で行われた、負け戦だったことを。
いや、いいんだ気にしなくて、いきなりごめん、それじゃあ。
何とかそれだけを告げて電話を切ると、私は枕に顔を埋めて思いっきり泣きました。初めての告白、初めての失恋、どれもこれも情けなくて、恥ずかしくて、どうしようもなくて、最高にカッコ悪い自分にさらに泣けてきて、涙が止まりませんでした。
こうして、私の初恋は、ものの見事に玉砕したのでした。
しかし…
続く