前回のあらすじ:カッパ、木っ端微塵
朝、目が覚めたら全部夢でした。…なんてことはもちろんなく、最悪な一日がついに始まってしまいました。今日は学校を休んでしまおうかと本当に悩みましたが、いかにも振られたこと気にしてますみたいな感じをKに見せることも躊躇われ、結局身体を引きずるように学校へ到着しました。
教室に入り、友達と軽く挨拶を交わすと、声に気付いたのかKがこちらを見たのが横目で分かりました。けれど、何を話して良いかも分からず、そもそも話す勇気がない私はそそくさと席について、気付かない振りをしました。
何とかほとぼりが覚めるまでは、近づかない方がお互いの為だと思ったのです。しかし、その日の私は本当についていませんでした。
その日は、学年末清掃というものがあって、まぁ平たく言えば冬休みに入るから大掃除して冬休みに入りましょうねっていうものです。ワックス掛けたり色々やります。それはいいんです、それは。問題は、班の編成にあったのです。
先生「はい、では掃除を始めたいと思います、奇数の班が廊下と階段、偶数の班が、教室の清掃を担当してください」
…えっ?なんだって?
班分けの結果、私4班Kは2班で同じ教室の掃除を担当することになってしまいました。中学校生活の中で、一番担任相手に心の中で口汚く罵声を浴びせた瞬間でした(完全にこちらの都合)
しかし、いくらなんでも「Kさんに昨日振られたばかりで気まずいので、班編成を変えてください」なんていうとち狂った意見を唱えることなど出来る筈もないので、一刻も早く掃除を終わらせて帰ることを心に決めました(後日、一心不乱に掃除してたのを好意的に受け止められ、クラスメートにやたら感謝されました、怪我の功名ですね)
普段の自分からは想像もつかないくらい、ひたすら床を雑巾がけをし、教室の端にたどり着いたその時でした。
K「よっ!張り切ってるねぇ!」
なんと、Kが私に話掛けてきたのです。
K「じゃああっちまで競争ね、負けたらジュースね(笑)」
そう言い残し、唖然としている私を尻目に、Kは颯爽と雑巾かけながら前にダッシュしていってしまいました。
ハッとして慌てて追いかけるも、先にゴールしたのはやはりKで、いぇーいジュースジュース♪と、嬉しそうにはしゃいでいました。何とも言えずにKを見ていると、向こうもこちらを向いて。振られてから初めて、視線が交差しました。
Kは、私の顔を見て、仕方ないなぁというような顔をしてクシャッと笑うと 、雑巾しぼりに行こ?と、私を水道に誘いました。う、うん、と、どもりながら返事をして汚れた水の入ったバケツを片手に、二人で水道まで無言で歩きました。何か言いたいことや言わなければならないことは、きっとたくさんあったはずなのに、私はKと話してるだけで何とも言えず胸が一杯になってしまい、口を閉ざすばかりでした。
冬場は凍るように冷たい水で、二人で雑巾を洗っていると、Kが静かに口を開きました。
K「昨日は、ありがとうね?」
「え?い、いや、そんな、いきなり、ごめん…」
K「謝らないでよ、あのさ、これからも、友達でいてくれる?話したり、してくれる?」
そう言って、Kはこちらに顔を向けました。この時、正直私は泣きそうでした。こうして気まずくならないように気を回して話掛けてきてくれたことも、付き合えなくても、ちゃんと友達として付き合ってくれること、告白したことにありがとうと言ってくれたことが嬉しかったのもあるし、やっぱりKのことが好きだと痛感してしまったし、自分がやるべき気遣いを全部Kにやらせてしまった自分の情けなさにうんざりしてしまったこともあって。
「もちろん、こちらこそありがとう、改めて、友達としてよろしくね!」
強がりも多分に混じっていましたが、私は、私がKに今出来る唯一のことが、Kの言ったような友達関係を築いていくことだと素直に受け止めることが出来ました。
私が返事をした時、ようやくKが気を抜いて笑ってくれたような気がしました。
K「ありがとう、これからもよろしくね!…で、いつジュースおごってくれるの?(笑)」
「えっ!?あのレースはなしでしょ!?フライングしたじゃん!!」
K「いやいや、カッパ君それは男らしくないですよ、私ね、温かいミルクティー大好きなんだ♪」
「…」
こうして、私の初恋は見事に玉砕で終わってしまいました。好きな人に振られることがこんなに辛いのかと驚愕しましたが、それよりもっと衝撃的だったのは、好きな人がいるだけで、毎日が信じられないくらい楽しくなることでした。それを気付かせてくれたKには、本当に感謝しました。
様々な想いを抱え、二学期が、そして、一年が幕を閉じました。本当に寒くて、少しだけ、優しい冬でした。
続く