パンドラの箱という箱がある。



そう、誰もが知っている話に出てくるもの。



知らない人は一度読んでほしい。そして考えてくれ。



今、生きている目の前でまさにパンドラの箱に遭遇した。



しかも一つではない。そして目には見えないのだ。しかし実際にはそんなものは存在しない。ではなぜ現れた?



いや、ただ単に気付かなかったのかもしれない。


しかし今こうしてその透明なパンドラの箱はあるのだ・・・。僕の前に。



そしてここからは厄介な話だが僕はその箱をどうやら知らないうちに開けていたみたいだ。



そう一種の「災い」に直面して、初めてパンドラの存在に気づいた。



そう、初めて気づいたのだ。今までいくつもの箱を知らずに開けていたのだから無理もない。



さて、ここで本題に入るが、その「災い」のあとの箱の中に残っていたものとは何だったのか?



元をただせば、その後に残っていたものに気づいたからだ。



それは・・・・・・。
温い風が吹いてスカートがなびいた
狭い屋上で彼女は一人
退屈な日々に欠伸洩らした

そういやぼんやり見ていた
明け方4時のニュースで
今夜星が降ると聞いた

待っていた訳じゃないけど
思い出等無いこの街に
降り注ぐ光の一つでも
刺さってくれやしないかと願っていた

夜を待つ彼女と
茜色のコントラスト
壊したい日々の鬱蒼
消したいのは誰の影
強い瞳で 空を刺して


長く黒い髪が南風になびいた
狭い屋上で彼女は一人
憂欝な日々に嫌気がしてた
会話の無い食卓で見た
午前8時のニュースで
今夜星が降ると聞いた

逃げ出したい訳じゃないけど
隠れ場の無いこの街に
降り注ぐ光が此処から
さらってくれやしないかと
祈っていた

夜を待つ彼女と
白い壁のコントラスト
崩れてく蒼の偶像
消したいのは誰の影
強い瞳で 空を刺して



温い風の中で彼女等は出会った
狭い屋上に少女が二人
互いの姿を認めて笑った
二人がそれまで暮らした
偽りの光の街に
今夜星が降り注ぐという

刺さってくれやしないかと
壊してくれやしないかと
さらってくれやしないかと
逃がしてくれはしないかと

願っていた
祈っていた


星を待つ彼女等と
降る光のコントラスト
刹那に浮かぶ残像
照らしだす月の影
流れ去って 星になって




真夜中のニュースで聞いた
光の街の屋上から
星になった彼女等の事
冷たい風が丘に吹いたら
また会えるって気がしてた
口約束はくだらないって
笑い飛ばして何十年

相変わらずの日々を僕は
積み重ねてゆくだけで
昨日も明日も好きになれなくて
今日を生きてる

身に付けたのは
例えば愛想笑いとか
苛立ちの種の潰し方とか
知らない街で見上げる空に
まだ馴染めてないんだよ

それでもいつの間にか
口ずさむ
いつか夕暮れ時に聴いた歌
誰と聴いたっけ
歌ったっけ
あの丘は何処にあったっけ
冷たい指が覚えてる
僕等あの日交わした指切りを
声にならなくて
うまく言えなかった事の方が
残ってるなんて



反対ホームのローカル線に
揺られる事約二時間
もうこれで最後かもねなんて
話をしてから何十年

何一つも変わる事なく
あの丘はそこにあったのに
あれもこれもと拾い集めて
太りすぎた僕の影

何処が違うだろう
それぞれの暮らしの中
依れたコートのポケットを探る
僕等が暮らす街の空は
いつだって繋がってるのに

するとね
思い出す様に口ずさむ
あの日夕暮れ時に聞いた歌
君と聴いたんだ
歌ったんだ
この丘で君と笑ったんだ
冷たい手が覚えてる
僕等あの日に触れた温もりを
形は無くって
言葉にもできなかった気持ちは
ずっとここに落ちていた



丘に寝転んで
耳を澄ましたら
聞こえてきたよ
冷たい風に吹かれて
初めて気付くこの手の温かさ
ここに生きてるって事
君と生きてるって事


何度も
確かめる様に口ずさむ
いつも夕暮れ時に歌う歌
君が歌うなら
僕も歌うよ
この丘でいつかまた会おう
冷たい風が吹く頃に
僕等また会えるって気がしてる
気のせいじゃない
強がりでもない気持ちで
この丘で待ってる
街には人が溢れています

冬が駆け抜けていく足音が
一番大きく
軽やかに響く日

クリスマスの街は
去年の今頃と同じで

きっと来年も
同じ景色なんだろう



僕等は季節に呼ばれるまま
街へと繰り出す

変わらずに
今が進んでいる事が

また同じ季節と
同じ景色に出会えた事を

確かめるように
僕等は笑う
泣く




今日が昨日になって
昨日は思い出になって

明日が今になって
今は目の前を過ぎて往く


その時に
僕を取り囲む

笑い声や歌う声

贅沢なこの『今』に



どんな言葉をかけられるだろう

どうやって伝えたらいいだろう





使い古された

ありがとうをもう一度

一人一人に伝えたい


伝えなくちゃならない人が
たくさん居てくれるから


ひとりぼっちも怖くない



ひとりぼっちなんかじゃない





強がりみたいな思いだけで




この街並を歩く

この季節を越える





一日遅れ


それが何だっていうのさ


メリークリスマス




また来年も言えたらいい。