夕闇が覆いだしている。

薄ら暗いが、まだ色の区別がつく程度には視認できる時間…

 

敵対するハージン。

憮然とするクウォリッグス。

 

しかし、腕の具合を確かめると、すぐに余裕の笑みを浮かべ、言い放った。

 

「ふん、知っているぞ。前も、お前はこうやって俺の腕をひねってたたきつけた。次はスーパーノヴァで、俺が消滅し…神殺しが大勝利を収めるだったよな?」

 

クウォリッグスは過去において自分がどうやってハージンに負けたのかを話しているようだったが、

ニヤニヤが止まらないと言った様子。

 

消滅=死ぬ

なのに、楽しむかのようだ。

 

「くっ笑ってやがる…ハージン、早くそのスーパー何とかってヤツで…」

ディエマが言いかけるが、

 

ヒュー…

口笛で遮るクウォリッグスの愉悦の声。

 

「出来ねぇんだよ…お前らが助かっちまったからよぉ…そうだよなぁ神殺しのハージンさんよぉ…」

 

腹立たしい顔で、上位に立つクウォリッグス。

自分たちを助けてしまった為に使えない技…

考える二人。

 

「想像…つきます…」

「俺らが巻き込まれて死ぬ…そんな攻撃って事か…」

 

ギリリッ!!!

ディエマ同様、歯ぎしりするハージン。

 

「そうだよな~、死んじまうから実際に見たことは無いが、この湖なんぞ跡形も無く消し飛ぶほどのエネルギーの爆発技だもんなぁ…せっかく助けた命もおじゃんってワケ…それでもやるかよぉ?」

 

バカにしたようなクウォリッグスの態度…

言い返せぬように、睨むだけのハージンにニヤニヤが止まらなくなってる。

そんな感じ…

 

「カッカカどうやら、積年の恨みをついに晴らせる時がきたようだ~」

 

カッとするディエマ。

「調子こいてんじゃねえ!ハージンに勝てるつもりかよ」

しかし、クウォリッグスは事も無げに言う。

 

「勝てるねぇ…だって、とどめを刺せないからな~」

「な…わけ…」

「あるんだよ…俺は見ての通り、実態を持たない。中心核を破壊しない限り、何度でも復活できる」

 

水が崩れさっても、次の瞬間、また怪物は復活してしまう…

その様子に、

「な、何か方法あるだろ?」

衝撃を隠せないディエマ。

 

「無いね。現に今神殺しは動けずにいる。俺を消滅させる唯一の方法であるスーパーノヴァ…それが使えねえ以上、勝ちは俺様でゆるがねぇ…」

 

雷王の構え。再び向けられた攻撃砲…

「殺せねぇなら、俺が殺してやるよ…」

 

くっ…

満足に動けぬシレイスとディエマに緊張が走る…

 

「死んどけ…」

容赦なく発射される恐るべき水量と雷を伴った竜巻波!!

 

「チッキショーッ!!!!」

覚悟決めるディエマ。

 

……しかし、

雷も水も、彼を包む事は無い…

 

「ハージン!!!」

そう、竜巻はハージンの伸ばした手に止められている。

しかし、行き場を失った強力な力場は周りを破壊…

 

してない!!!!

ハージンの手の先で、止まっている。

 

破裂したような形でとどまってる…

まるで、そこだけ切り取られたような別の空間とでもいう感じで雷王のエネルギー波はとどまっていた。

 

「なん…だ…と」

どこからか発せられるクウォリッグスの声…

続くハージンの声は、破壊の波動を抑えてるとは思えないほど穏やかに響く。

 

「毎回、考えてた…シドや、レナン、ラリスの遺体を回収できる方法はないかと…」

 

「くっ…なんだ…抜けられん…」

動こうともがくクウォリッグスだが、ガチガチに掴まれてるとでも言った具合に水が微々たる震えを見せはするものの、そこから崩せない様子。

 

「お前の中心核は、この湖のどこへでも行ける。だから毎回派手に吹っ飛ばすしかなかった…だが、こうすれば、お前の体とでもいうべき力場を辿れる。特にこの必殺技を繰り出す際にお前は収縮と圧縮による反発を一気に爆発させるがゆえに、一番最小限な範囲で存在する。お前の全体を掴むのにそう時間はかからない…」

冷酷な笑みを浮かべる神殺し…

 

「く、くそ…嘘だろ…こんな…貴様、負け犬の振りしてたっていうのか…」

竜巻の勢いが消え、水流になる。

その中に浮かぶクウォリッグスの顔。

キッと睨みつける化け物。

 

人型に戻るのには成功したものの、窮屈そうな空間に押しつぶされる格好…

憐れむように見るハージン。

 

「油断しすぎだな…何故俺が無防備で湖に飛び込んだか考えるべきだった…」

 

!!!!!

ハッとするクウォリッグス。

 

「お前は俺を捕まえにやってくる…どこから来るか…それを見ていた…お前が来た方向には何があるか…」

 

「そ、そうか…」

「そう、中心核…体を構成する前に輝く場所がある…つまりココだ…」

 

クウォリッグスの左の脇腹に不透明な部分があった。

激しく動いているように見えるが、ずっと円を描き続けている。

まるで抜け出せないかのように…

水に刻まれた化け物の顔から、冷や汗のようなものが流れる…

 

ありえないが、そう感じる。

恐怖という名の情動…

 

クウォリッグスの緊張が伝わってきた事からもそこに核があるに違いなかった。

 

「お前の言葉…そっくり返すぜ。俺の…いや俺たちの勝ちは揺るがない…」

 

「ま、待て…あの方に勝てると?」

「勝てるか、勝てないか…やりもしないで諦めてるお前と一緒にするな」

 

「か、勝てるわけない…なぜならお前は…」

自らの運命を悟り、震えだす化け物…

そんな化け物に容赦ない一撃が放たれた。

 

!!!!!!スーパーノヴァ!!!!!!!

 

ハージンが叫んだ瞬間、クウォリッグスを包む全体から光が溢れた。

と、思った瞬間、その光が、核に吸い込まれるように、収束し、消える。

 

ひと時の静寂…

「ぐ、わ…ぁあああああああああ……!!!!!!!」

 

クウォリッグスの断末魔が消える…

 

同時に、ひび割れるようなクウォリッグスの体。

割れ目から収束していた光が溢れ、夕闇に包まれだした湖面を照らし出した。

 

幾重にも重なる爆発…

とんでもないエネルギーの爆発。

思わず目を覆ったすべての者たちに残る光の残像…

 

自分も巻き込まれたと思えるほどの強烈な光…

しかし、大きな障壁が覆っているようで、一定の距離、空間での爆発は見た目の派手さに比べると、音が無ければ虚構の映像のように穏やかだった。

 

ずっと収まる気配のない新星爆発は、数秒の後、始まりと同じように吸い込まれて消える。

 

ガラスを割ったように崩れる障壁…

 

「勝てたな…」

何とか身を起こすディエマに、

 

「お前たちのおかげだ…」

回復の能力を行使しながら言うハージン。

 

「死んだと思った…」

 

ディエマを見る涙声のシレイス。

見返すディエマ。

 

回復の能力により次第に瀕死の顔に生命の光が灯り笑顔が戻った。

 

「俺様は不死身だ…」

どうだと言わんばかりのディエマだったが、ふと気づく…

「そういやさ、お前いつまでイフリートしてんだよ」

 

え?

自分の手を見るシレイス。

 

「ど、どうやったら戻れるんでしたっけ?」

「はあ??」

 

           ~続く~