中に入っている物を一つ一つメモしながら、家具を買うまでの間、
一時的に小分けにして透明のビニール袋に入れて保管することに
した。
箱の中にわたしの好きだったパステルグリーンのカーテンが入って
いた。日本ではじまった新婚時代に使っていたものだった。悪夢も
また そこから始まったのだった。
当時、わたし達の「婚礼家具」に相当する家具は、わたしの「新居」に
対する夢を打ち砕いた。わたし達の家具は粗大ごみで出された
不用品だった。わたしは年上の姉や兄の例から、結婚生活の
絵を勝手に描いていた。マンションに住んで、まっさらの婚礼家具に
囲まれて、何もかも新しく人生を二人で力をあわせてスタートする。
そんな あたりまえの夢を描いていた。
夫が仕事の都合で先に日本に来ていた。音楽の勉強をしてきた
わたしは、「さあ、これから、自分でどんどん勉強しなくちゃ。」と
意欲に燃えていた。先に日本についた夫はフランスのわたしに
電話をかけてきて、マンションが見つかったこと、やんぱっぱが
ピアノを弾けるかどうかわからないけれど、弾けないと言われたら、
また引越しを考えるから。確かにそう言った。
わたしが日本に着いてマンションに入り、呆然とした。
「何 これ?!」台所に入っていたテーブルは、表面がところどころ
四分の一程度はがれていた。椅子は座るところのビニールが裂けて
いるのが二つあった。あと二脚は小さめだけれど、ちゃんとした
椅子だった。これが「やんぱっぱとぼくの机。」事務机があった。
引き出しが 一つ紛失した物なのか、そこの部分が長方形の穴が
あいたようになっていた。冷蔵庫は借り物の70リットルしか入らない
物だった。わたしは東京で下宿していた頃でも自炊していたので
これよりは ずっと大きい物を使っていた。(続く)