12月30日
今日は、比喩と音調の面で印象深い詩行を挙げていこう。
まず比喩。
一つ目は、大広間で五十人の侍女達が手仕事をしている様。
αἱ μὲν ἀλετρεύουσι μύλῃς ἔπι μήλοπα καρπόν,
αἱ δ᾽ ἱστοὺς ὑφόωσι καὶ ἠλάκατα στρωφῶσιν(7-104,5)
彼女たちは、あるいは黄色い穀物を臼で挽いたり
あるいは機を織ったり、糸を紡いだりしていた
ἥμεναι, οἷά τε φύλλα μακεδνῆς αἰγείροιο: (7-106)
座って、さながら丈高いポプラの木の葉の如くに
女達のせわしく動かす手がポプラの木の葉に喩えられている。三千年前の詩行とは思えない新鮮な比喩だ。
二つ目は扉が開く音の比喩。
ペーネロペイアが「よく曲った鍵κληῗδ᾽ εὐκαμπέα」で閂を打って外す。
ἄντα τιτυσκομένη: τὰ δ᾽ ἀνέβραχεν ἠΰτε ταῦρος
βοσκόμενος λειμῶνι: τόσ᾽ ἔβραχε καλὰ θύρετρα (21-48,9)
狙いを定めて(打った)、扉は牡牛の如くに唸りを上げた
牧場で草を食んでいる(牡牛の如くに)、それほどに美しい扉は唸った
この詩行を引用したとき「情景が目に浮かぶ」と記したのだが、同時にその唸りが耳に響いてくる。
三つ目は冥界へ連れられていく求婚者の亡霊達の様。
ὡς δ᾽ ὅτε νυκτερίδες μυχῷ ἄντρου θεσπεσίοιο
τρίζουσαι ποτέονται, ἐπεί κέ τις ἀποπέσῃσιν (24-6,7)
あたかも不気味な洞窟の中で蝙蝠共が
小さく啼きながら飛び交う如くに、一羽が落ちた時に
ὁρμαθοῦ ἐκ πέτρης, ἀνά τ᾽ ἀλλήλῃσιν ἔχονται,
ὣς αἱ τετριγυῖαι ἅμ᾽ ἤϊσαν: ・・・ (24-8,9)
列の(一羽が)岩から、連なってつかまっていたところを(落ちた時に)
その如くに(亡霊達は)小さく叫びながら進んでいった ・・・
自然の真実を掴んでいる。不気味さの中にユーモアも感じられる。
(この項つづく)