12月29日 つづき


次いで、名台詞。


まず一つ目は冥界でのアキレウスの言葉から。

βουλοίμην κ᾽ ἐπάρουρος ἐὼν θητευέμεν ἄλλῳ, 

ἀνδρὶ παρ᾽ ἀκλήρῳ, ᾧ μὴ βίοτος πολὺς εἴη, (11-489,90)
地上にいて他人に雇われて働いている方がよいのだ

土地も持たぬ大した財産もない他人のもとで(あろうと)
ἢ πᾶσιν νεκύεσσι καταφθιμένοισιν ἀνάσσειν. (11-491)

世を去った亡者達全てに君臨しているよりも

 英雄として最高の名誉に包まれているアキレウスの言葉だけに重く響く。


二つ目は豚飼がオデュッセウスに言った言葉。

κήδεσιν ἀλλήλων τερπώμεθα λευγαλέοισι, (15-399)

お互いに辛かった苦しみを楽しむとしよう
μνωομένω: μετ
ὰ γάρ τε καὶ ἄλγεσι τέρπεται ἀνήρ,
ὅς τις δὴ μάλα πολλὰ πάθῃ καὶ πόλλ᾽ ἐπαληθῇ. (15-400,1)

思い出に浸りながら、人は苦難も後には楽しむのだから

沢山の難儀を蒙り沢山の放浪をした人は誰でも

 賢者豚飼だ。


三つ目はペーネロペイアの夢について語る言葉。

δοιαὶ γάρ τε πύλαι ἀμενηνῶν εἰσὶν ὀνείρων:
α
ἱ μὲν γὰρ κεράεσσι τετεύχαται, αἱ δ᾽ ἐλέφαντι: (19-562,3)

というのは、儚い夢には二つの門があります

角で造られている門と、象牙で造られている門です

そして、象牙を通って来る夢は人を欺き、角を通ってくる夢は実現する、と。夢の不思議さを感じさせられる詩行だ。


丸の内の三菱美術館の『シャルダン展』に行く。

静謐そのもの。苺や葡萄、桃といった果物、鍋や壷、グラスやナイフなどの食器。人物は人形のようでどうも感心しないが静物はいい。特にいくつかの静物画に登場する「水の入ったグラス」はまことに好もしい。こういうのが本当の仕事なのだろう。

三菱美術館は初めてだった。外観も内装も落ち着いていて趣がある。

  煤逃れ普段は行かぬ絵画展  拙作

大掃除はサボったのだが、お陰で心は洗われた。