12月29日



ほぼ一年を掛けて『オデュッセイアー』を読んだことになる。充実した読書だった。

今年はまだ三日ある。この三日を利用して『オデュッセイアー』の印象に残る詩行を想起してみようと思う。名場面、名台詞等、いくつかのテーマに分けて挙げることにする。枚挙に暇ないが、それぞれのテーマで三つづつに絞る。



まずは忘れがたい名場面。



一つ目は、オデュッセウスと老犬アルゴスとの再会の場面だ。

ἂν δὲ κύων κεφαλήν τε καὶ οὔατα κείμενος ἔσχεν, (17-291)

横たわっていた犬が頭と耳とをもたげた

続けて、「そこに犬のアルゴスは犬虱にまみれて横たわっていた。近付いて来るオデュッセウスに気づいた時、尻尾を振り、両耳を垂らした。しかし、主人に近寄って行くことはかなわなかった。彼(オデュッセウス)は離れたところで見て涙を拭った」(17-300~4)そして、オデュッセウスが館に入ると、ついに息絶えたのだった。

これは、オデュッセウスならずとも胸に迫る。



二つ目はテーレマコスのクシャミだ。ペーネロペイアが二階で、「もしオデュッセウスが故郷に帰ってきたら、すぐにも息子と一緒に男達の横暴に報復することでしょう」と語る。テーレマコスは階下にいる。

ὣς φάτο, Τηλέμαχος δὲ μέγ᾽ ἔπταρεν, ἀμφὶ δὲ δῶμα
σμερδαλέον κονάβησε: γέλασσε δὲ Πηνελόπεια, (17-541,2)

このように言った、するとテーレマコスが大きなクシャミをして、家中

凄まじく鳴り響いた。ペーネロペイアは笑った

ここも、ペーネロペイアならずとも笑わせられるところだ。



三つ目は、つい先日のオデュッセウスのラーエルテースとの再会場面だ。

τοῦ δ᾽ ὠρίνετο θυμός, ἀνὰ ῥῖνας δέ οἱ ἤδη 
δριμ
ὺ μένος προὔτυψε φίλον πατέρ᾽ εἰσορόωντι. (24-318)

彼の心は揺すぶられた、鼻の奥にはもはや

鋭い力が突き上げた、我が父を見るからに

オデュッセウスが最後の「試み」を捨てた場面だった。





(この項つづく)