1999年、角川文庫
海外の猟奇殺人に焦点をあてたエッセイである。エド・ゲイン、アルバート・フィッシュ、ヘンリー・リー・ルーカス、アーサー・シャウクロス、アンドレイ・チカチロ、ジョン・ウェイン・ゲーシー、ジェフリー・ダーマーなどが取り上げられている。平山夢明氏は、以前レビューした『ダイナー』 や『独白するユニバーサル横メルカトル』などの作品で知られる小説家である。
1990年代中頃、ちょっとした殺人鬼ブームがあった。ディアゴスティーニから『マーダー・ケースブック』が出され、大手書店でも殺人鬼モノが平積みされたりしていた。
しかしこの作品は、特に質の面で、一般的な殺人鬼モノとは一線を画す。理由は平山氏の殺人鬼に対するまなざしにある。端的に言って、愛がある。
無論、平山氏は殺人鬼を崇拝しているわけではないだろうが、善悪自体を一度括弧に入れたうえで、「エンターテイメントとしての殺人鬼像」を浮かび上がらせる。その手法は極めて鮮やか。
また対象が異常とされるものであればあるほど、怖がるか、断罪するかに話が向かってしまいがちに思う。しかし平山氏は、そのどちらにも陥ることなく、自分の道を突き進む。それは一般的には困難なことだと思うのだが、平山氏はスイスイと進んでいるように見える。
氏のふざけたエッセイ集、『どうかと思うが、面白い』を読むと感じられる、基本的にダウナーだがツボは外さない姿勢が効果を発揮しているのかもしれない。
