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アウトサイダーの本棚

活字メディアを中心としたレビュー


アウトサイダーの本棚-ヤクザと原発
2011年、文藝春秋

福島第一原発での作業に従事したヤクザ専門ライターによるルポルタージュである。

原発とヤクザの関係は深い。ある暴力団の組長は次のように言う。

原発は儲かる。堅いシノギだな。動き出したらずっと金になる。これ一本で食える(中略)街を代表して電力会社と交渉し、ゼネコンと話付けて、地元の土建屋に仕事を振る。それだけじゃとても人手が足りんから、あとはよその場所にいる兄弟分なんかに話を振ったり、普段から仲のいい組長連中の会社を使う。どでかいシノギになるから、代紋なしではとても捌ききれんし、工事だって進まない(9-10ページ)

つまりヤクザがまとめ役になっているわけだ。タブーや面倒な出来事の「仲介」というのは、伝統的なヤクザのビジネスであり、原発もまたしかりである。

社会の「表」と「裏」は共存関係にあることが多い。原発はその典型なのだろう。

本書が優れているのは、「表」と「裏」の境界の状況を身体を張って調べ、描いている点だ。著者は末端の作業員たちに寄り添い、その日常を生きる。彼らの目線の先にあるのは、作業する現場であり、喫煙所であり、宿舎であり、飲み屋であり、ソープ街である。

原発がシノギであり、生活の糧である人々の日常は、マスメディアの原発報道からは見えてこない。逆に本書の視点からは、保安院や東電、原子炉メーカーなどの姿は、あまり見えてこない。上流と下流は互いに見えないほど遠いのだ。