集英社文庫、2007年
タイ、ビルマ、ラオス国境には、いわゆる「ゴールデン・トライアングル」と呼ばれるケシ栽培で有名なエリアがある。その中心部にある「ワ州」への長期滞在記が本作である。
しかし一般的な(?)ドラッグ本や地下経済本とは、決定的に違う。高野秀行氏は、村に住み込み、住民たちと一緒にケシ栽培をおこなう。草むしりをしたり、バカ話をしたり、虫を追い払ったり・・・そういう日常が本作の中核を占めている。そこにあるのは派手なアクションや、危険をものともしないタフさなどではなく、牧歌的ですらある「生活」である。
言ってみれば、トップクラスの人類学者や社会学者のフィールドワークから学問的関心を抜き去り、かわりに小学生男子的な好奇心を当てはめたような作品とでも言うべきか。巧みに現地の言葉をあやつり、村の人々とも良好な関係を築けるという得難いスキルが、惜しげもなく無駄遣いされている。
あげく、自らもアヘン中毒になってしまう。しかしドロドロしたジャンキー話が語られるわけではなく、あたかも落語のようなエンターテイメントに昇華されている。
これはただ事ではない。
この作品以外にも、高野氏の作品には傑作が多い。後日紹介できたらと思う。