2009年、講談社文庫
高野秀行氏の本を紹介するのは2回目である。本作は、中国、ミャンマー、インドへと続く、あまり一般的ではないほうのシルクロードの旅行記である。しかしただ歩くだけではない。カチン軍、そしてナガ軍(いずれも反政府ゲリラ)をナビゲーターとして、道無き道を進むのである。
当然、すべて密入国。さらにヒルにおそわれながら、また敵対勢力の襲撃を避けながら、ジャングルや山脈地帯を進むというタフすぎる行程。しかも恐ろしいのは、高野氏がほとんど成り行きまかせで旅を続けていくということである。日程が倍になっても、謎の病気になっても、高野氏はあきらめない。
そして前に紹介した『アヘン王国潜入記』 でもそうであったように、巧みに現地の言葉をあやつり、人々とも良好な関係を築いていく。ジャングルを象に乗って進み、水パイプの景気の良い音に誘われてアヘンのお相伴にあずかる。自然体である。というか、自然体すぎて怖い。
様々な勢力が入り乱れる現地の地勢図にしても、知識としてではなく経験として提示されるため、リアリティをもって受け止められる。
公式サイト では、自身の姿勢が次のように表現されている。
誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、誰も知らないものを探す。 そして、それをおもしろおかしく書く。
シンプルだ。しかしそれを実現できるの人は、世界的にも数少ないだろう。高野氏が極めてまれな才人であるのは間違いない。